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西武中村の考察

 私がプロ野球を見始めた時、中村剛也は4番だった。10年以上経った今、中村は時折4番で試合に出ている。今年で41歳になる西武中村は、同期の栗山巧と共にチームの最前線で戦っている。若手が情けないからと言えばそれまでなのだが、やはり41歳という大ベテランなのに、パワーはまだまだ衰えていないし、打席での怖さが若手選手より遥かにある。全盛期からあからさまに衰えているのに、戦力になっている。

 ホームラン王6回、打点王4回を誇る中村。その通算は478本塁打1356打点と超一流の中の超一流の選手でないとたどり着かない次元の数字である。また、22回の満塁弾と2066個の三振という日本記録もある。中村は自他共に認めるパワーでホームランも打点も稼ぎ、西武の顔となりチームを引っ張ってきた。

 しかし、中村は怪我も多く近年は満足にパフォーマンスが出せなくなったシーズンも伺えてしまう。いつ、引退してもおかしくはなかった。特に、最近西武ファンになった人や野球を見始めた人は中村について「大ベテランなのにまだ、ホームラン打てる人」と思うかもしれない。しかし、ホームランだけだろうか。それ以外の理由もあるから、派手な成績を残し、今でも現役を続けられていると思う。

 中村にはパワーに隠れてしまっているけど打撃技術と野球脳が高いのだと思う。

 その2つの高さは2011年と2019年のシーズンによく表れていると思う。

  2011年以前は私もパワーだけでホームランを打っていると思っていた。それまでにもホームラン王は獲得していた。そして、2011年と言えば、統一球になりボールが飛ばなくなった年である。誰もが思っている以上にホームランが出なかった。各球団のパワーヒッターはこの統一球に苦しめられ、本数を伸ばすことが出来なかった。自前のパワーだけでは解決できない球だった。バットの重さを変える人、タイミングを変える人、二塁打を狙う人そうでもしないと長打だけではなく打率も残せなかった。2011年シーズン本塁打が30発超えたのは2人だけ。一人は31発のヤクルトバレンティン。もう一人は

 埼玉西武ライオンズ中村剛也なのであった。中村は最初は試行錯誤したらしい。しかし、ある日死球で手を痛めて、その次の打席でホームランを打った。どうやら、この試合で統一球に対する感覚と対応の仕方を習得したという。本人は長く押し込むと言っていたが、なんと表現すればいいか分からないと言っていた。結局、シーズンの最後の方は何も変えていないと言っていた。

 何も変えていないということは、言い換えると元々素晴らしい技術の持ち主で、その技術でホームランを量産していたことになる。2時間で野球をやめた素人の私にはその技術は分からないが、統一球でもいつも通りの成績を残し、今でもホームラン打てるのは打撃技術だと思う。そのシーズンは48発と両リーグダントツの記録を残し、ロッテのチーム本数より多かった。今みたいにホームランテラスはどの球場もなかった。それで統一球で48発はもっと評価されてもいいと思う。ホームランテラスなかったら50発越えは余裕だっただろう。貴重なシーンを見れていた私は嬉しく思う。

 2019年は前年の前半戦は絶不調で、後半戦で勢いを取り戻してシーズンがスタートした。この時、中村は36歳。若い時のような成績は残しずらくなっているし、体も衰えていると思う。中村は自分でも分かっていたのだろうか。逆方向にヒットを打つスタイルに変えたのだ。今までは思いっきり引っ張るような打撃だったのに、ベテランになって今の体を自覚し、打率を残していくようになった。恐らく、他の選手なら自分のスタイルを貫き通すかもしれない。超一流である中村はスタイルより結果を出す方を優先した。長くやるために考えた結果で、こういうことも野球脳があるにつながると思う。

 その結果、キャリアハイの打率を残し、打点王まで獲得した。安打を優先して、若い時よりもチャンスでヒットを打った印象だった。打率のことしか書いていないが、ホームランも30発撃っている。MVPかとおもったが、森にとられた。

 ネットでよく「引退」とか「若手に譲れ」などという言葉を見かける。今、中村と栗山が引退したらどうなるだろう。厳しい野球界で結果を残し続けた二人の野球の全てを若手に受け継がれることはないだろう。益々弱体化する。松中氏や鈴木健氏も言っていたが、若手には2人をみて学んでほしい。里崎氏もプロの試合ではないと言っていた。今の西武ファンは、スキャンダルだらけの長年結果を出していない情けない若手の野球を見たいのだろうか。応援するのは自由であるが。

 2人は西武の中で数少ないプロの選手。それもスキャンダルも起こしたことない、野球をずっとやってきた選手。衰えているとはいえ、なぜ若手より頑張っている選手に文句言えるのだろうか。いつまでも2人に頼ろうとしている若手に言うべきではないのか。中村と栗山がいなくなったら、チケットの価値は0円に等しい。ネットで輝いている人も冷静に考えてもらいたい。

 私は一世代前の西武の試合をみることができて、嬉しく思う。まだまだ2人には野球もしてもらいたい。

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