URは民業圧迫なのか?

URの業務が民業圧迫である、趣旨の議論は国会でたまに提起されてはなくなりますが、寧ろ問題はそうした議論があることでURが組織硬直を起こしてしまうことにあるように思われます。
例えば、URは毎年1000億円単位の多額の減損損失がありますが詳細は情報公開されていません。

不動産市場は「市場の失敗」が起こりやすい分野である気がします。市場金利、土地の仕入れ、原材料価格、建設業者の技術力、建設労働者市場の動向、入居者へのマーケティングなどなど複数の要素が複数年にわたり相互に影響しあいます。
そのなかで、URのような公共セクターが「市場価格」で住宅を供給するのは一つのイノベーションである気もします。実際に、政府保証が付いた債券での低金利の資金調達、強制収用が可能な新住宅市街地法などを使った土地の仕入れ、原材料の大量発注、建設業者への大量発注、様々な行政の窓口が使えるマーケティングチャネルなどなどがあるURは寧ろ不動産市場の中長期的失敗を防ぐ重要な役割があるように思います。
住宅工法などはURから生まれたものが多いと思いますが、不動産流通市場でももう少しいろいろとやれることはある気がします。ストックで見ると東京の賃貸住宅の6%ぐらいがURでしょうか。毎年の賃貸取引の何%がURなのかは良く分からず。

https://www.juutakuseisaku.metro.tokyo.lg.jp/juutaku_kcs/pdf/r03_kikaku01/sanko_shiryo_06.pdf

そもそもURが享受している利益は、開発利益のようなものであり、一般的な賃料収入とは少し違うと思われます。NHKの首都圏ネットワークで放送されていた移住者による「不動産開発」が結構面白かったのですが、人口が集中していない地域では、こうした小規模な開発業者を束ねてゲリラ的な開発手法をURが生み出しも良いと思います。日本はどの地方もことごとく土地開発が下手で無駄な箱物なりたくさんの失敗をしていますが、URが関わることで多少は改善されると思います。

あと、興味深いのは、アメリカではこうした「政府保証」「半官営」なのは住宅ローン市場の「ファニーメイ」や「フレディマック」のようなGSEであることです。
URを「政府保証」する日本とGSEを「政府保証」するアメリカ。何故そうなったのかに理由があるのでしょうか。

いずれにせよ、URがこれまで供給してきた住宅はソビエト風のものも多く、いかにも古めめかしいですが、だからといって今新築で供給されるようなものではありません。
千利休が中国や韓国でゴミ同然の茶碗に美を見出したように、こうした古めかしい建物に新しい美を見いだせるでしょうか。それとも「破壊」して新しい建物を作るしかないのでしょうか。少なくとも、人類が宇宙空間に進出するならば、今のURの賃貸よりも狭い空間のなかに快適を見出す必要があるでしょう。
もし前者に成功してソビエト風の住宅を「市場価格」より高い賃料で貸し出せるならば、それは民業圧迫なのでしょうか?

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