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筒井康隆のオススメ5選

 一九七〇年代に星新一のショートショートや小松左京の『日本沈没」など日本SFの大ブームがありました。わたしは当時小中学生でしたので、初めて自分で買った文庫本が『ボッコちゃん」、カッパノベルスが「日本沈没」だったように思います。平井和正、半村良、眉村卓、光瀬龍等々、がたくさんの作家の本を読み、SFマガジンも毎月購読していました。そのキラ星のようなSF作家の一人が筒井康隆で、唯一今も読み続けている作家です。
 筒井康隆はSF作家としてデビューしましたが、最近「カーテンコール」という引退作を出すまでの間、極めて多彩なジャンルの小説を書いています。作品数が多いので、筒井康隆が好き!といっても、どの筒井康隆が好きなのか、人によって異なります。わたしも彼の小説を多く読んできましたが、とても網羅できていません。おそらく五割くらいだと思います。「虚人たち」のような大切な作品も抜けているし、人にお勧めして良いか微妙なのですが、とりあえずわたしの好みということで5冊お勧め本を紹介させて頂きます。

ライトなSF


 「家族八景」(「七瀬」シリーズの1作目)
「時をかける少女」でも良いですが、あまりに有名なので七瀬シリーズを選びました。超能力を持つ少女が主人公です。三作ありますが、どれも読みやすく面白いです。

本格SFが好きな方


「脱走と追跡のサンバ」
 これを筒井康隆の最高傑作とあげるひともいるくらいに本格SFの傑作です。わたしの場合は、筒井康隆は単なるSF作家だと思っていないので、これが最高傑作ではないですね。

純文学・実験小説


「虚構船団」
 文房具の船団がイタチ族の星に戦争をしかけるというとんでもない実験小説で賛否両論ありますが、発想が奇想天外だし、文房具たちの描写が斬新でしかもどこか愛らしいので大好きな作品です。ただ改行が少なく、極めて難解で読みづらいので読者を選びます。

エンタメSF


「パプリカ」
 アニメ化もされて、アニメもよくできています。プロットもしっかりしているし、エンタメSFはこれが一番ではないかと。

大衆小説


「大いなる助走」
 ジャンル分けが難しい作品で、ドタバタとも言えるし、風刺小説とも言えるのですが、文壇や直木賞を筒井康隆らしく茶化してぶった切るところが最高に愉快。言葉狩りに対して「残像に口紅を」を書いみたり、同調圧力には決して屈しないのが彼の良いところです。筒井康隆は作家は不謹慎でなければならないと公言していますが、まさにそういう作品。文壇や直木賞を馬鹿にしていると怒らないでくださいね(笑)。

 これで5つになってしまったのですが、枠が足りない(笑)。他にも傑作がたくさんあります。「朝のガスパール」「残像に口紅を」「ダンシングヴァニティ」「日本以外全部沈没」「霊長類南へ」「富豪刑事」「旅のラゴス」。。。きりがない。
 ただ、わたしにとって筒井康隆の一番好きな特徴は、本を読んで思わず吹き出してしまうくらいの可笑しさなんですよね。いわゆるドタバタ劇。ギャグ漫画ならいざしらず、活字を読んでいて吹き出すなんて他の作家では余りないことです。ところがこの人の小説はそういうケースが結構あるので電車の中でうっかり読めない(笑)。ですので、本当はドタバタ短篇集を紹介したいのですがたくさんありすぎて絞れないのです。
 文庫本の紹介を見て、ドタバタと書いてあれば大抵面白いです。「農協月へ行く」「笑うな」等々色々あありますので、ぜひお試しあれ。

 それではまた!



 

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