『パリ・ピガール広場』 〜フランス映画(MyFrenchFilmFestival)長編19番勝負 1/19〜

仮釈放中のギャング・ナセルは兄アレスキーが経営する酒場をクラブに改造し、仲間たちと一攫千金を企むが···ゴーゴリの短篇小説『ネフスキイ大通り』は、ロシアのサンクトペテルブルクにある同名の目抜き通りの上空にカメラをセットし、無慈悲で哀感漂う都会の人間模様を定点観測したような作品だが、本作における主人公も実はパリのピガール広場そのもので、裏社会に生きるハスラーたちの熾烈な騙し合いを中軸に、容色の衰えた高齢娼婦、違法コピーされたディスクを売りさばく者、シケモクを拾い集める浮浪者(着たきりのジャージが微妙にトリコロールカラーである皮肉)などを脇に配することで、華やかなイメージとは対極にあるパリの暗部を生き生きと活写している。
メガホンを取ったのは、ラップグループLa Rumeurのメンバーであるモハメド・ブロクバとエクエ・ラビテの二人、フランスのラップ=ラップ・フランセは一般に政治色が強いのが特徴だが(“コーヒー色のゲンズブール”の異名を持つMC Solarのような変わり種も存在するものの)、彼らもその例に漏れず、オールドスクールなトラックに乗せて街の声なき声を発信し続けている。
Oneohtrix Point Neverを思わせる(彼が手がけた『グッド・タイム』のサントラは素晴らしかった。ついでに言えば、あの映画の冒頭10分間だけは痺れる出来)トロピカル・ノワール(ネオン・ノワールと見せかけ、実は)な音楽を提供したDemon & Pepper Islandなるアーティストの詳細は残念ながら追えなかったが、これも特筆すべきポイントだろう。

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