見出し画像

コストパフォーマンスほどダサい言葉はない

香港にオープンしたMASHI NO MASHIを日本に逆輸入すると決めたときに、1万円のラーメンを作る決心をした。すべてにおいて妥協をせずに、それでも美しすぎずしっかりストリートなラーメンを作りたい。そして生まれたのがWAGYUJIROだった。1000円の壁がある日本のラーメンの世界、それならばいつものようにありえない手間と食材を使って、更にハードルをあげてみるというチャレンジだ。

シンガポールに住んでいたときに不思議なことがあった、海南鶏飯(ハイナンチーファン)がどんなことがあってもそれほど鶏のクオリティが変わらない。聞くと値段をあげたら絶対ローカルは食べに来ないとみんな口を揃えて言う。帰国して名古屋コーチンやら比内地鶏やらを使って作ってみたところ、これが激的に美味しい。もちろんローカルが出す値段では食べられない。シンガポールの友人に食べてもらったところ、今までの海南鶏飯のイメージを根底から覆す味と絶賛された。

僕らはふと気づくと、「昔からそうだったから」という慣例の呪縛に犠牲になっている気がする。それは海外からのチョコレートだったら一粒1500円でも買うのに、ラーメンだと1000円を越えたら一気に高いと感じてしまう感覚に似ている。そして良く聞くのがコストパフォーマンスというあの忌々しき言葉だ。僕はこの言葉を使った時点で、心の中で「あぁ、この人もそっち系ね」と思ってしまう節がある。コンテンポラリーアートを買うときに、絵の具の値段を気にする人や額装の値段から最終価格を気にする人はいない。コストパフォーマンスを気にする人もいないということだ。

僕らは壮大なる遊びをしている。ありえないぐらいの時間がかかって、ありえないぐらいの食材を使って、そして1万円のラーメンという作品を世の中に出している。このラーメンを食べるということは、500円のラーメンでカロリーを満たすことでは、達成できない「経験」というものを手に入れることができる。あとは食材をそこまでアップグレードしたときに、いつも食べていたラーメンとどういう差が生まれるかも、五感で体験できるのだ。

経験はコストパフォーマンスなんてダサい言葉では語れないし、だからこそ僕らは食材に徹底的にこだわるし、五感で感じる全ての要素をオリジナルな形で変えている。それはゲストが体験するその経験こそが、価格やコストとは無縁の唯一無二の価値になると信じているからだ。

この僕らの壮大なチャレンジに続々と仲間が集ってきている。日曜日は富山より寿司職人が富山ブラックラーメンを作る。そしてゴールデンウィーク明けはいよいいよ煮干しラーメンの雄、ゴールデン街で幾度とお世話になったラーメン凪が帰ってくる。そして初めて親父が連れて行ってくれたラーメン屋ことあの熊本の桂花ラーメンもついに参戦だ。

ラーメン凪の代表、生田悟志さんがとても心あたたまるエールを書いてくれた。ぜひ読んで頂けたら幸いだ。

4/25日曜日の富山ブラックby GEJOも楽しみだ。僕も客側でがっつりSLURP LIKE A BOSSしたいと思ってる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?