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地方病院を1ヶ月で辞めてしまった私が感じたこと

 新卒で大学病院に就職し、5年以上勤めました。
 その後、結婚を機に退職。知り合いのすすめで次の職場に選んだのは、地方病院。
そこで感じたことは…


想像以上のカルチャーショック

 転職経験のある看護師なら、ある程度のカルチャーショックは経験があると思います。
 私は特に、大学病院から地方病院に移動したため、そのギャップには早々に耐えきれなくなりました。そのまま、1ヶ月で退職することになったのです。


看護のエビデンスや基準が曖昧。

 大卒看護師で、大学病院での教育を受けた私。
常に「エビデンス」を考えるよう教え込まれてました。なんとなく、みんながやってるから、という理由で看護をすることは絶対に許されません。
 新人の頃は、あらかじめ調べてきたはずの薬の作用がその時の用途と違っており、「答えがわかるまでは触らないで」と言い放たれ、切迫した空気の中で何分も調べていた記憶があります。

 そんな私が地方病院でやっていけなかった理由の一つが『適当』な部分です。
 消毒薬の作り方一つにしても、濃度は『適当』。看護の基準も曖昧なため、圧迫骨折で入院中の患者さんにも、人によっては「動かないで!」と言っていたり、「甘えてないで起きて」と言っていたり。
 確実に基準を合わせて、確かな根拠を持って看護していた私としては、そのような場面を目にするたびに、血の気が引くほどびっくりしていました。

それって患者さんのせいじゃないよ。

 ある日、重症化した患者さんがいました。確実ではありませんが、原因は院内感染ではないかと考えられました。個人的には、感染管理が甘いと感じていたので、いつかはそうなるだろうなと思っていました。(地方病院はコストの問題で感染管理を整えきれない部分がありますが…)

 そんなある日。ナースステーションでスタッフが集まって噂しています。

 「あの人、下痢が頻回で…さっきもオムツ変えたばかりなのに、また出たみたい」
 「えー!こんなに忙しい時間に?」

 この言葉を聞いた時、すごくショックを受けた上に、『あ、ここで働いてちゃだめだな』と思いました。
 たしかに、忙しさで手が回らないのはわかります。でも、そもそもその患者さんが重症化してるのは、看護師の感染管理のせいかもしれません。普段からのケアの方法を見直す必要があります。
 そこを振り返らずに愚痴だけ言ってるなんて…私は当時入職したばかりでしたが、その患者さんのためにも、なるべく私が担当してあげたい!と感じました。


看護師として大切にしたいこと

 もしかしたら、私も新卒でその病院に入職していれば、周りのスタッフのように『何がいけないのか』を判断できない看護師になっていたかもしれません。
 私は、明らかに『それは違う!』と葛藤しながら、日々の業務に取り組んでいました。これまでの常識と違った業務を教えられながら、ある意味『初めての看護技術』に戸惑う毎日でした。

 ある日、ナースステーションに戻ろうとすると、ある先輩が私の噂をしているのが聞こえました。
「あの子、大学病院から来たのに全然使えませんね。大したことないし、付き合ってらんない」

 私の中の何かが『プッチーーン』と切れました。いやいやいや、こっちのセリフだよ。
 あなたが適当に体位交換した人が褥瘡を形成しかけたのも、適当な濃度で吸引チューブを消毒してたのも、私は見ていたんですよ…!

 私は患者さんに最善なのは何かを考えながら、自分のスキルも向上させながら、意味のある看護をしていきたい!
 大学病院で基礎を学んだからこそ、感じた感覚なのかもしれません。


あの人もう辞めるんだってよ。

 当時の所属長が元々の知り合いだったので、早速直談判しました。(大学病院で勤めていた看護師は、割と上司や医師にに直談判する人が多いです。)
 こんなことがあった、あんなことを言われた、自分の信念と合わない…淡々と話すつもりがだんだんと感極まり、最後は涙しながら語ってしまいました。

 「たった1ヶ月で辞めるなんて、本当にすみません。」というと、「実は…」と話されたのが、

・過去に同じように大学病院から転職してきた看護師が3日でやめたこと
・常に看護師不足で、看護レベルを上げることが難しいこと
・だからこそ私を投入してレベルを上げてほしかったこと

などを話していただけました。

 凝り固まった地方病院のお局様たちが、私の意見を聞いて看護レベルを上げるでしょうか?当時20代の私には荷が重い期待でしたし、全うできませんでした…。

 月末には辞職することとなり、所属長の計らいで通常業務外の仕事を与えてもらいながら、残りの時間を過ごしました。
 私が納得できない看護ではあったけど、患者さんたちは「沢山良くしていただいてありがとうございました」と言って退院していく方もいました。
 私には納得できなくても、そこにはそこの空気感があるんだな、と思いました。でも、私には向いて無かったなと感じました。

 ああ、今頃ナースステーションでは、「あの人もう辞めるんだってよ」って噂されてるんだろうなーと思いながら、残りの時間を過ごしました。

そんなんじゃ、どこにも就職できないんじやない?

 地方病院が大学病院と違うのは想像できたこと、入職したなら我慢するのが普通。すぐやめているようじゃ、どこにも就職できないんじゃない?
 辞めた時は、こんなことを言われることもありました。当時はかなり落ち込みましたし、自信も無くなって「わたしは普通に働くことができないのか?」と思い悩みました。

 そんなある日、ハローワークの個人面談で、担当者の方が言ってくれました。

 「合わないところでずっと働く必要はないよ。もっと良いところがあるんだから、合うところを見つければいいんだよ。」

 この方にはその後も、とても救われました。アドバイスを貰いながら複数の求人に応募していたある日のこと。看護協会から一本の電話がありました。「あなた、保健師やらない?」

 私は保健師の資格は持っていますが、保健師経験はありません。でもなんとなく、運命を感じました。『まずは見学に行かせてください!』

 結局私は、その保健師の仕事に就くことができました。さらに、その内容がとっても楽しかったのです!尊敬できる医師、保健師、管理栄養士、理学療法士に囲まれ…毎日勉強するのも楽しくて、生き生きと働くことができました。

 結果論ですが、あの地方病院は辞めてよかったし、諦めずに自分に合う職場を探したお陰で、やりがいのある仕事に巡り合うことが出来ました。


もっと充実させたい!新人看護師のメンタルケア

 私に限らず、新卒や転職などの「新人看護師」は、カルチャーショックや精神的疲労で辛い思いをしていると思います。
 でも、看護師のメンタルケアといえば、職場のプリセプターだったり、師長だったり、看護部の相談窓口だったりするので、相談しにくいのが現状です。(筒抜けになるのが怖い…)

 院外の相談窓口としては、看護協会や厚生労働省にも『看護師の相談窓口』があります。個人的には、敷居が高いように思います。

 私は将来的に、もっと気軽に相談ができる場所を作りたいと思っています。「院外の、色んな職場を経験しているお姉さん。」そんな立場でお話を聞けたら、少しは敷居が下がるのではないでしょうか。 

 看護師の職場では、新人だけではなく、新人を担当している先輩も疲弊しています。スタッフ不足で、通常業務、係活動、退院支援などを兼任していたりで、新人を気遣う余裕がありません。(私にも経験があります)

 一番は、看護師全員のメンタルケアが出来れば良いのですが、まずは新人看護師が絶望して看護師を辞めていくことを防ぎたい。看護師は、とてもやりがいのある仕事です。夢を持って看護師になった新人看護師さんが、夢を持ち続けられるよう活動していきたいと思っています。

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