札幌にてスープカレーについて考えてみる
時々無性に辛いものが欲しくなる。ニセコのコテージで火鍋を作りながら、帰路に着く前にメディスンマンに寄らねばとそう誓ったのだった。そこは札幌にあるスープカレーの店で、僕はいつもチキンカレーの辛さレベル30を注文する。
スープカレーとは不思議な食べ物である。スパイスが効いたスープにチキンレッグや野菜が入り、ライスは別盛りだ。僕はソルロンタンを食べるときのようにスプーンで静かにご飯を真っ赤なスープの中に浸してからいただく。スープをご飯にかける人もいるが僕はあれは邪道だと思っている。
元祖はアジャンタというお店だ。70年代前半に身体が弱っていたお父さんに作った薬膳スープがその元祖という。スープを煮出すときに使っていたチキンレッグなどを盛り込み今のスープカレー+ライスという王道が完成されたのが75年の頃という。その時はまだ薬膳カリィと呼ばれていたらしい。スープカレーという呼称は93年にオープンするマジックスパイスが考案した。以降、札幌市内でも200を超えるスープカレー屋ができる札幌を代表するソウルフードへと成長した。
このコラムにも登場した僕の札幌御指南役である松尾大ちゃんによると、実はアジャンタの前に、スープカレーの具材のベースになる店が存在する。それがチャンドニー華麗ばぁーだ。スープカレーには欠かせない具材たち、ピーマンなどがカレーに入るというアイディアはここのカレーから来ているらしい。
大のカレー好きな僕がスープカレーにハマったのは、以前の会社ふぁあった原宿にシャンティという店があったからだった。あるシーズンの夏に毎日辛さのレベルを少しづつあげていき40倍の辛さの到着することができた。食後感として頭の天辺から蒸気が噴き出る感じだった。
そこから札幌のスープカレーを回る旅が始まった。そして松尾大ちゃんが紹介してくれたカレーが、メディスンマンだった。今まで食べたスープカレーの中でもダントツに美味かった。美味すぎて辛さのレベルをあげるのをしばらく躊躇したぐらいだった。それぐらいベーススープの完成度が高かった。数年経ってから徐々に辛さをあげて、今は30倍に落ち着いている。ここのスープカレーはここまであげても、実にバランスがいい。
ちなみにこの辛さのレベルを変えられるという、カスタマイズアイディアもどうやらマジックスパイスを起源としているらしい。食べ手の心をついつい覚醒させてしまう憎い演出だと思う。