見出し画像

#8 婚約しよう。

2022年5月の出来事。
前回の記事と同じ日の続きである。
彼に他の女がいるかもしれないという疑念を抱いたまま、彼との電話の時間になった。

彼「今日の打ち合わせはどうだった?」
私「うん、それは役に立てたみたいなんだけど…。それよりも気になることがあってね。」
彼「どうした?」
私「あのさ、彼女って私だけ…?」
彼「は?当たり前でしょ。」
私「…そうだよね。だとしたら…『私が彼女です』って言ってる人がいるみたいだよ?大丈夫?」
彼「…それどういうこと?」
私「いや、私も聞いた話だから詳しくはわからないんだけど。」
彼「どういうことかちゃんと説明しろ。」

最大限言い方に気を付けたつもりではいたが、やはり彼の機嫌を損ね始めていた。
会話の展開の雲行きが怪しい。
これはまたすべて洗いざらい話さないと、後になって「隠し事」と言われかねない。
5月男さんに危害が向かないように、端折るべきところは端折って「5月男さんに、5月女さんがあなたのことを相談しているみたいだよ。詳しくは聞いていないけど。」と伝えた。

私の話を聞くや否や「5月男さんと話してくる」と言って電話を切られた。
この話、どうなるんだろう…。
妙な緊張感に包まれながら、彼からの連絡を待った。

彼「お待たせ」
彼から連絡が来て、すぐに通話をすることになった。
彼「5月男さんには、キツく言っておいたから。もう大丈夫だよ。」
私「…あ、そうなの?」
話の第一声がこれだったことに、私は驚いた。
彼「どうやら、脳内で俺と付き合っちゃってるみたいなんだよね。実際付き合ってもいないけど、付き合ってる気持ちになっちゃうみたいで。まぁ、ガチ恋勢ってそういうものでしょ。病的に好きになっちゃうと。」
私「…え?実際付き合ってないのに付き合ってると思い込んでて…ってこと?」
彼「そういうの、よくあることみたいだよ?そういう奴って何するかわからないよね。」

5月女さんは、実際に付き合っていないのに、付き合っていると思い込んで、架空の話を5月男さんに相談しているということだろうか…?
だとしたら、5月男さんにキツく言っておいた、とはどういうこと…?
付き合っていると思い込んで、それを相談している5月女さんに「付き合っていないだろう?」等キツく言うならわかるが、5月男さんを咎める理由が私にはわからなかった。

私「5月男さんに対して怒ったの?」
彼「そうだよ。他人の恋愛事をお前に話したわけだろ?そういう確証の取れていないことを他人に話すのはおかしいだろうって。」
私「うーん…そうなんだね。」
彼「5月男さんが直接お前に謝りたいって言ってたけど、もうこっちで解決するから二度と関わるなって言っておいた。だから安心して。お前ももう5月男さんには関わるなよ。…そもそも、打合せなのに何でそんな話してるの?お前もおかしくないか?」

また私を責めるモードに入ってきたのがわかった。
「5月男さんに話を合わせてたらそうなっちゃったんだよね。」と、5月男さんには申し訳ないが、5月男さんを彼の怒りの標的にすることで、その場を凌いだ。

私「ねぇ、でも、そういう『私が彼女です』っていう人、これからもきっと現れるんでしょう?それなら私の名前を出さないにしても、『お付き合いしている人が居ます』ぐらいは、言っておいた方がいいんじゃないの?」
彼「…それに関してなんだけど、実は婚約発表をしようと思っていてさ。」
私「…婚約…?」
彼「サプライズにしようと思ってたから、言うつもりじゃなかったんだけど、12月24日に、ライブ配信で婚約発表をしようと思ってね。そこでお前との関係もちゃんと明らかにして、ちゃんと周りにも認めてもらおうと思ってるんだ。婚約ぐらいまでしないと、そういうガチ恋勢は諦めきれないと思うからね。」

…婚約。
この言葉を人生で初めて言われた私は、自称彼女がいるという事実が吹っ飛ぶくらい嬉しくなってしまった。
そして、私のことを考えてサプライズを企ててくれていた、その気持ちも相まって、幸せな気持ちになった。
ここまでの我慢が実を結んだような気がした。

彼「だから、12月までお互いの関係は秘密にしていようね。」

私は何も疑うことなく、それを了承してしまった。
「12月まで、きっと長いようで短く感じるんだろうな」なんて浮かれながら。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?