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おうちフリースクール運営教師のヤドカリ物語②築古マンション教室を引き払うの巻

わたなべさやこのおうちフリースクール運営の道のりを、”ハコ”の変遷を軸に記録したマガジンです。小さなマンションの1室から始まったおうちフリースクールのナリワイは、まるでヤドカリが成長に合わせて新たな棲家を探し求めるように変遷していきます。
これからおうちフリースクールを始めたい方はもちろん、ご自宅で教室を開いてみたい方、学校教員からの転職の道を模索されている方など、多くの皆さんにお読み頂けたら幸いです。

▼前回までのお話

前回の記事では、初代おうちフリースクールとなった築古2LDKマンションでの教室運営についてお話をしました。そうだ、ここで折角なので教室スペースについての考察も載せておきましょう。


▼たった10帖の教室で狭くないのか問題

私がおうちフリースクールを最初に始めたマンション時代。教室はLDK全体で10帖程度。生徒さん達が主に学習に使用するテーブルやソファがあるスペースだけで見ると6帖というミニマムさ。

ちょっと狭くないか?とさすがに私も心配になったので、中学生の学習にはどれくらいのスペースが必要なのか、これまた独自の考察をしてみました。

詳しくは↓の記事をご覧ください。

※記事より引用 ー 判明した意外な事実。”生徒さん自身は空間が狭いとは感じていない”ということ。「今まで狭くて本当にごめんね~」と私がいうと、「え?そう?」という顔をするんです。多少は気を遣ってくれていたのかもしれませんが、日頃私から助言を求められた時には割とストレートに返答してくれる子達なので、スペースについても、多分本当にそれほどには気になっていなかったのだと思います。
ー生徒さん達が私の教室をそれほど狭いと感じていなかった理由について考えてみたのですが、確かに学校の教室と比較すると、私の教室のほうが広いのではないかという仮説にたどり着きました。6帖間のほうが学校の教室より広い?そんなわけないでしょう。と思われますよね。いえいえ、実は6帖間のほうが広いんです。”密度”に注目すると、この謎が解けます。一般的な公立中学校の学級教室の面積はおよそ65平方メートル程度。ここに40人の生徒が入ると、単純計算で一人当たりの面積が1.6平方メートルとなります。加えて、学校の教室には生徒人数分の学習机の他、教卓~教員の事務机まで帯状に伸びる、いわゆる”先生スペース”、ロッカー、掃除用具入れ、体育着袋掛けなどなどが必じょう=11平方メートルを4人の生徒で共有すると、一人当たりの面積は2.75平方メートルです。そういうわけで、学校の教室の人口密度に慣れてきた生徒さんたちにとっては私のスクールの狭さがそこまで気にならなかったのかなと考えています。

「わたしの教室広い、十分!」というよりは、「学校の教室ってこんなに窮屈だったんだ…」と別の意味で驚愕する結果になりました…。はい、スペースのお話は一旦ここまで。

▼2020.3マンションからの移転を決める

気に入っていたこのマンションフリースクールでしたが、結果としてわずか1年で引き払ってしまいました。マンションだから騒音トラブルがあった?いいえ、うちは学習活動中心のフリースクールだったせいでしょうか、ご近所さんからの騒音クレームはありがたいことに入居中1度ももらったことがありませんでした。両隣の奥さん達はお二人とも母親より上の年代の方で、廊下で会うとしばらく立話するほど仲良くしてもらっていましたが、「何かお教室でもやっているの?」という質問すらされたことがなかったですね。年に4回くらいお楽しみパーティーもしていたし、上尾市教育委員会の先生方にお越し頂いての研修会なんかもしていたんですけれど。

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トラブルもなく平和に教室運営ができたのも、ひとえにマナーある生徒さんの協力のおかげだと思っています。でぃありすっ子みんなホントにいい子達。

だったらどうしてお気に入りのマンションをたった1年で引き払ってしまったのか。

答 え は た だ 一 つ 。

す べ て は ↓↓↓ の せ い だ っ た 。

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おまえや!ポターテン!!(変な名前!)

