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サウナとアイスバスの間で

ここオースチンではいつものように友人シェフ夫婦の家に泊めさせてもらっている。アウレリアという娘が僕らの娘と一月違いの同い年でそれも手伝ってか、オースチンを一気に身近にしてくれた。僕の楽しみといえば彼らと過ごす時間はもちろんなのだが、朝起きて朝食を作った後にバレルサウナに入ってから、アイスバスに入ることだったりする。ダウンタウンから30分ほど離れた場所に彼らは住んでいて、広大な土地に住んでいるのだが彼らがLAから移住してきた理由がこういうところにもあることがよく分かる。

車社会ではあるが、ゆっくりとした時間がここにはあった。毎朝、友人と一緒にゆっくりサウナで話をする。彼の奥さんはラトビア出身であり、サウナの本場である。奥さんのお母さんはビールをかけるのよと教えてくれて、僕らは地元のIPAをぶっかけてみたのだった。不思議なことに舞茸のスープのような香りで充満し、そこからパン屋のキッチンの香りに変わっていく。お互い料理を生業にしていることもあって、その香りの変化を伝え合っていくのだが、少し残したビールを二人で一口づついただくのだ。

馬の餌箱を改造したアイスバスはここ数年、僕のアメリカ人の友人界隈間で人気である。トップシェフである彼はスポンサーシップで寄贈されたという。日本でいうところの水風呂なのだが、ゼロ度にキープできるというのがすぐれものだ。構造は至ってシンプルで、組み合わせれば自分たちでも作られるぐらいだ。サウナで話し込んだあとに水風呂に使って、そこから少しあたたかいプールに入る。それだけで頭の中の余計なデフラグが出来る。今日のサウナのトークは、シェフかクックの違いだった。たいていのシェフはエクイティを持っていないから責任感がない、そして自分がやっていることを人に教える能力がない。それはシェフではなくてクックであるということだ。これは自分でも明文化したかったことだが、クックあがりでシェフになりそして経営者になった彼の言葉はとても大きい。

この間TAMAの玉ちゃんともそんな話をした。「料理人は料理をすれば仕事だと思っているからね。」とそんな一言だった。常に現場に立っている彼の一言と、今日の友人の言葉が妙に奇妙に交錯するようで、いい頭の整理になった。僕は経営者からキッチンに立ち始めた変わったスタイルを取っている。今ではツアーでは自らが主役でショーメイクをするし、日本でも可能な限りキッチンに立っている。今後のWAGYUMAFIAを考えると、どういう変化をしていくのがまた楽しみだが、僕自身の今後のライフスタイルが、後輩にどう影響できるかをも含めてしっかり考えて行動していきたいものだ。


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