読書感想文 その1
トンガの火山噴火による影響が懸念され、日本でも日向灘の地震が発生しました。疫病・災害・気候変動など世界的に不安なことが続いてますが、動揺することなく平穏な生活を心がけている、NPO法人わがことの山地武です
プライベートではあまり外出せずに読書時間を過ごすようにしており、コロナ前からお家時間の長い生活でした。ですので、世間がいうほど我慢の生活をおくっている意識はなく、この状況を淡々と受け容れています。今回は私が感銘を受けた「ローマ人の物語」という本を紹介します。
ローマといえば「ローマの休日」を思い浮かべる人多いと思いますが、紀元前8世紀ごろにイタリア半島中部で建国され、西暦568年に滅亡(諸説あり)した古代ローマ帝国が描かれた小説です。
単に歴史の出来事を羅列するのではなく、歴史に登場する人物や当時の国家の関係性の中で、作者の塩野七生さんの鋭い視点で、なぜそうなったのか、どうしてそうなるのかを考え、理解しながら読みすすめることができ、私の歴史観に大きな影響を受けました。
つい先日、イスラエル中部カイザリア沖の海底で難破船が見つかり、中から古代ローマ帝国時代の金の指輪が発見されたニュースがありましたが、当時の古代ローマの都市の遺跡や遺物からその繁栄ぶりがうかがわれます。
特に紀元96年から紀元180年の約100年間は、パクス・ロマーナ(ローマの平和)と呼ばれる全盛期で、ヨーロッパ全域からアフリカ北部まで地中海を囲む広大な大帝国でした。
建国当初はイタリア半島の一地域を領土とする王政国家でしたが、その後、市民から選出された元老院が統治する寡頭共和制に移行しました。しかし度重なる他地域からの侵攻を防ぐため、軍が強大な権力をもつようになり、紀元前27年から軍の指揮官である皇帝による帝政へと変わっていきます。
帝国というと皇帝が独裁者のように酒池肉林も思いのまま・・・というイメージもありますが、実は広大な領土を統治する責務を果たすための激務をこなし、もしも反感をかうと殺されるかもしれない存在だったようです。まさにパワーバランスが生死を分けるという、現代以上にシビアな世界です。
そんな凄まじいプレッシャーを負いながらも、数々の偉大な皇帝が現れました。その中でも有名なのがユリウス・カエサル。正確には皇帝になる前に暗殺されましたが(シェークスピアの「ジュリアス・シーザー」で「ブルータス、お前もか!」って言うやつです)。
彼の言葉で私が影響された名言があります。
これめっちゃ刺さります。
サラリーマンとして働いていたときに、会社の打ち合わせでお客さんの考えや今後の見通しを、いつも自分たちの都合のいい方向にだけ考えて、議論をすすめてしまい、後になってお客さんの意向とまったく違っていてすべてひっくり返されてしまう・・・誰もが仕事や組織で経験したことがあるのではないでしょうか。
まさに「見たいと欲する現実」が真実だと思い込んでしまう集団心理で、みんなが確証バイアスに陥ってしまい、そんな時に反対意見や悲観的な意見を言っても聞く耳をもってもらえません。
そこで会社に限らず何らかの集団や組織で議論する際に、私がいつも心がけていることがあります。
① 認知バイアスに陥っている人を否定しない
② 自分たちに都合のいいことも悪いことも考えておく
③ イイ加減ではなく、良い加減で状況を受け容れる
反対意見や正しいと思うことを主張するのは簡単ですが、それにより集団に軋轢が生まれてしまうと、その後に問題が発生したときに、協力して取り組みづらくなります。
といって、自分の意見にだけこだわってしまうと、これまた確証バイアスにとらわれてしまいます。この複数の考えをありのままに受け容れつつ良い加減でバランスを保ちながら物事に取り組むようにしています。
いまコロナ禍の中で、社会制限やワクチン接種などについて、様々な意見がSNSなどで発信されたり、テレビなどのマスメディアも世論を騒がせています。どの意見や主張も本人にとっての信条であり、それが個々人の真実です。ただ「見たいと欲する現実」にとらわれて、他人を否定したり攻撃することは正義ではなく、自分がよければいいという独善だと思うのです。
また人類が歩んできた何千年という歴史という視点でみれば、私たちの思いや行動は、数百年後の人たちにどのように評価されるでしょうか。「あの時代の人間の愚かな行動により・・・」と思われないような時代を築いているでしょうか。
作者の塩野七生さんが対談で語った言葉があります。
正義をただ主張するのではなく、他者も自分も受け入れて現実の環境をより良く変えていける可能性に挑戦していくこと、その重要性を人類の長い歴史の観点から学ばせてくれた「ローマ人の物語」。単行本だと全15巻、文庫本だと全43巻ありますので、皆さんも興味があれば時間をかけてたっぷり味わっていただければと思います。
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