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完全版 “3 Sentence for 90 France”

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🇫🇷🗼世界にひとつ!マニアックなあなただけに送るフランス映画カタログ!🎨🍷🏰 🥖〜完全版〜🥖 自粛期間中の1ヶ月で、MyFrenchFilmFestivalという映画賞サイトで…
とにかく僕がアピールしたいのは、MyFFFの全82作品をすべて見たのはたぶん日本でただ一人、まして…
¥500
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#note映画部

『パリ・ピガール広場』 〜フランス映画(MyFrenchFilmFestival)長編19番勝負 1/19〜

仮釈放中のギャング・ナセルは兄アレスキーが経営する酒場をクラブに改造し、仲間たちと一攫千金を企むが···ゴーゴリの短篇小説『ネフスキイ大通り』は、ロシアのサンクトペテルブルクにある同名の目抜き通りの上空にカメラをセットし、無慈悲で哀感漂う都会の人間模様を定点観測したような作品だが、本作における主人公も実はパリのピガール広場そのもので、裏社会に生きるハスラーたちの熾烈な騙し合いを中軸に、容色の衰えた

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『正しい人間』 〜フランス映画(MyFrenchFilmFestival)長編19番勝負 2/19〜

カーラジオを盗もうとしている子供を注意したことから暴行に巻き込まれたエディ、数日前仕事のセミナーで出会ったアハメッドを主犯格と思い込むが·····ポスト資本主義世界の救いなき『タクシー・ドライバー』。
加害者も被害者も本当には存在せず、よほどの金と権力がない限りそのコスプレを死ぬまで演じさせられるに過ぎないおしくらまんじゅう社会であることは日本もフランスも同断とはいえ、その悲惨なモノマネショーに対

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『熱風』 〜フランス映画(MyFrenchFilmFestival)長編19番勝負 3/19〜

『キリマンジャロの雪』『ル・アーヴルの靴みがき』のジャン・ピエール・ダルッサンが“怪物としての少年”の役柄(限界突破して恐すぎるヨルゴス・ランティモスの映画『聖なる鹿殺し』のバリー・コーガンを思わせる)に体当たりで挑んだ衝撃作。
とある農村の鼻つまみ者が何者かによって殺害される時点から逆向きに語りを起こし見知った顔のみで構成される田舎社会特有の濃密で閉鎖的な人間関係を浮かび上がらせる構成はノーベル

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『ソヴァージュ』 〜フランス映画(MyFrenchFilmFestival)長編19番勝負 4/19〜

街娼をしてかろうじて露命を繫ぐ22歳の青年レオは、荒廃した暮らしの中で本物の愛を手に入れたいと願う。
男性器がノーモザイクで映されるゴリゴリにハードコアなホモ映画ながら、唐突に美しいシーンの連続に虚をつかれるーー老人が妻の思い出を語る場面で化粧台がぼんやりズームイン、男性器の象徴である飛行機が丘に座る男娼二人の眼前スレスレを上昇、喘息用の吸入器をマリファナさながらに回し呑みーー極めつけは、行き倒れ

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『同化・非同化』 〜フランス映画(MyFrenchFilmFestival)長編19番勝負 5/19〜

実のところ人間を洗脳するのはたやすい、孤立と自己放棄という二つの条件をクリアしさえすれば。
孤立、ターゲットを家庭や社会に繋ぎ止める絆をひとつずつすべて切り離す、自己放棄、これまで教えこまれてきた事柄のいっさいはまやかしであり即座に捨て去るべきものであることを徹底して教えこむ、これらの恐るべき過程を経験した人間は、いわば空っぽの容器のような状態にまで転落し、いかな危険な思想であろうと好き放題に詰め

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『ぼくが数学を嫌いな理由』 〜フランス映画(MyFrenchFilmFestival)長編19番勝負 6/19〜

数学なんて何の役に立つの?意味ないじゃ〜んという軽口とともに蔓延する“数学ぎらい”を身近な出発点に、いかにして数学が歴史を動かし、経済原理や金融モデルを支配するまでに至ったかを明らかにする射程の長いドキュメンタリー。
前半では、数学に対するパブリック・イメージや教育を巡る課題、現役数学者たちの研究内容や美的なこだわりといったポジティブな側面が取り上げられ、後半は、アルゴリズムを応用したGoogle

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『僕とコプトとマリア様』 〜フランス映画(MyFrenchFilmFestival)長編19番勝負 7/19〜

コプト、ムスリムが多数を占める国エジプトの少数派キリスト教徒、1968年、首都カイロのザイトゥーン地区で突如発生した聖母マリアの出現現象、鳩(宗教画、特に“受胎告知”テーマにおけるキリストの象徴)を傍らに光り輝くその御姿を目撃した群衆の中に、コプト教徒である母もたしかにいたという、その不思議な縁を知った青年ナミールはフランスから祖国エジプトへと飛び、自身初の長編映画となるドキュメンタリーの撮影を開

