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ディスカウントは絶対NGであること

日本は長いことデフレである、3月の失業率をみても2.6%とインフレ傾向にあがらずともある程度抑えられている。インフレになるとモノの物価はあがる、それに伴って賃金も上がる。そうすると失業率が落ちる、まあ給料が増えてもモノの値段があがっているので同じなのだが、物価上昇率(名目賃金上昇率)と失業率の関係は明確にリンクしている、そう昔習った経済学のPhillips curve(フィリップス曲線)の話だ。飲食業の中で、完全にデフレトレンドにも関わらず、自らディスカウントに挑む人たちがいる。今日はそれをそろそろ止めた方がいいという提言だ。

僕らは単独でインフレに挑んでいる飲食業だ。カツサンドは2万円から、高いものでは10万円する。そしてラーメンも一杯、1万円と。日本の中でもひとりでロンドンの高級アドレスメイフェアーの価格帯で勝負している。20世紀にアメリカの巨大スーパーことWALLMARTはEVERYDAY LOW PRICEという標語で、とにかく大量仕入れやPB化でのコストダウンを目指した。これがアマゾンにとって変わって、とにかく車や電車などで移動しなくとも同じプロダクトだったら安い価格を探せるようになった。中間マージンをぶっ飛ばせば極限までさげられる、これがこの手の商売だ。僕ら飲食業はその真逆を行く、とにかく時間がかかる。和牛の生産には4年かかるし、使っている醤油は5年かかるし、お酢なんていったら8年もかかっている。そしてそれを管理している人のコストが時間経過と同じだけかかるという産業だ。先のフィリップス曲線を思い出してほしい、デフレ傾向、すなわち物価が下がれば、失業率があがる。この場合、飲食業でいうと人が雇えなくなるという負のスパイラルに突入する。

僕は飲食業が如何に人がいないと成り立たないかということを知っている。急に半額キャンペーンや、ポイント2倍キャンペーンなどを打ち出す企業があるが、これは100%間違っているということを声高にいいたい。僕にとってモノの価値というのは定価か、ゼロかどっちかしかない。誕生日プレゼントをもらって、やっぱりゼロじゃなくて、これ半分の値段で買ってよと言われたことももちろんない。対価というのはバーゲニングパワーが働いて初めて買うものではないのだ。とくに飲食業においては、人が作るものであるからこそ、なおさらだ。もしも来客が少ないのであれば、価格やポイント還元などの小手先マーケティングを脱却して、価値のインフレーションを目指した方がいい。それは物としての価格ではなくて、体験の価値の上昇だ。

僕らは常に物価の高いものを商いにしている、そこには体験価値をつねに新しくしていくということを心がけている。いいですか、人が体験価値を創出するのが一番効率がよく、しかもAIなどに勝てる唯一の提供価値なのです。もう一度、経済の勉強をしましょう。デフレ=人が辞める、そうすると自分も大変になるから、ずっと厨房にいて、コミュニケーションできない。ディスカウントを止めて、体験価値インフレこそ、これからの飲食の目指す方向性だ。だって21世紀なんだから!

写真は何もしないでもどんどんインフレしていく、うちのバーの数十年前のウィスキーたち。


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