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ミャクミャク様について語る時、私の語ること

2020年の東京五輪。
2025年開催予定の大阪万博。

歴史的かつ世界的イベントの開催を
この日本の地で開催することに
我々は胸を高鳴らせ、希望へと邁進していく
はずだった。

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突如、我々の平穏を奪ったコロナ禍。
瞬く間に広がる感染。
緊急事態宣言により、ゴーストタウンと化した街。
その猛威は、平和の祭典であるオリンピックにも波及し、開催の是非を巡って様々な意見が飛び交った。

そして、それらは大阪万博にも当然向けられることになる。
もはや、そんなイベントごとなど不可能ではないか。無意味なことはやめたがいい。そんな人々の批判が向けられた、その時。

"異形"が現れた。

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ーー2020年8月25日 ミャクミャク様顕現ーー

特級仮想マスコット、ミャクミャク様の顕現である。

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赤のむにゅむにゅに目玉がぎょろぎょろ
青のドロドロした体からは体液の一部が
染み出している。耳元まで裂けた口元はにっこり笑顔だ。

その趣味の悪いポンデリングの怪物を前に
人々は困惑した。
これが大阪万博のマスコットキャラらしい。
これは一体なんなんだという声が上がる中、
一部の人には「キモ可愛い」と評判になり人気を博している。
そして、それはアンガールズ田中と両生類以外のキモ可愛いものが大好き、BLEACHでは涅マユリが大好きな私にもずぶりと刺さった。
敗北だヨ。

「なんだこれかわいいなぁ〜」
「体のどこかにある核(コア)を破壊しないと倒せないタイプの敵だ。かわいいなぁ〜」
「食べ物(人)を与えたら目玉が全部 ⌒←これに
なったらかわいいなぁ」
などと妄想が捗って仕方がなかった。

しかも"ミャクミャク"という不可思議な名前が相まり、ネットでは"ミャクミャク様"と呼ばれ神格化され、瞬く間に畏怖の対象と化した。

くねくね然り尺八様然り
洒落怖土着信仰系ホラーが大好物な私にとって
これ以上ないキャラクターである。

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Aさん(仮名)が我々の前に差し出したのは
1枚の古いお札のようなものだった。
そのお札には、もくもくした輪っかに
ぎょろぎょろした目玉がたくさんつき、
耳元まで避けた大きな口を持った怪物が描かれている。
そしてその上に「巳厄脈様之図」と筆で書かれていた。

ーー「これが例の?」
Aさん「そうです。私の曾祖父が管理していた蔵を取り壊した時に、床板を引き剥がしたらこのお札がびっしり敷き詰められてたんですよ。もう何が何だか分からず不気味で……」
ーー「床一面に」
Aさん「はい。曽祖父も亡くなってだいぶ経つし、いよいよ取り壊そうとのことで業者を雇ったんですが…大半は業者に処分してもらいましたが、何枚かは取っていました。」
ーー「巳厄脈様とはなんでしょうか?」
Aさん「気になって調べたんですが、全く分からずじまいで…」
ーー「神様のように見えますね」
Aさん「そうなんでしょうね。でもなんの神様なんだか…………そういえば、あの蔵を取り壊して更地にしてから、変なことが起きるらしいです」
ーー「変なこと?」
Aさん「どんなにカンカン照りの日でも、あの土地だけ雨が降ったみたいにぐしょぐしょらしいんですよ。地面が濡れているというか。……じとーっとしているというか。もしかしたら湧き水かなんかが湧いているのかもしれませんがね。」

その後しばらくして、その土地にアパートが建った。しかし、数ヶ月して「幽霊アパートだ」とのことで街中の噂となり、すぐさま取り壊されることとなった。
オカルトライターの私の元にも多数の話が舞い込んできているが、そのほとんどが、
「夜、窓を見ると無数の目玉が部屋をのぞいていた。」
「水道から赤い液体が出てきた。」
「風呂に入っていると笑い声が聴こえる」
などと、同じ内容のものだった。

まさかね、と思いながら、私はAさんから
預かった、ぎょろぎょろ目玉の怪物のお札を
見つめていた。

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などと妄想が捗って仕方がない。

しかし、日本人のキャラクターを作るセンスはすごいと思う。

刀剣・戦艦・国・ウマ果ては企業まで、
擬人化していないものはほとんどない。
ポケモンを始め、世界的に有名なキャラクターはいっぱいいる。
もはや、漫画アニメキャラクターは
日本の輸出産業の骨子を担うと言っても
過言ではないだろう。

日本古来の万物に命が宿るという
アニミズムの精神。
姿形の見えない不可思議な現象に
姿と名前を与えた妖怪。
物語を絵という技法で残した鳥獣戯画に始まる漫画の歴史。
歴史的にクリエイターセンスの高い国なのかもしれない。

ミャクミャク様が世界にどれだけ羽ばたくか、
フィギュア化されたら買って玄関に飾り
魔除けにしたい。

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