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無料で提供して利益を出す手法

今週もウェブ解析士のnoteをご覧いただきありがとうございます。
今週はお題の提供がありましたので、そちらに応えたいと思います。
提供いただいたお題は「フリーミアム」です。せっかくなので、フリーミアム以外のモデルについても触れながら書き進めていこうと思います。


無料を実現する方法

そもそも商品やサービスをどうやって無料で提供するのでしょうか?そのカラクリを内部相互補助と呼ぶそうです。簡単にいうと、商品を受け取った人の代わりに誰かが代金を負担しているということです。
例えば、フリーペーパーは、広告代によって主なコストを賄います。つまり、受取手の代わりに広告主が料金を支払っているわけですね。広告主は広告の効果によって、(広告費が上乗せされている)商品を購入してもらうことでコストを相殺し利益を出します。
ハウスメーカーの来場無料特典とか、スーパーの駐車場が無料で使えるとか、そういったものも内部相互補助が利用されていますね。どこかで利益が生じる仕組みを作っているということです。
内部相互補助を実現する方法をいくつか紹介しましょう。

有料商品でカバーする方法

最もわかりやすい方法だと思います。衣料品店などで「2着目無料!」のような売り出し文句を目にしたことはありませんか?これが有料商品でカバーする方法ですね。結果として半額になってるだけなのに、無料という言葉のインパクトの強さたるや。
他にも、入場無料にしてエリア内での飲食をしてもらうイベントなどもこの形式でしょう。

将来的に元を取る方法

典型例は携帯端末代の「実質無料」というやつですね。2年間使用してもらう代わりに、端末代はかかりません。というのはよく目にしますよね。2年間使用して貰えば月額利用料で元が取れるという目論見なのでしょうね。
男性用シェーバーなどもこれに近いですよね。本体代は低価格に設定することで顧客を囲み、替え刃で利益をとるビジネスモデルになっています。

有料利用者が無料利用者をカバーする方法

これが現在のフリーミアムの形に近いですね。ただ、マーケティング的に面白いのは「相席食堂」でしょうね。男性は有料、女性は無料というスタイルです。女性は無料で食事ができるという点に釣られて入店し、そこに集まる女性に男性は引き寄せられていくという狙いがありそうですね。
他にも、子供料金を無料にすることで、子供を連れた大人を引き寄せる飲食店や遊園地などもこれに該当するでしょう。

無料のビジネスモデル

編集者で『フリー <無料>からお金を生み出す戦略』の著者クリス・アンダーソン氏は上記したものをビジネスで活用するために4つのモデルに分類しています。

直接的内部相互補助モデル

一つかえば二つ目無料といった形で消費者を呼び込み、他の商品をクロスセルすることで利益を上げていくモデルです。商品限定型と言うこともあります。
無料ではないのですが、例としてこんなものがあります。郊外のホームセンターに併設されているガソリンスタンドって、比較的給油価格が安いんですよね。ガソリン価格で消費者を引きつけて、ついでだから買い物していこう。というふうに、別の商品で利益を上げているわけですね。

三者間市場モデル

消費者が無料で受益するために、第三者(主に広告主)がコストを負担するモデルです。GoogleやFacebookなどもこれに該当しますね。最もわかりやすい例はテレビコンテンツでしょうか。民放局の地上波は無料で見ることができる代わりに、TVCMが番組の途中で流れますね。企業はTVCMを出稿するために少なくない費用を払っています。そのおかげで私たちは無料でテレビコンテンツを消費することができています。(実際には、民放局の主たる収入源は不動産だったりするのですが…)

非貨幣経済モデル

贈与経済モデルとも言われますが、金銭が全く動かないモデルもあります。
分かりやすい例で言うと、レビューサイトやYahoo!知恵袋なんてものがありますね。投稿者や回答者はなんらかの金銭を受け取っているわけではないのに、自発的にサービスを提供してくれています。X(旧Twitter)でも有益な情報を垂れ流してくれるアカウントが存在しますね。これらは話題・注目・評判といった金銭以外のインセンティブを受け取ることで成り立っているそうです。

