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オールドインディアにてムガル帝国を味わう

世界の食は日本で食べられると言われて久しいが、地元のそれとは全く比較にならないものがある。インド料理もその一つだ。コロナ禍になってからのプロジェクトで、僕は和牛のカレーを作っている。井崎さんとのプロジェクトの妄想喫茶にてこのカレーがデビューするのだが、毎度アップデートを入れてかなりチューンアップしている。このプロジェクトのおかげで、担当しているシェフのジェイはすっかりインドカレー好きになってしまったぐらいだ。コロナ前はインドを定期訪問していたのだが、すっかり遠ざかってしまっていた。僕の和牛カレーを食べてくれデリー出身のサチン・チョードリーさん、「浜田さん、食はデリーです。絶対一緒にいきましょう。」と誘っていただき、実に40年ぶりとなるデリー訪問へ。

僕はこの国の人間らしい喧騒感がとても好きだ。オールド・デリーのチャンドニーチョークを歩いていると、この国にもっと早めに戻ってくるべきだったと確信したのだった。とにかくカオスだ、ありとあらゆるものが売っていて、空を仰ぐと猿が電線を渡っている、気づくと子供の物乞いがツンツンしてきていて、その先には生きた鳥をさばいて血が飛んでいる。その鳥がすぐさま、もはやなんの油か分からない油であげられている。鳴り止まないクラクション、リキシャとオートバイの無秩序な狂想曲が広がる。それでも怒鳴り声は聞こえず、喧騒の中に秩序があるのがこの国の特徴なのだ。

その中に"Karim's Hotel"は存在する。ホテルとついているがレストランの意味だ。1913年から続くこの店は、TIME詩のベストレストランにも輝いたこともある超老舗だ。ここのMutton Burraは絶品だ。Burraというのはケバブの最も古い料理のことだ。ケバブというのはもともとトルコとアラブの兵士が剣を使って焼き始めたBBQのことだ、1000年以上の歴史がある。ケバブが中東発祥のものだとすると、Burraはムガル帝国の遺産だと言われている料理だ。元々はムガル帝国の宮廷料理人を父にもった息子Hajiが始めたレストランだ。一口食べると、味わったことのない複雑な旨味が広がる。もうこの時点で、日本のインド料理のレベルとは申し訳ないが比べものにならないのだ。今日までは僕の単独行動だったが、明日からはサチンさんの最新デリーめぐりが始まる。今回も収穫が多そうだ。

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