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これからの飲食ビジネスを考える

思えば横浜のフードトラックから始まった僕の料理人人生も早いものでこの3月で5年間となる。30代半ばで大幅な人生の面舵を切ったわけだが、もう一度あの経験をやれと言われたら尻込みするぐらいの時間だったけど、本当にあのときにこれからは食で世界を目指すんだと決めたことが本当に良かったと思う。

WAGYUMAFIAは最初から会員制というスタイルを取っている。このコロナのタイミングのときにこの会員制をもう一度再評価することとなった。これからの食はコミュニティであると思っている。ゲストが誰であるのか、どういう方々なのか、前に何を召し上がっていて誰ときているのか、その基本情報を僕らは常に把握している。それがなぜできるのか、というと不特定多数のゲストを相手にしていないからだ。

もちろん飲食=ピュアに食を食べる、その最高峰での美食。この分野での究極の食を追いかけていくシーンは今後も廃れることなく、Foodieと呼ばれる人々も減ることなく今後も増え続けることだろう。美食は食べ手をもアーティストに変えるシンプルな能力を持っているからだ。そして人の飽くなき食への欲求の原動力として存在することは間違いない。ただし、ビジネスとして考えれば供給サイドの置かれた状況は全く違う。オーナーシェフ中心の小さなレストランであればなんとかいけるかも知れないが、50人〜100人規模の大所帯スタッフをかかえているファインダイニングは経営ともに厳しくなっていくことであろう。

WAGYUMAFIAは全世界に2000人ほどの会員メンバーを抱えている。基本的には紹介でも入れないし、年に一度のクラウドファンディングにてそのときの僕らを知ってくれた人たちを新たに会員として迎え入れるということをしている。新規店舗がオープンする前に大体300人程度の新しいメンバーを迎え入れるというスタイルを創業以来ずっと貫いている。

会員の中でも超常連の方々は全世界に200人程度だと思う。このスーパーメンバーが、僕らの活動そのものを伝えてくれるそんなコミュニティリーダーとなってくれている。このコロナのタイミングで、スタッフと心がけたのはこのコミュニティリーダーになりえる方々とのスタッフ主導の丁寧なコミュニケーションだった。

コミュニティを作っていく上で僕は店のサイズをとても重要視している。日本の国内の店舗はだいたい席数が20−30程度のキッチンとカウンターが同居しているコンパクトな店舗づくりを心がけている。これはシェフとサービスの垣根を無くすことで、クロスオーバーした仕事がしやすいという利点もあるし、すべてのスタッフの顔を覚えてもらえる唯一の方法だ。

今度オープンする新しい店舗はビル一棟と今までのサイズよりもかなり大きいが、各フロアーごとの各店舗のキッチンとインテリアの考え方は全く同じで、今までのサイズ感とキッチンとの距離を踏襲している。だいたい2−3人のキッチンスタッフを配置し、フロアーは2名程度。このぐらいのサイズ感だと、ゲストとのコミュニケーションも取りやすいのと、またゲストもスタッフも双方のことを記憶できる最適なスペースとなる。

カウンター越しの会話はとにかく楽しい。食材のことを語るのでも、最近の仕事のことを語るのでも、このコロナ禍で人とのフィジカルな距離が遠くなってしまってしまった心の距離をぐっと縮めてくれる。僕もキッチンワークが入っていない日によくWAGYUMAFIAに食事をしにいく。立ち上げ最初の頃はスタッフの動きやキッチンの中などが気になってしまったが、最近は完全にゲストとして居心地の良さを感じている自分がいる。帰り際に心がふわっと軽くなっている、そんな自分に気づくのだ。

僕らはゲストとの関係性、そして距離を普通のレストランよりも近くしたいと常に考えている。もちろんそれは友達としての関係を目指すのではなく、あくまでもゲストとサービスという関係性であることは間違いないのだが、カウンターの向こうと手前の垣根を無くしてノーサイドにしていくイメージとでも言おうか。人は社会性を失うと、生命活動そのものが弱まってしまう、そういう生き物だと思う。僕らは飲食ビジネスというカテゴリーに生きているのかも知れない、ただしこれからも今までもそうだが、僕らが従事している仕事はホスピタリティビジネスだと思っている。大切なコミュニティがあるから、そこにホスピタリティが相互に生まれる。どちらかが偉いのではなく、この相互にケアしていこうと思える関係が未来へと続くはずだ。

まだまだ僕らは小さなコミュニティだが、このWAGYUMAFIAというコミュニティ、ファミリーを全世界に広げていきたいと思う。ちょうど新しいオリンピックスタジアム近くに、愛情をとにかくかけた新しいお店「WAGYUMAFIA DISTRICT」がオープンする。そのオープンにさきがけてクラウドファンディングを実施しているので、もしも興味がある方はぜひみてもらいたい。食を越えたひとつの新しい体験を味わってもらえたら嬉しい。

WAGYUMAFIA最新クラウドファンディングはこちらより。

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