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『ギャスパール、結婚式へ行く』 〜フランス映画(MyFrenchFilmFestival)長編19番勝負 8/19〜

父親の再婚を祝うため地元に帰省することになったギャスパールは、「独り者であることを知られたくない」と、偶然知り合った女性ローラに恋人役を頼みこむ、不安げな彼女を連れてたどり着いた実家は、なんと動物園、そこには女好きで遊び人の父、実兄ギャスパールに本気で恋する妹など、いずれも変人揃いの家族が待ち受けていた。
悪いけどつまらない、きもちわるい、たいくつ。
オシャレでちょっぴり奇妙な、いわゆるファンタス

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『ギャロップ』 〜フランス映画(MyFrenchFilmFestival)長編19番勝負 9/19〜

うわーむちゃくちゃいい映画·····(ため息)自由でまっすぐな若者の、なかなか一筋縄ではいかない大人の、老いと死を見つめる老人の、三世代に渡る愛の形が並列に物語られ、それらが反射し合いながら交わっていくことで、苦味と酸味に溢れ、しかしいつしか甘くなる人生の不思議が香り立つ。
72本目にしてやっと来ました、フランス映画と聞いて誰もが真っ先に思い浮かべるタイプの恋愛もの、皮肉屋の小説家とアンニュイな女

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『悲哀クラブ』 〜フランス映画(MyFrenchFilmFestival)長編19番勝負 10/19〜

おもしろすぎる!
ハンサムで精力的な元プロテニス選手・レオンと出会い系に夢中の非モテ童貞・ブリュノの対照的な兄弟が、母違いの妹を名乗る女性クロエとともに、家庭を顧みずモテ道を突き進んだ父・アルトゥール失踪の謎を追う、ポール・オースター『シティ・オブ・グラス』やジェフ・ニコルソン『装飾庭園殺人事件』、あるいは佐藤友哉『クリスマス・テロル』のような、探偵小説の形式を借りたポストモダン文学の系統に属する

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『旅芸人と怪物たち』 〜フランス映画(MyFrenchFilmFestival)長編19番勝負 11/19〜

旅芸人と怪物たちと聞いて、例えばフェリーニの名作『道』や、はたまたホドロフスキーの最も美しい作品『サンタ・サングレ 聖なる血』といった世間から見放されたフリークスたちが大活躍する映画を思い浮かべたあなた、全然違います、旅芸人、といってもこちらはサーカスではなく劇団で、原題の『Les Ogres』はたしかに“怪物たち”という意味ですが、物象的なそれを指すのではなく、心の中の怪物、人間のエゴを表してい

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『リトル・ライオン〜明日へのゴール〜』 〜フランス映画(MyFrenchFilmFestival)長編19番勝負 12/19〜

セネガルの小さな村に祖母と暮らすミトリはサッカーに夢中の15才の少年、念願叶って一流リーグを多数有する本場フランスからスカウトの声がかかるも、チームの入団試験を受けるには多額の費用がかかるという、祖母は村中から借金して金を工面するが····大方の予想通り、スカウトの話は真っ赤な嘘!当局の保護を受けつつ、ミトリは身寄りのないパリでプレイ継続の道を探す。
アフリカ諸国に対するフランスの搾取は、きっとこ

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『森に生きる少年〜カラスの日〜』 〜フランス映画(MyFrenchFilmFestival)長編19番勝負 13/19〜

パリと京都の街並みは似てるなんてえ俗説がありますが、フランスと日本の文化にある種の相関性が見られるのは事実のようで、本作も火に炙られた獣の肉が巨神兵のようにどろりと溶け出したり、『千と千尋の神隠し』の湯婆婆みたいなキャラが登場したり、さらには自然世界を霊的エネルギーの生成場所と捉えて丹念に描写するなど、にわかにジブリめいた作風なのですが(とはいえ、日本⇔フランスアニメーションの影響関係を大きく見た

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『ディアーヌならできる』 〜フランス映画(MyFrenchFilmFestival)長編19番勝負 14/19〜

友達のゲイカップルのために代理出産をプレゼントすることにした猪突猛進型パリピ女ディアーヌは祖母の家を改修する目的で呼んだ工事人ファブリツィオとうっかり恋に落ちてしまう、あっちゃ〜よりによってなんで今なわけぇ〜もうあたしったらドシドジぃ!だけど思いは止められない、しょーがない、ピンチの時はなりゆきまかせよ!かくして体内にがっつり異性恋愛をインストールされた“普通”男性ファブリツィオの眼前に、自分たち

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