「厳かな食事」同族狩り#2~毎週ショートショートnote参加作品

真っ赤な月明かりの深夜、N町通りは野良猫すら姿見せぬほど静まり返っていた。その一角の古びた酒場で臙脂色のドレスと白いベエルで着飾った一人の少女がカウンター席で紅茶を飲んでいた。
荒っぽい音をたてて店の扉が開き、見るからに柄の悪そうな酔っ払いたちが入ってきた。
「女がいるぜ。隔週警察が非番なのによ」
下衆な笑いを浮かべた大男が言った。隔週警察とは二週間に一度しかこの界隈を監視しない警察の俗称である。治安が悪すぎて警察はこの区域を見放していた。
「嬢ちゃん、俺達と遊…」
言いかけた大男の首が血しぶきを上げて吹き飛んだ。
少女が振り返った。
「食事の時間ね」
ベエルに隠れていた真紅に輝く目が大きく見開かれ、黒い髪の毛が逆立ち、鋭い牙を剥き出して残酷な笑みを浮かべている。
悲鳴とともに骨や贓物の潰れる音がして天井と壁が真っ赤に染まる。静けさが戻った酒場の血の海にはいくつもの肉片が浮いていた。
「ごちそうさま」
そう言い残してカーミルラは店を後にした。


本作は、毎週ショートショートnote参加作品です。いつもありがとうございます。なお、「同族狩り」という副題は、いずれ改定して連作短編にしようという魂胆からです笑


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