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WAGYUMAFIA流チームビルディング

WAGYUMAFIAのワールドツアーが無くなったことにより日本での時間がメインとなった。こんなチャンスはないと、徹底的にスタッフとの時間に宛てた。週三回のマネージャー朝会、全店長ミーティング、キッチンインの回数を増やすなどだ。4年間オフィスというものが存在しなかったWAGYUMAFIA。つい先日アパートの一室を借りることになったが、オフィスでスタッフと話すということはこの3月から始まった新しい時間だ。今日は一週間に20時間ほどスタッフに時間を注いだらチームがどう変わったかをお話したいと思う。

元々僕自身、人を育てるのはうまくないと思っている。自分を教育することは上手な方だ。だから大抵のことは一人でやる。WAGYUMAFIAは海外売上が国内以上の規模をもっているが、未だに5年前の創業時から一人でコントロールしている。ようやくワールドツアーの大型ブッキングなどはロンドンにチームを作って一緒にコントロールできるようになってきたが、今年の課題は海外への和牛の輸出部隊のチーム化、海外渉外チームをしっかり国内に作ることだと思っている。

国内のチーム力はコロナ発生前で考えるとまとまっていないチームだったとつくづく思う。主要スタッフをワールドツアーに同行させて、現場のフィールドでチームビルディングをしていくスタイルをずっと取っていたが、店舗が拡大していく中で同行できないスタッフへのトレーニングも含めて、一度じっくり腰を据えて話す時間が必要だったのだと思う。

WAGYUMAFIAのチームビルディングの方法は明確だ。責任を持ってもらうということだ。以前映画の仕事をしてたときにとある監督が、アシスタントの女性をみてこう言った。

監督「君は何になりたいんだ?」
女性「いつかは映画監督になりたいです」
監督「だったらそんな仕事いますぐにでもやめて、早く映画を撮ったらいい。そんなラインケーブルを持つ仕事をしていても映画は撮れないよ。」

このダイアローグは女性の引きつった顔とともに強烈に僕の脳裏に記憶されている。料理の世界もそうで、ずっと葉っぱを並べているだけで1年間過ごす人たちもいる。ファインダイニングはそういう裏方を支える人たちがいないと成り立たないのも事実で、それは映画のラインケーブルを巻いている彼女と同じように、現時点でこの手の総合芸術を成り立たせるためには必要なのかも知れない。ただしそれは「現時点」の話だ。

前述の監督のようにその仕事を一生していても映画を撮るという目標には近づかない。葉っぱを丁寧に並べる仕事をしていても、エグゼクティブシェフやレストランオーナーにはなれない可能性の方が高い。間違えなく機械の方が早いと思うし、そこに個性を出す必要もないのも事実だ。僕らWAGYUMAFIAは新しいブランドだから、どうやって飛び級ができるかを必死に考える。そう、あの監督の助言通りだ。

このコロナ禍の中でまず最初にしたのチームビルディングは若手を積極的にヘッドにしたというところだ。ひとつの店舗のトップを25歳のシェフに任せることにした。WAGYUMAFIAで任せるという意味は、肉を捌いて肉を焼くだけではなく、そのひとつの店舗の経営そのものを任せるということを意味する。これは顧客へのアプローチ、SNSなどのマーケティング、イベントのブッキング、そして在庫などのコストコントールすべてを託すことを意味する。

結果としてこの新しい判断は一店舗を蘇らせる大きな飛躍となった。4年目の店舗といえば、そろそろ内装のリニューアルとか業態を多少変えるとか、そういうことを普通のレストランターは考えるのかも知れない。僕らはまずは店内を一度在庫も含めてまっさらな状態にして、オープン当時の状態まで戻すことをした。そしてチームを一新するということをしただけで、全く新しいレストランへと生まれ変わる。

次に行ったのは若手同士のレストランを競わせることだ。料理のクオリティもそうだし、売上、コストコントロールなどすべての数字は全店舗どの人間でもみられるようになっており、開示させている。気持ちのいい競争原理が働いているチームは、次第にお互いに助け合うということをする。在庫の共有、料理のポイントだったり、顧客の情報共有や誘導なり、生きたコミュニケーションがそこに生まれる。

3月からのチームビルディングから半年、チームは見違えるほどピカピカになったと思う。昨日の焼肉鶯谷園でのチームキックオフにてそう感じたのだった。一人のマネージャーがこう言った。

「年末に親族が病気になり、その病気を治せる可能性がある医者が日本には一人いた。そこで、直接交渉したところ、なんとその医者が受けてくれることになった。そんなことはWAGYUMAFIAにいなかったらそもそももの経験値としてできなかったと思う。」

思えばWAGYUMAFIAは、そんなの絶対できないと言われ続けた歴史だ。未だにそんな言葉をたくさん聞く。だったら自分で動いてやればいい。知識をつけて、頭を使った、そして行動から学ぶ。簡単なようで、最後の行動から学ぶことが意外とみんな出来ない。

25歳のシェフはもともと蟹を叩き割りつづけていた料理人だった。インスタグラムで僕宛てに届いたメッセージはこういうものだった。

「肉食べたいです。働かせてください。」

その彼が休み時間に英語を勉強し、2年後には英語で常連外国人のアテンドを担当し、単店舗で年商1.5億円のビジネスをまわすようになる。蟹を叩き割りつづけるという責任から、もっと大きな責任を背負って成長したのだった。

WAGYUMAFIAの仕事は大変だ。ただし僕を含めてかけがえのない経験を運んでくれるプラットフォームだ。ぜひ一緒に世界を目指したい若者は僕のインスタグラム@wagyumafiajobs@wagyumafia.comまでメッセージしてもらいたいと思う。

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