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【No. 6 短距離走のトレーニングによってどの筋が肥大する?】

<背景・目的> 
これまでの研究では、陸上短距離走選手における筋量と走パフォーマンスの関連が横断的に検討されているが、トレーニングによる両者の縦断的な変化は明らかでない。この研究では、短距離走選手を対象として、5ヶ月間の短距離走トレーニングによる筋量および走パフォーマンスの変化について検討した。

<方法> 
・対象者 
十分な競技経験を有する陸上競技短距離走選手12名(専門種目:100−400 m、女性6名、男性6名) 

・測定および分析 
インドアシーズン前のトレーニング期に計3回(PRE, IN, POST)の測定を実施。 
1.5 TのMRI装置を用いて大腿部の横断像を撮影。大腿四頭筋、ハムストリングス、内転筋群の体積を測定し、左右の平均値を算出。
光電管を用いて10 m、40 m、80 m、150 m、300 mの走タイムを測定

・トレーニング内容
短距離走トレーニング(10−200 m以上の短距離走、バウンディングドリルなど)
プライオメトリクス(水平ジャンプ種目、垂直ジャンプ種目)
筋力トレーニング(クリーン、スクワット、デッドリフトなど)

<結果> 
✓トレーニング期の前後で、大腿四頭筋、ハムストリングス、内転筋群の体積は有意に増加した(大腿四頭筋:6.7%、ハムストリングス:10.1%、内転筋群:12.1%)。
✓トレーニング期の前後で、走タイムは有意に減少した(⇒速くなった、10 m:7.0%、40 m:4.9%、80 m:4.4%、150 m:4.5%、300 m:5.1%)。
✓筋体積の変化と走タイムの変化の間に有意な相関関係は認められなかった。

<考察> 
ハムストリングスや内転筋群は、短距離走中に重要な役割を果たすことが先行研究で示されている。そのため、大腿四頭筋に比べて、ハムストリングス・内転筋群の肥大率が高かったのではないか、と著者は考察。ただし、本研究では観察期間の前に6週間の休養期間があったことから、休養期間に生じたディトレーニングが本研究結果に影響を及ぼした可能性があることを著者は言及している。

<結論>
5ヶ月間の短距離走トレーニングによって、内転筋群とハムストリングスが特に肥大する

<文献情報> 
Nuell et al. Hypertrophic muscle changes and sprint performance enhancement during a sprint-based training macrocycle in national-level sprinters. Eur J Sport Sci 2020
https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/17461391.2019.1668063?journalCode=tejs20