ポターテンはおうちフリースクールでぃありす上尾のカゲのシハイシ…じゃなかった、でぃありす上尾の大事な大事なスクールドッグです。

もうこれは完全に私のワガママでしかなかったのですけれど、わたしのフリースクール未来図にはどうしてもスクールドッグの存在が必要だったのです。ちょっと想像してみてください。フリースクールの扉を開けてみたら、そこにはモフモフのわんこがいるというシチュエーションを…。

↓もうちょっとマジメな動機も一応あります。ご興味のある方は下記の記事も併せてお読みください。

私のわんわん依存症の歴史は結構長く、学校教員をしていた頃から暇さえあればゴールデンレトリバーのブリーダーさんのサイトを見てニマニマする生活を続けていました。埼玉県教員を辞めてからはひときわ真剣にブリーダーHPの”子犬ちゃん誕生情報”をチェックする毎日。「生まれた!生まれた!」と喜んだ次の瞬間には「新しいおうちが決まりました」の一文に落ち込むの繰り返し。わかるよ…わかるよ、みぃんなわんこと暮らしたいよね。私も一緒だよ。
しかし2020年冬、運命の出会いはやってきた。毎度人気のブリーダーさんのサイトにまだおうちが決まっていない子がいる…!即見学予約を入れて茨城のブリーダーさんまでGO。そこで兄弟たちの中でたったひとりだけおうちが決まっていなかったのがポターテンでした。

「なんでこの子だけおうちが決まっていないんだろう?」「…このひとパピーのくせにやけに主張が強くないか…?」という不穏な違和感こそ浮かびましたが、もうそんなことは後で考えればいい。最後まで私達を待っていてくれたのはこれが運命の出会いだからだわよと即引き取り予約(そしてこの不穏な予感は事実であったことが後々判明する…)。お迎えが決まったその日からわが家の全力の新教室探しが始まりました。

↓ポターテン関連記事はこちら

▼なんとなく異質なもの、得体の知れないものとの共存は大事だと思う

全国の小学校から”うさぎ小屋”がポツポツと姿を消し始めたのはいつの時代からでしょうか。私は小学生の頃、あの不思議な空間に身を置くと神社仏閣に足を踏み入れたときと類似の緊張感に満たされていく感覚を覚えたものです。あぁ、今私はこの空間にお邪魔させてもらっているんだなぁと。この空間で異質であるのは私のほうだという少しの高揚感と緊張感。それは神とか動物とか、いわゆる”自然”に対する畏怖みたいなものに近かったのかもしれません。こういう話をするときに、私の脳裏にはとなりのトトロのメイちゃんの姿が浮かびます。まっくらな屋根裏とかお稲荷さんとか森の抜け穴とかトウモロコシを狙う得体の知れないヤギなんかと対峙するときに、メイちゃんは決まっておててにコブシ作ってギュっと握って、鼻の穴を膨らます。そうして緊張を高めている。あの感覚って私、自分の経験としてすごくわかるんですよね。うさぎ小屋はちょっぴり恐ろしく、また”畏ろしい”場所でした。ふわふわしてて4足歩行(跳行?)でかわいいんだけど、こっちの言うことなんて全然聞かないしたまにワケわからんタイミングですごく怒る。怒ると鳴くんですよウサギは。ブーって鳴く。今じゃないだろって時にうんちしたりおしっこまき散らしたり、何よりにおう。意味不明です。でも、この意味不明な生物たちとの共存の時間って、すごく愛おしいものだったなと今では思う。何が楽しくてこんなよくわからないものの世話してるんだって思うのですが、先生に「世話がなってない」とか「今日は上手に掃除ができたね」とか言われて、なんとなく愛着がわいてきて。今の子ども達は基本2本の脚で歩いて、言葉を使いこなして、無駄な試行錯誤なんてしなくても何となく意思疎通ができてしまう自分と同型の生物としか時間を共有するチャンスがない。何を主張したいのか永遠にワンワン吠えてくる近所のうるさいイヌとか、文句ありげにこっちをにらみつけてくる通学路のネコとか、あぁいう意味不明でちょっと不気味な存在との接触って、今思えば私の成長に実は良い影響をもたらしていたんじゃないかなと。

