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どの砂糖であんを炊く?

菓子と砂糖は深ーい関係にある。私の使い分けについて書いてみる。

砂糖の小話で私が好きなのは「長崎が遠い」という表現。日本で広く庶民に砂糖が広まるのは江戸時代、徳川吉宗がさとうきびの国内生産を奨励して以降のこと。それまでは、長崎に入るオランダや中国からの輸入にたよった大変な貴重品だった。それを反映していて面白い言葉で、甘みが足りないことを表したという。琉球が遠いというのも同じように使うらしいが、面白いなぁと。

砂糖の歴史は書き始めると膨大になるので止めておき、使い分けについてご紹介を。

砂糖について

さて菓子作りをする際の砂糖の働きは、保存性を高める水分を保つ透明感を出すといったものがあるが、砂糖を加えない寒天が白濁しているのに、砂糖がたっぷりと加えられた錦玉になるとガラスのような透明感が出るのはこの働きのため。

時々レシピから砂糖を減らしても良いですか?と聞かれますが、もちろんレシピはお好みで調整していただいてかまわないもの。しかし、気をつけていただきたいのが、単に甘みが減るだけではなくて、その食感や色味、保水性にも関わってくるという点。

人気のあるいちご大福などにも使われる求肥生地、これはもち米の粉と水と砂糖でできているが、そこから砂糖を減らせばただの「餅」に近づき、透明感がなくなり、冷えた時に固くなりやすくなる。そういったことも想像しながら増減していただけると失敗しないかなと思う。

どの餡がお好みか。

教室では毎年5月のレッスンは「あんの炊き方とどら焼き作り」その際に小豆を炊いたものと白インゲン豆を炊いて、それぞれ白砂糖・きび砂糖・黒糖で練り上げた6種類のあんを用意して、食べ比べて頂く。

これがとても面白く、色も味わいも全く違った6種類のあんに対して、生徒さんにお好みを伺うと皆様バラバラのお答え!

白い砂糖は、一番すっきりとして豆の味わいをダイレクトに感じられる。きび砂糖はまろやかでこっくりとした柔らかい味わいに。黒糖は一番印象的なきついといっても良い味、塩気やミネラルを多分に感じられる。

これだけ違うのだから、当然使い分けも出てくる。

白い砂糖は上生菓子の美しい練り切りなどに使うと発色も良く、すっきりとした甘みに。また透明感が美しい寒天系の錦玉などにも欠かせない。

私個人がおやつに善哉などを作るときによく使うのがきび砂糖。まろやかで風味が増すので少ない砂糖でも美味しく感じる。少ない砂糖にする際のコツとして、ぜんざいやどらやきなどのあんには”塩”を効かせることも大切。塩が入ると甘味をグッと強く感じるようになる。ぜひ、塩を入れる前と塩を混ぜた後のあんの味を食べ比べしてほしい。

逆に、練り切りなどすっと甘みが引いてほしいような菓子には塩を入れたあんはあまり使わない。

黒糖のあんは、黒糖100%で炊くよりも、白砂糖やきび砂糖で炊く時に何割かを黒糖にして炊くことが多い。なぜならとても強い味が出るので。黒糖で風味の増したあんは、饅頭などに使うのもおすすめ。または水羊羹などにも良い。福井の水羊羹のように、冬に作って暖かな鍋物などの後のデザートにしても好評。

和菓子と一緒に何を飲むのか。

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和菓子に砂糖を使い分ける時に気をつけているのは、何を合わせて飲むかということ。

写真は5種類のイタリア自然派ワインと和菓子を合わせるイベントを行なった際のものだが、試食を重ねるうちに、自然と砂糖はきび砂糖や黒糖になっていった。驚くほど砂糖を変えるだけでワインとの相性が違ったのだが、不思議なもので雑味のある味わいがお互いに歩調が合うのか、白砂糖の出番は少なかった。

お客様に大好評だったマリアージュは写真のベッキオサンペリと寒天の中に小豆あんと黒糖の塊、くるみを包んだもの。ガリッとした黒糖のインパクトと濃厚なマルサラ酒がよく合った。

何と合わせてその和菓子をいただくのか、それによって砂糖を使い分けてみるのも楽しい。羅漢果やはちみつ、メープルシロップなどでも炊いたことがあるが、それぞれ想像以上のお味になった。ぜひ、ご家庭であんを炊いてみていただきたい。

教室で使うあんを一年中炊き続けているわけだが、失敗からの発見もある。そんな小豆の炊き方のお話はまた今度。






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