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5月の総括~読んだ本と買った本

5月は芥川研究を開始したこともあり、その関連の本ばかり買ったり読んだりしていた気がしますが、それ以外に読んだ本はだいたいこんな感じです(芥川研究関連とコミックを除きます)。




レター教室 三島由紀夫

5人登場人物の手紙だけで構成される異色の作品です。筆者が最初に5人のおおよその素性を紹介し、借金の申し込みやプロポーズ、他人の恋愛を阻止する悪巧みその他、さまざまな手紙のやりとりがなされます。確かに昭和のこの時代、メールも携帯電話もありませんので、実際に会う以外の連絡手段は電話か手紙しかないので、貴重な手紙文化が描かれるのはわかるのですが、ここまで手紙に書くだろうか?と疑問がわいてきます。借金の申し込みもそうですが、横恋慕や悪巧みの計画や、あるいはその意に沿わなかった相手に対する怒り・罵倒の手紙など、果たして手紙に書くものでしょうか。わたしは、本来なら電話あるいは対面でやりとりするところを仮に手紙に書いたとしたらこうなる、という見本を筆者が示したと解釈します。つまり、本来なら手紙ではなく、普通の小説形式で進める話を手紙だけにするとこうなる、その実験結果が「レター教室」だと思います。もちろん実際に、手紙を書くうえで役立つテクニックも満載ですけどね。とにかく興味深い一作でした。

三島由紀夫はとにかく多作で、「金閣寺」のように格調高い純文学もあれば、ライトノベルのような読みやすくとっつきやすい作品も多数あります(「夏子の冒険」「お嬢さん」など)。わたしは次に「命売ります」を読む予定。みなさんもぜひ三島文学に触れてみてください。

Unnamed Memory

ライトノベルです。3巻まで読んだところで一度記事にしました。

王と魔女の物語は3巻でハッピーエンドで終わるかに見えますが、ちょっとした仕掛けがあって悲しいかな、ゼロクリアされます。そして4巻から6巻まで、登場人斑は大きく変わらないものの、違う展開で新たに王と魔女(性格には魔法士)の物語が語られます。この2つの物語は表と裏になっており、両方読まないと伏線が回収されません。どちらの物語も面白く、基本的にはラブストーリーですが剣と魔法のファンタジーラノベなのでさくっと読めると思います。個人的におすすめのラノベです。
ちなみに6巻で完結した後、続編も刊行されていますが、個人的にはもういいやという感じです。きれいに物語は終わってますからね。

殺人鬼にまつわる備忘録 小林泰三

前向性健忘症の主人公(30分か1時間程度しか記憶を保っていられず、それが過ぎるとその間の記憶をなくしてしまう)が、殺人鬼と対決する話で非情によくできています。殺人鬼は、触るだけで相手の記憶を塗り替える超能力を有しており、手当たり次第に人を殺したり女性を暴行したり極悪人ですが、記憶をなくしてしまう主人公はいわば天敵です。なぜなら記憶を塗り替えても忘れてしまうからです。しかし、主人公はなにせ短時間で忘れてしまうわけですから、誰が殺人鬼なのか、何があったのか、何をしようとしていたのか、すべてをノートに書き留めておきます。頼りはそのノートだけです。緊迫した展開が楽しめる傑作だと思います。設定的にはSFですね。
そして単に大団円で終わらないのが小林泰三。最後に出てくる女は誰なのか?そもそも序盤に主人公の家を訪ねてきた荒っぽい女は誰なのか?伏線を回収しないまま残します。色々想像させられる終わり方なんですよね。こういうのは小林作品によくあります。その不安感がまたいい。

贓物大博覧会

透明女以外、これという作品はありませんでした。透明女自体も人獣細工や玩具修理者ほどのキレはありませんので駄作の部類に入ると個人的には思います。

姫椿 浅田次郎

もう十数年前に入院したときに持っていて読んだのですが、また読みたくなって読みました。泣かせる浅田次郎全開ですが、やはり巻頭の「シエ」が好きです。何度読んでも泣けますね。浅田次郎はそれほど好きではないのですが、肩のこらないものを読みたい時(例えば入院中とか)にはぴったりです。といっても「鉄道員」「プリズンホテル」「椿山課長」あたりしか読んでませんが。「壬生義士伝」読みたいんですけどね。積読に入れとくかなあ。

以上が5月の読書録です。


以下は購入した本

ドラキュラ紀元 一九八八 キムニューマン
ブルックリン物語 ピート・ハミル
偶然の音楽 ポール・オースター
天体の回転について 小林泰三
海を見る人 小林泰三
ネフィリム 小林泰三
夏服をきた女たち アーウィン・ショー
メアリ・ジキルとマッド・サイエンティストの娘たち シオドラ・ゴス
夢の遠近法 山尾悠子
アルケミスト パウロ・コエーリョ

小林泰三多めですね。今ネフィリムとメアリジキルを読んでます。ドラキュラ紀元は、以前途中まで読んで挫折した記憶があるのでリトライです。物語的には吸血鬼モノは大好きだし、面白かったのですが、改行が少ないし、説明も多くて読みづらい本です。

他にも積読あるし、芥川研究本もあるし(泉鏡花や内田百閒なども)果たしてどこまで読めるか!来月が楽しみです笑


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