もうちょっと遡ること保育園時代。私が預けられていた保育園にも、やはり動物がたくさんいました。カメ、ウサギ、モルモット、ニワトリ、そしてクジャク。そう、クジャク…!で、この保育園の何がすごいかというと、”ヤツら”は園内どこでもワガモノ顔で闊歩しているのです。ケージになんか入っていない。いや一応ケージはあるんだけど、しばしば脱走するので(先生達もそれを真剣には阻止する気が無いので)気づいたら園児と一緒に遊びに参加しているのです、当然のような顔をして。鬼ごっこをしていると、鬼の子に追いかけられるでしょう?キャーキャー言って逃げ回っていると、いつの間にか私は鬼の園児ではなくニワトリに追いかけられているのです。やがて鬼ごっこは崩壊して、ニンゲンの子どもがニワトリに本気で追いかけられるという恐ろしい遊びに変わっている。もう怖くて怖くて最後は泣きながら走っている子もいます。私は転んで鼻血を出しました。こんな感じで、プール遊びをしていればいつの間にかカルガモが一緒に泳いでいるし、ひなたぼっこ中にクジャクが傍らで添い寝を始めるし、ボケっと歩いていればもはや誰が落としたかも不明なうんちを踏んずけてしまうから、自然と注意深く歩く癖がつく。親たちはみんなここの先生たちのことが大好きで信頼していたから、「うちの子が怪我したじゃない!」なんて文句言う人もいなかった(はず)。膝をすりむいていればその経緯を大人同士で「今日こんなことがあってね、でもさやちゃん泣かなかったよね~」なんて共有しあって、親のほうも「へ~えらいじゃーん!」って褒めてくれて終わり。

大らかな時代だったから許された光景だし、こういう教育の場が今の親世代に受け入れられるかはわからないけれど。楽しかったことも試練もひっくるめて、動物とのふれあいが私の子ども時代を豊かなものにしてくれたことは確かです。おかげ様で私は幼少期のかなり早い時期から「動物=かわいい大好き」という甘い幻想を捨て、動物や自然に対して大いなる畏敬の念を頂くようになりました。

フリースクールにわんわんがいることで生徒の皆さんが何を感じてくれているかはわかりませんが、ただ一つわかった事は、あのフワフワの毛に触れたり遠慮のないかまって攻撃を受けたりするとき、生徒さんは今まで見せなかった表情を見せます。ある種の安全地帯から外れて、「得体のしれないもの、道理の通じないもの」と触れ合うスイッチみたいなものが入るのは確かです。

…とはいえ、もうちょっと訓練とトレーニングが必要ですね、うちのイヌは(笑)セラピードッグと呼ぶには程遠いブシツケさです…。


▼わずか2か月の間に移転先を探す

イヌ語りが長くなりましたが、さぁここからが大変です。わんわんを迎えることを決めたはいいものの、当時契約していたマンションは当然ペット禁止。ここから怒涛の新教室探しが始まりました。ただ、タイミングとしてはとても良かったのです。概ね満足していたとはいえ、騒音には常に細心の注意を払って過ごす必要があったマンションフリースクール。わんわんを迎えることを好機として、さらに生徒さん達がもっとのびのびと過ごせる戸建てを探そうと短期集中戦に臨みました。

いや~しかし条件が厳しい。

✔フリスク運営可

✔ペット可

✔即入居可

✔もとのスクールから徒歩圏内(生徒さんの来室に負担をかけないため)

そんな都合のいい物件あるかーい(笑)こんなの1か月そこらで見つかるわけがない。あくる日もあくる日もSUUMOとにらめっこ。ペット可の物件はまぁまぁあるのですが、担当の方に犬種を訪ねられ「ゴ、ゴールデンレトリバーです…」と答えた瞬間検討は振り出しに戻るの繰り返し。

▼近所の空き家に目をつける

諦めムードが漂い始めたある日、転機は訪れました。いつも利用しているスーパーへの道中に気になる張り紙を発見。わお、民家の窓に「空き家」って書いてある!私はすぐにそのポスター上にある不動産屋さんの電話番号に発信しました。

(…つづく)

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【この記事を書いた人】

※画像はみんなフォトギャラリーよりmono_g_usaさんの作品をお借りしました。


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