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豚しゃぶを食べる寂しい夜

豚しゃぶが好きだ。
ぽん酢をだくだくにつけて食べるのが好きだ。茹でたほうれん草があるとなお良い。余裕があるときは大根おろしと青ネギも準備する。たまに趣向を変えて千切りキャベツとごまだれで食べる。
どんな食べ方でもおいしい。大学生時代、毎日豚しゃぶを食べていた時期もあるくらい好きだ。

しかし旦那は豚しゃぶが好きではない。肉ならなんでもウェルカムなうちの旦那が。理由はおかずにならないかららしい。奴の価値基準はお腹を満たせるかどうか。
ちなみに私は豚しゃぶで十分に米が進むから、この論争は一生終わりを迎えることがないと覚悟している。

豚しゃぶをしたにもかかわらず「おかずがない」と言われるのは腹立たしいことこの上ないし、かと言って別におかずを準備するのも面倒なので、我が家では豚しゃぶをすることがなくなった。

旦那が不在の日を除いては。


ところで昨日、私が入っているオンラインスクールSHElikesの自主企画イベント「お焚き上げ会」というものに参加した。パートナーへの不満を持ち寄ってお焚き上げしましょうという前向きな会だ。
私はモヤモヤを晴らすべく事前に応募しただけでなく、当日に追加の不満をぶちまけた。念のため言っておくが豚しゃぶ関連の不満ではない。

初めましての方もいる会でいくつも不満を出すほどだから、さぞ旦那が憎いのかと思われたかもしれない。

しかし実はまったくそんなことはない。というか逆だ。
私は旦那が好きである。
旦那の言動にイライラモヤモヤした日は嫌いになるし、この文章を思い出して「こんなこと書いた私お花畑かよ」と後悔するだろう。
でもどうせ翌日にはまた好きに戻るのはわかっている。

「実は」と書いたけどまったく隠していない。お焚き上げ会でも「リタイア後夫と2人の生活になるなんて恐ろしいですよね」という問いかけに対し、「いえ、私は楽しみです」と答えた。誤解を与えたくなかったので正直に言った。(参加者のみなさん、場を白けさせていたらすみません。)

私は毎日「早く帰って来ないかな」と思っているし、旦那の車のエンジン音が聞こえると嬉しいし、背中を見ると抱きつかずにはいられない。
だから私の不満は「かわいさ余って憎さ百倍」に近いかもしれない。
たとえば抱きついたら「うざい」って言われたとか、お買い物いっしょに行きたいのに断られたとか。好きだからこそのものが多い気がする。もちろん家事育児に関する深刻な不満もあるし、お焚き上げ会をざわつかせるレベルの暴言もある。
でもその憎さも百倍には程遠い。せいぜい十倍くらいだろう。


今日私は豚しゃぶを食べている。つまり、今日の夕食は旦那が不在ということ。
子どもにはなんちゃってお子さまプレートを用意し、私は豚肉を茹でた。ほうれん草は高くて買えなったけど、その穴を埋めるようにぽん酢に大盛りの青ネギを浮かべた。

久しぶりの豚しゃぶはおいしくて、寂しかった。

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