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新型コロナ療養記 其之二

〜これまでのあらすじ〜
熱が出て、病院行ったらコロナっぽいって言われた。


2022.2.11(金)

深夜。違和感と共に仲良く目を覚ます。
熱い。熱いと言うか寒い。というか冷たい。冷たい?
ふいに気づいた。布団がぐっしょぐしょに濡れているのだ。
「うえっ」っと間抜けな叫び共に飛び起きる。全身汗びっしょりだった。額はもちろん、全身、汗腺という汗腺全てから大量の汗を吹き出しているのである。その汗がパジャマ代わりのユニクロのパーカー、ズボンを飛び出して布団にまで及んでいた。

人間このような状況下では笑うしかない。
碇くんからわざわざ教えてもらうまでもない。

服を脱いでタオルで全身を拭き取ると、新しい着替えに身を包み再び布団へ潜った。明日は布団を洗わなきゃなあ。

病気で熱を冷やしている人のイラスト(男性)(いらすとや)


8:30 起床

体温は37.5度。昨日あんなに汗をかいたのにまだ体温は下がりきっていない。でも倦怠感はだいぶなくなっている。解熱剤をまた飲むと、昨日にはなかった食欲が湧いてきた。菓子パンとゼリー、野菜ジュースにて簡単に済ませる。
体が動かせるうちにできることはしてしまおうと、午前中に部屋の片付けをし、夜に備えて米を炊いた。毛布は外に干し、布団にはこれでもかとファブリーズをかけまくった。
結局この日の熱は36度〜37度を行ったり来たり。あと喉の痛みがピークだった。ただ、何も飲み込めないというほどではないのが唯一の救いだった。また、新しい症状なのか鼻水が出てくるようになった。
この鼻水が後に私に恐怖と絶望を与えることになるともつゆ知らず、私は遥か昔のシンオウ地方がかつてヒスイ地方と呼ばれていた世界で、ポケモン捕獲に勤しんでいた。

いろいろな角度から見たマスクのイラスト(いらすとや)


2022.2.12(土)

この日の11時過ぎ、先日診察を受けた病院から電話がきた。PCR検査の結果を伝えるためだ。
果たして私の検査の結果はーー

賢明な読者諸君はお気づきの通り、立派な陽性である。そうでないとタイトル詐欺だ。いいね稼ぎだ。

しかし、陽性。改めて聞くとショックな響きだった。
同時に何度も己に問いかけた「どこで?」という疑問がぐるぐると再び甦ってきた。
当たり前ながら感染対策はしっかりしていたつもりだった。どこで感染したかと聞かれても、思い当たるところは通勤途中、スーパー、コンビニ、しかしどこでもマスクはしていた。思い当たる節がない。
しかしどこでかかったかなんて結果論でしかない。問題はこれからだ。
私は何よりも、周りの人たちに感染が広がらないか、それだけが心配で、胸がぎゅうっと潰れそうだった。

その後、保健所から電話があり、症状のヒアリング、自宅療養の注意点等の説明が20分くらいあった。電話の先の保健所の人の声は掠れており、恐らく1日に何度も同じような電話をかけ続けているのだろうなと思うと申し訳なさとありがたみを感じずにはいられなかった。

かくして、暫定的にスタートを切っていた新型コロナ療養記は改めて本格スタートとなる。幸運にも熱は下がり、喉の痛みも落ち着き、咳と鼻水のみの症状となっていた。

妖精のイラスト(空想上の生物)(いらすとや)


2022.2.13(日)

匂いがしなくなっていることに気づいたのはその日の昼だった。食事をしても匂いをほとんど感じない。

物凄く焦った。
恐らくは、コロナそのものというよりは、止めどなく溢れる鼻水をかんでは捨てかんでは捨てを繰り返すうちにすっかり麻痺してしまったような感覚だ。

慌てて食卓用スプレーや、仕送りのポンカン、匂いが強いものを嗅ぐことで嗅覚の異変を確かめようとしていた。カレー粉を直に嗅いだ時はさすがにむせた。
全く感じないということはないものの、やはり匂いを嗅ぐ力が弱くなっている。これではとても鬼を見つけることなどできやしない。
少年マンガではしばし敵の五感を奪う能力者が登場するが、私にとっては匂いが分からなくなるだけで、この絶望感。到底私はこのような能力者と相対してテニス対決に勝つことなど不可能に近い。

このまま一生匂いが戻らなかったらどうしよう。

夜中、急に不安になり目を覚ました。またも汗をかいている。冷や汗だった。
変わらず嗅覚は弱ったまま。スポーツドリンクの風味が分からなくなってしまっている。
急に心細くなり、Twitterを開いてエゴサする。
同じような境遇にある人はたくさんいるらしい。
同時に、嗅覚が戻ってきたという人たちもたくさん見つけた。根本的解決にならなくとも、少しだけ安心感を覚えた。

時刻を見ると、朝5時30分。
夜中だと思ったものの、意外と明け方近くまでぐっすり寝ていたらしい。
そう思うと少しだけ滑稽な気がして、また眠った。

東京アラートのイラスト(レインボーブリッジ)(いらすとや)


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