目覚めても醒めない夢は、誰にも奪えない。
夏休みの終わりに息子を映画に誘った。
「キングダムを観に行こう!」と声をかけたが、案の定「観たくない」と断られ、息子のリクエストに応えてワンピースを観ることにした。
あまり気乗りしなかったけれど、一度観ている息子が「ストーリーがいい!」と激推しするので、とりあえず付き添い気分で映画館へ。これがなかなかどうして、Adoの歌声が流れ始めた途端、グイッとあちらの世界へ引き込まれてしまった。
歌はもちろんのこと、ストーリーがなかなか興味深い。どっぷりと見入ってしまい、息子が引き戻してくれなかったら、こちらへ帰ってこれなかったかもしれない。。
エンドロールが終わると、すかさず息子が声をかけてきた。
「お母さん、おもしろかった?」
「どこらへんが、おもしろかった?」
ふむ。色々と思うところはあったけど、頭の中がごちゃごちゃ過ぎて言葉にならない。そのまま話しても伝わらないだろうし、長々と説明すれば息子は飽きるだろうし、頭の中をうまくアウトプット出来そうになかったので、とりあえず「おもちゃ箱の中みたいで面白かった。」と伝えると、息子は、ふ〜んと返事。
いったい、どんな答えを期待していたのだろう。
*
ここからはちょこっとネタバレ
おもしろいと言えば、このワンピース FILM REDは、興行収入120億越えの大ヒットになっているそうだが、2年前に大ヒットした鬼滅の刃の無限列車編とも通ずるところがあるのが興味深い。
鬼滅の刃では、人々を夢の世界に閉じ込める鬼が出てきたが、ワンピース FILM REDでも、人々を眠らせて、あちらの世界へ連れて行ける能力を持った女の子が出てくる。
そしてどちらの物語も、人々は苦しく悲しみに満ちた現実よりも、夢の世界に救いを求めるが、たとえどんな現実であっても、こちらの世界で懸命に生きることの方が「正しい」という考え方がべースになっている。
違いは、ワンピースの世界では、人々が自らの意思で現実の世界へ戻りたがるところだろう。
これは、カリスマ的な誰かが作った世界で操られながら生きるなら、目をつぶったまま生きるようなもの。ということに人々が気づき始めたと解釈することも出来るし、今の現状に満足はしていないけれど、新世界に行く勇気も持てない。多くの人は文句を言いながらも、現状維持をしたがるという考え方も出来る。
どちらにしろ、こうした夢の世界から現実へと戻ってくるストーリーが続々と上映されるのは、『目を覚ます時が来ている!』という宙からの知らせと考えてみると、なかなか面白い。
そろそろ世界の違和感に気づき、自分の意思で新しい世界へと漕ぎ出さないといけないのかもしれない。
これから先がどうなっていくのかわからないけれど、どうなろうとも、目を開いても醒めない夢を目指し続ける人でありたいし、息子にもそうあって欲しいと思う。
これがすぐに言葉に出来なかった私の感想。
もう一度話したら、息子はちゃんと聞いてくれるだろうか。。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?