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工芸品に “導かれ” てみては?

皆さんは、「はさみの使い方」を考えたことはあるだろうか?

二つの穴に指を入れて、紙を切る。
誰に教わらなくても、自然と使いこなせる。しかし、この“自然と“を科学するとちょっと面白い。

認知科学者のD.A.ノーマンは、こう話す。

「はさみのデザインは、シグニファイア、アフォーダンス、制約などが有効に機能している」


つまり、紙を切るという目的を達成する為に、認知しやすいデザインであると同時に、そのデザインが、人間が余計な動きをしないように制限してくれているというのである。そうであるならば、人間は道具などの物を操る一方で、道具に動きを制限されている。言い換えると導かれているとも言える。


我が国日本には、今もなお使われる、百年、千年も前の先人たちの生活を支えてきた道具、日用品があるのをご存じだろうか。
私たちはそれを伝統工芸品と呼んでいる。当時も今も自然素材を用い、普段使いが出来るよう人の手で丁寧に形作られている。今でこそ伝統というが、その時代時代を生きた人たちからすれば、単なる日用品である。民衆は実用性を追求し、職人に要求を投げかける。職人は試行錯誤を重ね、世の中の声に応えていく。つまり伝統工芸品の形は、人に使われるための形であり、使われてこそ価値がある。元々、鑑質するための形でもデザインでもないということだ。

私たちは、その形に対して、誠実に応えられているだろうか?
今一度、お箸の持ち方、茶碗の持ち方を見直す機会にしたい。

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