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ワクチンを打たない人たち

僕はアメリカでもど田舎の深南部に住んでいた。普通にKKKが闊歩していて、僕はペレット銃で狙撃されたこともあったし、地球はイエス・キリストが作って今でも進化論を否定し、天動説を信じる人たちがそこにいた。「神様とか信心深く無いんだよね」とはっきり言ったら、次の日からその子は僕のことを無視するようになった。そこには科学は信じていないし、もちろんワクチンも全て拒否する人たちがいた。90年代の話だ、あれから30年間、あのとき僕が感じたアメリカの現実的な問題というのは国を二分する問題となっている。そんな幼少期を過ごしたからこそ、科学を否定すると進化が止まるということをよく知っている。最近、僕の周りでもワクチンを打たない人たちというのを垣間見ることになった。一人は面倒くさいからいかない、一人は打たない権利がある、一人は打ったふりをしている。どれも僕からしてみたら同じ部類のカテゴリーにあたる、未接種リスクがどれぐらい社会にとって弊害があるのかが分かっていない人たちだからだ。もちろん、未接種して社会生活から断絶するのであればいい。そういう人たちに限って未接種だけど、しっかりワクチン接種した人が作っている社会との繋がりは当然の権利として主張する。

科学を否定する人たちは、歴史も学ばないし、否定する。人類の歴史は感染症との戦いであることを忘れてはいけない。ペストでは世界人口の30%以上が死亡し、スペイン風では5000万人弱がなくなったとも言われている。日本でも45万人亡くなっている。史上唯一根絶に成功した感染症、それが天然痘だ。イギリスのバークレイ生まれのエドワード・ジェンナーが、牛の痘瘡が流行っていた地域で、乳房に痘瘡がついたところを素手で搾乳していている人たちが、手の傷から牛痘にかかって数週間で完治した。その罹患者が天然痘にかかっていないことにヒントを得て、痘瘡から天然痘のワクチンを開発する。ワクチンという言葉は"vacca"が語源になっている、これはラテン語で雌牛を意味する言葉だ。やはり牛は偉いのである。(笑)人間の類まれなる観察眼と閃き、そして科学的なアプローチが1980年の天然痘の根絶を宣言する。この偉業を否定する人はいないだろう。

未知なるものは人々の拒絶を有む。こんな話をしてもワクチンのリスクを滔々と語ってくる。要はリスクマネジメントの話をしているのだが、リスクマネジメントはリスクをゼロにすることではなくて、リスクをどう認識することでマネージアブルな状態にするか?である。そんなことを生のサバを食べながら語る人に、そのサバを食べてアナフィラキシーになる可能性は考えないか?と伝えると、一回もなったことないから大丈夫と答える。こういう人たちがワクチン接種のリスクを語っているのがとても滑稽なのだ。あの時に弱い天然痘である牛痘にかかった女性たちを観て、より強く危険な天然痘と戦う。ウィルスと人間はある意味の共生関係にある、だからこそ相互理解が求められる世界だ。


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