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ホラーとの出会い~ドラマや小説、映画など

 夏といえばホラーです。小説も映画も漫画もホラー。
 今ではホラーというジャンルは珍しくなくなって、「怖い」という定義の曖昧さもあって本当に怖いものが減ったような気がします。単にわたしが歳をとって恐怖への耐性がついたせいかもしれませんが。
 今回はわたしのホラーとの出会いを書きます。

 初めての出会いは「四谷怪談」です。
 なんといっても「四谷怪談!
 これまでの人生で一番怖い話は何?と聞かれたら、迷うことなく「四谷怪談」を挙げるくらいです。子供時代のトラウマになるほどです。
 今は古い日本の怪談をテレビで放送するのは珍しくなっていますが、わたしが子供の頃、一九七〇年代前半あたりは、夏になると必ずテレビで怪談特集をやっていて「四谷怪談」「牡丹灯籠」「番町皿屋敷」などは毎回放送されておりました。
 日本の古い怪談には怖さのエッセンスが詰め込まれています。
 刀、井戸、蝋燭、障子、着物、黒髪等々。特に井戸は、今もホラーの道具としてよく使われますね。貞子も井戸から出てきました。井戸は落ちたら死ぬ、たとえ生きていても二度と出られないという生き埋めに似た恐怖がありますから、小道具として置いておくだけで怖い。そこに夜障子越しに蝋燭がゆらゆら揺れて黒い影が映っていればそれだけで怖いです。必殺仕置人の演出によく出てきますけれども。
 次に耳なし芳一。小泉八雲の怪談が有名ですが、これも頻繁にテレビで放映されていました。やはり舞台は江戸時代。古い伝承の怪談は怖い物が多いです。芥川龍之介が学生時代から怪異談をたくさん集めていたのも不思議はありません。この件についてはまた「研究」のほうで。
  
 本格的に小説でホラーに触れたのは、創元推理文庫から出ていた「怪奇小説傑作集」です。

二巻どこへいった?

 今出ている新訳版は中身が変わっているかもしれませんが、少なくともブラックウッドやジェイコブズ(「猿の手」はあまりにも有名)など古典的な西洋の怪奇小説は収録されているはずで、ホラーの原点を知るなら必読だと思います。特に三巻はわたしのお気に入りで、文豪ディケンズの「信号手」が好きです。また芥川の話をしますが、彼の「二つの手紙」のような短編は、こういうジャンルに属するはず(実際、芥川の怪談集が文庫で発売されていますね)。また三巻にはEAポーの後、このジャンルの最重要人物ラヴクラフトの作品も収録されています。
 そしてやはり怪奇小説の筆頭はEAポオです。わたしはポオが大好きですが、彼の推理ものには余り興味はありません。好きなのは怪奇幻想ものと詩です。中でも「赤き死の仮面」「黒猫」「落とし穴と振り子」「早すぎた埋葬」あたりが好みです。
 
 次は漫画ですが、圧倒的に楳図かずおです。中でも「おろち」は別格で、次に「洗礼」です。彼の漫画の怖さは、人間の心理の美醜を描くところにあります。最近はグロい演出が当たり前になっていますが、楳図かずおはそういう演出に頼らず、ストーリーでじわじわ読者を追い詰めていくところが好きです。

 次に映画ですが、まず「悪魔のいけにえ」です。
 一九七四年版のトビー・フーパー監督によるいわゆる大量殺人ものの走りみたいなものですが、当時はまだCGなどがないのでグロい演出は控えめです。しかし怖い。
 これはすべてのホラーに共通するのですが、田舎にいくほど怖さが際立ちます。なぜなら都会では普通家に無いような斧だったり大きなナイフだったりが何気なく置いてあるからです。最初に述べた井戸もそうですね。都会にはないですが、田舎にはあるでしょう。「悪魔のいけにえ」の舞台は、NYの摩天楼ではなく、テキサスのド田舎です。だから怖いのです。
 別の意味で、イーライロスの「ホステル」という映画も怖い。スプラッタに近いかもしれないし前半がだるすぎるから評判はよろしくないが、実際に行方不明者が多い東欧が舞台なのでリアリティがあるところが好きです。
 そしてやはり「エイリアン」ですね。これは怖かった。逃げ場のない密室で正体不明の怪物に襲われる恐怖。これより前に作成された「遊星よりの物体X」が本家なのですが、先に「エイリアン」を見て、次にリメイクされたカーペンターの「遊星からの物体X」を観ましたので、わたしの経験的には「エイリアン」が最初になります。「エイリアンロルムス」が楽しみですね。

 最近もホラー小説や映画は観ます。それほど数を読んでいませんが、小林泰三の「玩具修理者」「人獣細工」、恒川光太郎の「夜市」は気に入っていますが、怖いというよりは、鋭いオチに思わず唸るという感じです。貴志祐介の「天使の囀り」もなかなかですが「黒い家」のほうが怖かったかも。怪物や幽霊よりも人間が怖い方が怖いんですよね。蛇足ですが、貴志祐介さんの「新世界より」を数年前に読みましたがなぜSF大賞を受賞したのかわからないくらい普通でした。作家さんとの相性が悪いのかもしれません。

 角川ホラーはチェックしているつもりですが、お勧めのホラー小説があれば、和洋問わず教えてくださいませ。あ、スティーブンキングはあわないのでそれ以外で(笑)。

以上、ホラーについてでした。

 


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