感動する話として投稿した話
私は高校時代、バレーボール部に所属していました。
そこはいわゆる古豪と呼ばれる部で、ここ十数年は地区優勝を逃していたのですが、私が引退となる3年生の春、ついに地区大会の決勝に進出しました。
試合は5セットまでもつれ、一進一退の攻防。2点差の優勢となったところで監督にピンチサーバーとして呼ばれました。
優勝がかかった大事な場面。私は緊張のあまり体がこわばってしまいました。そんな様子に気付いたのか、監督は私の肩をぽんと叩きこう言ってくれました。
「今までお前が必死に練習してきたことはチームメイト全員が見てきている。努力は裏切らないし、例えどんな結果になろうと、仲間は絶対にそれを受け入れてくれる。この3年間でお前が得たものは、かけがえのない仲間だ。胸を張るんだ」
優勝を目の前にして監督のほうこそ生唾を飲むような顔をしていましたが、しかし自分の気持ちを抑えてかけてくれた言葉に緊張は解け、硬くなっていた体がゆるみました。そしてまるで胸を突かれたようでした。
結局私の出番はなく肝をつぶしただけで終わりましたが、チームはなんと優勝し全国大会へ進出することができました。
残念ながら私はやむをえない事情で部を去り全国へは行けませんでした。まるで身を切られるような思いでしたが、きっと我が部は全国でも活躍したものと信じています。
最後になりますが、実はあのときの監督こそが、出会ったら必ず食い殺されるでお馴染み「妖怪つるべ落とし」だったのです。