『クラッシュ・テスト』 〜フランス映画(MyFrenchFilmFestival)長編19番勝負 19/19〜

奔放だった母の反動から予想外の出来事を嫌い、自ら定めた生活のルールを厳格に守るようになったアグラエは、車の衝突実験に関わる整備技師という今の仕事を天職と感じている、ところがある日、業績不振を理由に工場のインド移転が突如決定、実質上の解雇宣告に逆らい、無謀にも彼女はフランスからインドまでの旅を決意する。
原題の『Crash test Aglaé』が示す通り、本作のテーマは、なんの保証も後ろ楯もなくただやみくもなパワーのみによって突き進むアグラエが道中で巻き起こす豊かな“衝突実験”、その変容のダイナミクスにこそあり、「今の仕事を続けたい」という愚直な意思が、人種も国籍も飛び越え、やがて会社や世界にまで影響し、ついには殻に閉じこもって生活していた彼女自身をも劇的に解放していく様は圧巻!
ポスト・フォーディズム社会における人権軽視の問題は今や世界共通だが、そこに労働組合が政治的な発言力を有するフランス独自のお国柄が反映されつつ、真の意味における女性の自立が模索される(本作に限らず、母親が娘に与える影響はかくも深刻なものか!)、ユーモラスだが侮れない傑作。

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