雑感:蓋を開けて見なきゃ分らんやろ~退職は

 どうも!おはようございますからこんばんわ!まで。

 先日ネットにこんな記事を見つけました。

 記事の概要を書くと、離職者が出る要因は単に給与の安さで考えるのは短絡的でアメリカの心理学者クレイトン・アルダファーが提唱した「ERG理論」で示される生存欲求、関係欲求、成長欲求という人間の根源的な欲求からアプローチすると分かりやすいのでは?という事でした。一見するとなんとなく分かりやすそうだけど退職を決断する理由って人それぞれなんだから、全ての人を満足させることができる企業なんてあるわけないやんとも思ってしまいます。今回は、退職をキーワードに色々書いてみたいと思います。

1.データから見てみるの巻

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 上記画像は、厚生労働省の令和2年雇用動向調査結果において転職入職者が前職を辞めた理由の図となります。3枚目の画像は前年となる令和元年と前年差なので、新型コロナの影響を色濃く受けた上での令和3年と比較したらまた違った結果になる可能性もあると思うが、ひとまずは見ていきましょう。その他を除いて数値上顕著だったのが労働条件が悪かったという項目で、若年者は勿論女性でも40代で多く見受けられました。そして、職場の人間関係が好ましくなかったという項目も目立っていました。女性はほぼすべての世代で10%代に上っていました。別のアンケートも見てみましょう。

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 上記画像は、パーソルキャリア株式会社が運営する転職サービス「doda(デューダ)」が、2020年7月~2021年6月の1年間に転職した768人のデータを元に転職理由について調査をした結果です。男女共1位と2位は共通していて、給与が低い・昇給が見込めない,昇進・キャリアアップが望めないでした。さらに別のアンケートも見てみましょう

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 上記画像は平成30年若年者雇用実態調査において、初めて勤務した会社をやめた主な理由の表です。多かった理由として、「労働時間・休日・休
暇の条件がよくなかった」 30.3%、「人間関係がよくなかった」 26.9%、「賃金の条件がよくなかった」23.4%、「仕事が自分に合わない」 20.1%の順となっています。また、初めて勤務した会社での勤続期間階級別にみると、1年未満の期間では「人間関係がよくなかった」と回答した割合が最も高いけど、1年以上~10 年未満の期間では「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」と回答した割合が最も高くなっています。

2.退職理由は人それぞれ

 他にも統計データを並べてみたら色んな見方ができるかもしれませんが、ひとまず公的データを2つ,民間データを1つ並べみても、退職の理由は100者100様で、その中には給与に関する項目も複数回答可なデータがあるとはいえ、一定数いたということを考えると冒頭で紹介しました記事が離職の要因を給与と考えるのは短絡的というのは少々疑問が残ります。労働基準法15条1項に基づいて交付を求める事ができる労働条件通知書に記載しなければならない内容の中には賃金も含まれます(労働基準法施行規則第5条第3号)。つまり、求人票に書いてある給与と実際に労働契約を結ぶ段階における給与の差を書面で見た時点で耐えられないと思って契約を結ばないという選択をせず、他社から採用内定をしてもらえない可能性が高く我慢できる金額差と判断して労働契約を結んでみたけれど、いざ働いてみたら契約内容と実際に開きがありすぎて耐えられないというケースは中小企業で多く見受けられると聞きます。そう考えると、給与を労働条件の括りに入れたら立派な退職理由として考えられます。

 また海老原嗣生氏はハーズバークが提唱した理論の真骨頂として、満足要因(あると満足に思う要因)というのは、それぞれが単体で存在しているのではなく、密接に連関しています。ですから、それをつなげてうまくサイクルにしていけば、内発的動機を高め続けられると述べています。(引用:『無理・無意味から職場を救うマネジメントの基礎理論 18人の巨匠に学ぶ組織がイキイキする上下関係のつくり方』pp17)つまり、転職理由として挙げられている項目は当該労働者がその環境下においては働いていくための動機として欠けてしまう項目でもあるという事でもあるので、例えば人間関係が良くないという理由なのであればもしかしたら組織のマネジメント体制に問題があるかもしれないし、自分に合わないと思ったのであれば会社としてどの辺りまで我慢できるか?といった形で、改善のアプローチは多様にあると思います。

3.コロナ下

 以前テレワークに関する考察を書きましたが、昨今の新型コロナウイルス下において浸透し始めてきたと思われるテレワークも、導入にあたってボトルネックとなった点はあり、企業毎に判断は分かれました。そして、コロナが収束の顔の覗かせ始めた最中でテレワークを撤廃するという企業も出てきました。

 5月20日配信の東洋経済オンラインによると、「Hondaとして本来目指していた働き方を通じて変革期を勝ち抜くために、『三現主義で物事の本質を考え、更なる進化をうみ出すための出社/対面(リアル)を基本にした働き方』にシフトしていきます」。との事で、ホンダ創業時からの企業理念こそがホンダらしさという流れからなんだろうなぁと思う反面、新型コロナウイルスを契機に世に浸透したより一層の柔軟な働き方が働き手として満足する要因である労働者が退職する可能性もはらむことは間違いないと私は思います。

4.おわりに

 今回はここで筆を置きたいと思いますが、近年は日本が長年築いてきたメンバーシップ型雇用からジョブ型雇用へシフトしていくのでは?というムーブメントや会社組織に頼らない働き方・生き方ムーブメントをはじめとして、色んな働き方・生き方・考え方が世に浸透しているので、一概に当該退職理由が会社組織内におけるどの部分とリンクしているのか?というのはわかりにくい世の中だと思います。だからこそ、退職という文脈には当然正攻法のような考え方は存在しえないと私は思います。


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