『僕とコプトとマリア様』 〜フランス映画(MyFrenchFilmFestival)長編19番勝負 7/19〜

コプト、ムスリムが多数を占める国エジプトの少数派キリスト教徒、1968年、首都カイロのザイトゥーン地区で突如発生した聖母マリアの出現現象、鳩(宗教画、特に“受胎告知”テーマにおけるキリストの象徴)を傍らに光り輝くその御姿を目撃した群衆の中に、コプト教徒である母もたしかにいたという、その不思議な縁を知った青年ナミールはフランスから祖国エジプトへと飛び、自身初の長編映画となるドキュメンタリーの撮影を開始する。
はたして、聖母顕現は人智を超越したマジもんの奇跡か、はたまた67年の第三次中東戦争敗北の目くらましに政府が仕掛けたトリックなのか?という大テーマは早々と置き去られ、「むしろエジプトという国のことを知りたい」というナミールの言葉通り、映画は彼のルーツ探しの旅へと変貌し···ていくかと思いきや、最終的に予想を超えた爆笑展開へとなだれ込む。
いったいどこまでが真実でどこからが演出なのか?虚々実々の魔球ドキュメンタリーとして、昨今なにかと話題のアートテロリスト・バンクシーの活動を追った記録映画と油断させつつ背負い投げをくらわす『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』や、カンボジアにおける過去の大量殺戮者兼現英雄のギャングたちが残虐な所業を自ら再演する『アクト・オブ・キリング』といった問題作が想起されつつ、こちらの手触りはいっそう愉快で健康的。

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