フリーミアムモデル

そして、今回依頼いただいたフリーミアムモデルです。
フリーミアムモデルでは無料サービスで顧客を集めて、一部のユーザーが有料会員化することで収益を得ていきます。
機能を限定するパターン(基本は無料だけど、これができたらいいのにみたいな機能は有料にするなど)やユーザーを限定するパターン(個人利用は無料だけど商用利用なら有料にするなど)があります。
化粧品などの無料サンプルはフリーミアムの前身と言われています。物理的に質量のある商品においては、製造コストや流通コストがかかるため無料サンプルは少量にせざるを得ませんでした。しかし、昨今はデジタル化が進み、デジタルサービスの普及において、複製コストは大幅に削減され、基本利用無料を実現することができています。
逆に言うと、複製コスト(限界費用)が限りなく0に近い場合に限り、フリーミアムは成功するとも言えますね。

フリーミアムの戦術

フリーミアムモデルで挑戦する際、有料と無料の境をどこにするかで悩みますよね。先に挙げたクリス・アンダーソン氏の著書の巻末に素敵な付録があったので要約してお伝えします。

フリーミアムのタイプ

時間制限タイプ
登録後〇〇日間無料などというタイプですね。すぐにでも始められると言う利点がある一方で、規定期間後は課金しなければいけないので、離脱も多く、本気でそのソフトを試そうとする顧客は意外と少ないと言うデメリットもあります。

機能制限タイプ
基本機能は無料で機能を拡張する際は有料と言うタイプです。WordPressや会計ソフトのfreeeなどはこのタイプでしょうか。多くのユーザーを獲得しやすく、課金者は納得して課金するので離脱率が低いと言う利点があります。一方でどこまで制限するのかという課題と常に向き合う必要が出てきます。あまりに機能を制限しすぎるとトライアルできず、制限が緩いと課金してもらえません。

人数制限タイプ
5人までは無料といったタイプです。グループウェアでよく見られるタイプですよね。実行しやすいと言う大きなメリットがある一方で、価格競争に陥りやすいと言うデメリットがあるそうです。

ユーザー制限タイプ
先にも挙げた個人使用は無料、商用利用は有料などといったタイプですね。企業規模によって分けることもあります。顧客の支払い能力に応じて課金することができ、将来のロイヤルカスタマー発掘にも一役買うのだとか。一方で確認プロセスが複雑になり管理コストがかかります。

無料ユーザーの価値

無料ユーザーの価値を測ることも、フリーミアムを実施する上で重要なことです。
例えば、サービスの公開直後に無料ユーザーになった人はマーケティング活動に貢献してくれます。テストユーザーであると同時に、口コミを広げてくれるアーンドメディアとしての役割も果たしてくれます。そして、有料ユーザーへの転換後もLTV(ライフタイムバリュー=顧客の生涯価値)の観点から見ても使用期間が長い分、その価値は高まります。
一方で、サービス開始後数年すると、そのサービスが市場に定着し、知名度が上がると、消費者にとってトライアルすることに対するリスクが相対的に下がります。ユーザー数も増えて、実稼働からデータを集めるのでマーケティング活動への貢献度も早期に登録したユーザーに比べて低いですね。LTVの観点からも、早期ユーザーに比べると相対的に低いことは自明ですね。

こうした複数の観点から無料ユーザーの価値の変化を測ることで、フリーミアムをどこまで継続するのかと言う指標を作ることができます。
デジタルサービスのようにコストがゼロに近い状態であれば、顧客拡大のためにフリーミアムを残すのも一つの方策です。
一方で複製コストや管理コスト、開発コストがかかるような商材の場合はフリーミアムをある時点でやめると言う決断も必要になりますね。

まとめ

以上、フリーミアムのメリットや実現方法についてお伝えしました。商品やサービスの無料提供は内部相互補助という仕組みがあります。有料商品でカバーしたり、将来的に元を取る方法もあります。無料ユーザーの価値も大事であり、それを測ることでフリーミアムの継続や終了を決める指標になります。ぜひ、ご自身のビジネスに活かしてみてください。

あとがき

今週も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
お題をくださった方からは、営業さんのモチベーションが保てないなんて声も聞こえました。そんな場合は、最後に記したような手法で無料ユーザーをスコアリングして価値を可視化することも有効かと思います。自分の活動が企業活動に貢献しているという実感はセールスせよマーケにせよ重要な要素ですよね。
そして、お題の提供ありがとうございました。本当に助かります。
お題の提供については随時お待ちしております。
最後に、参考文献を付しておきます。それでは、また来週お会いしましょう。


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