私の人生を変えた一枚
どん底の中で、一枚の写真と出会う
全てがうまく回らない時ってある。
わたしの場合は、24歳の頃がそう。
結婚しようと同棲していた彼が、仕事で東京に行くことが決まり、一緒に東京に来ないかと誘われた
当時、雑貨屋の店長をしていた私は、
仕事がうまくいってなかったので、店を立て直して、自分なりに今の状況を乗り越えてから行きたいと、ひとまず東京に行く話は断った。
そして遠距離恋愛が始まるも、気持ちにどんどん距離ができ半年で振られる。
仕事はさらにうまくいかなくなっていて、
親友には、結構な額のお金を貸してた事で揉めて、縁が切れた
(金の切れ目は縁の切れ目。。全くその通りだった)
仕事、恋愛、友情
全てがいっぺんに崩壊した。
初めて経験した人生のどん底。
仕事には辛うじて行っていたが、
家では真っ暗な部屋に横たわり、ただ静かに
海底で力を抜いて浮いてくるのをただひたすら待っているような状態だった。
どん底から少し浮きはじめた頃、立ち寄った本屋の雑誌コーナーの前で、
その美しい表紙に目を奪われた
装苑2002年3月号
この写真をこの時目にしていなければ、
私は間違いなく今ここにいない。
とにかく、ただ美しいものが作りたい
雑貨屋を店長として任されていた私は、社長といつもぶつかっていた。とにかく売り上げを上げようとする社長(当たり前なんだけど。。)
店に多少合わなくても、売り上げになるからと好みじゃない商品を仕入れてくる。
店はどんどん私が好きだった当初の雰囲気を壊しつつあった。
本当にいいもの、自分が好きなものを扱いたい私。同期で一番雑貨の好みがあって話があってた同僚と、いつも社長のやり方を批判していたんだけど、彼女は私より大人で、いつの間にか彼女は社長と男女の仲になっていた。
私が商品企画で考えてたアイデアを、ぽろっと話したら、彼女のアイデアとして採用されていたりして、
裏切られた気持ちと、売り上げの為に何でも卒なくできてしまう大人な姿に、勝手にとても傷ついていた。
彼らを悪者のように思っている訳ではない、
彼らは割り切れていて、
私が好きなものと仕事を
割り切れなかっただけの話。
その頃に見た、サニーデイサービスのビデオ(DVDではない!)で
「とにかく、ただ美しいものが作りたい」と静かに語った曽我部恵一の言葉と、彼の作った美しい音楽に、心が救われる
自分を癒すためにただ静かに、私も呪文のように日々その言葉を唱えていた。
「ただ美しいものが作りたい」
海底にいるような、あんなに静かであんなに独りな時間、あとにも先にもない。
海底からの浮上
毎日つぶやいていたその呪文と、装苑の写真の世界観がバチっとはまった
ファッションってこんな美しい表現ができるの!!??あまりの美しさに衝撃を受けた
魂が震えるとはこういう事か!?
この美しさに、心底救われた。
そして海底から、ふわ~っと浮上するのがわかった。
ようやく前向きになれた私は、
古着が好きだったし、とにかく古着屋でも初めてみようか?それならミシンが使えたほうがいいよね?と、ミシンを習いに行ってみる。
そこで出会った男の子に、俺が服作って個展やるから、お前アクセサリー作ってと誘いを受ける。
え?私なにも作ったことないけど、何で私?と、戸惑いながらも引き受けてみる。
そして、作ってみたら、自分の手から見たことないものが出てくることに、自分自身が一番驚く
私が作ってるんだけど、私が作ってるのではないような不思議な感覚。。
それまで、家系にモノを作ってる人がいないし、
自分はものを作るタイプの人間じゃないと思い込んで生きてきたので(だから高校卒業の時に、気にはなったけど服飾の専門学校にも行かなかった)、人生どうなるか本当にわからない。
技術もないので、買ってきたパーツを組合せて自分が思う造形を作るんだけど、これで果たして自分で作ってるって言えるのかな?と疑問に思いはじめ、買ってきたパーツや、ビーズをヤスリで削り始める。
ん?これってもしかして彫金っていうやつじゃない??
友だちに、彫金やってる人知らない?と聞いてみたら、ウチのお兄ちゃんやってるでーと言われ、早速友だちのお兄ちゃんに会いに行く。そしてその方に、信じられないほどお世話になることになる。
高卒で専門学校にも行ってない私は、専門学校に通った人たちは、むちゃくちゃすごいんだろう!私にない才能がたくさんあるんだろう!と、それがコンプレックスでもあり、独学で勉強を始める。
ファッションやジュエリーの歴史、技法、そしてとにかくいろんなものを見に行った。
大きな問いをもらう
そんな勉強に明け暮れるある日、
雨上がりの夕暮れ時に犬の散歩をしていた私は、葉っぱに溜まった雫に衝撃を受ける
キラキラと光を受けて多面的に輝く。その美しさに腰を抜かした
こんなに美しいものがすでに存在しているのに、
一体今から人間が何を生み出そうというのだ!?
という大きな問いを投げかけられる
本当こんなにモノが溢れる時代
今からさらに作るなんて。。
意味のあるものを作らなきゃいけない。。。
今思い返してみても、はじめて作ってみたものから、とても未熟ではあるけれど、何か物語が含まれていた。
あの写真と、この一滴の雫からもらった衝撃が
私のモノ作りの入口
土台になっているように思う
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