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セグメンテーションの軸

今週もウェブ解析士のnoteをご覧いただきありがとうございます。
今回は基礎に立ち返ってセグメンテーションの話でもしようかなと思います。
セグメンテーションって、人によってやり方も違うので一概にこのやり方が正しいとは言えないのですが、何を基準に細分化していくのかという視点で書いて生きたいいと思います。


セグメンテーションとは

ターゲット顧客を選定する際に、ニーズの異同に応じて市場を複数のセグメントに分けて考えようとするのがセグメンテーションの基本的な考え方です。厳密には100人いれば100通りのニーズが存在するのですが、全くの別物とも言い切れません。
セグメンテーションでは市場にはニーズが似通った顧客層が一定数存在するという前提のもとで、市場を細分化しします。そうすることで、ニーズを充足する市場規模と生産効率を確保するという目的のもと使用される手法です。

セグメンテーションの成功事例

サントリーのコーヒー飲料「クラフトボス」はセグメンテーションの成功事例としてよく紹介されますよね。
元々「働く人の相棒」として市場投入された「Boss」ですが、「働く人」にフォーカスしてさらに市場を細分化した結果生まれたのが「クラフトボス」だと言われています。働く人を「ブルーカラー(現場作業員」「ホワイトカラー(オフィスワーカー)」に分け、さらに「ホワイトカラー」でもIT系のオフィスワーカーに対象を絞っています。
その結果として、休憩時間に飲み切る缶飲料から、オフィスで少しずつ飲める蓋つきのペットボトル飲料へとその形態も変更しています。

セグメンテーションの軸

市場を切り分けていくのにさまざまな軸が存在します。その軸によってどう切り分けられるのかを見ていきましょう。
定量データをもとに切り分ける方法

定量データをもとにする方法

定量データをもとにしたセグメンテーションは、数値的なデータを用いて市場を細分化する方法です。以下のようなデータが利用されます。

  • 人口統計データ:年齢、性別、収入、職業、教育水準など。

  • 地理的データ:居住地、地域、国、都市規模など。

  • 購買行動データ:購入頻度、購入額、購入チャネルなど。

これらのデータを用いて、顧客を類似の特徴を持つグループに分類します。例えば、年齢と収入に基づいてセグメントを作成することが考えられます。

メリット

  1. 客観性と測定可能性:定量データは客観的であり、測定可能です。具体的な数値をもとにしているため、セグメント間の違いが明確になります。例えば年齢をベースに(〜10代、20代、30代、40代、50代、60代〜)とセグメント分けした場合、漏れ・ダブりのないMECEな状態になります。

  2. 容易なデータ収集:政府統計などから人口統計データを取得できたり、各企業が持つ顧客の購買データから購入額や購入頻度などを得ることはさほど難しくないですよね。

デメリット

  1. 深層的な理解の欠如:定量データだけでは、顧客の深層的な動機や感情を理解することは難しいです。こうした定量データだけに頼ったものだと、分析結果が曖昧になりやすく、顧客ニーズを捉えきれないという欠点があります。

  2. データの制約:取得できるデータの質や範囲に制約がある場合、正確なセグメンテーションが困難になることもあります。

定性データをもとに切り分ける方法

定性データをもとにしたセグメンテーションは、数値では表せないデータをもとに市場を細分化していきます。主に以下のようなデータが挙げられます。

  • 心理的データ:ライフスタイル、パーソナリティなど。

  • 行動的データ:追求する便益、ロイヤルティの高さ、使用経験や使用場面など。

これらのデータを基に、顧客のニーズや欲求に応じたセグメントを作成します。

メリット

  1. 顧客理解の深化:顧客のニーズや価値観を深く理解することで、よりパーソナライズされたマーケティングが可能になります。

  2. 競争優位性:顧客のニーズに基づいたアプローチは、競合他社との差別化を図るのに役立ちます。

デメリット

  1. データ収集の難しさ:顧客のニーズや欲求を正確に把握するためには、インタビューやアンケートを実施する必要があるなど時間とリソースが必要になります。

  2. 主観性のリスク:ニーズに基づくデータは主観的であり、解釈にばらつきが生じることがあります。

セグメンテーションの留意点

聡いみなさんならお分かりだとはおもますが、定量データと定性データどちらかに偏りすぎると効果的なセグメンテーションは難しくなります。あくまでもニーズの違いに着目して、それぞれの変数(データ)を利用していくことが求められます。
例えば、年齢と性別を利用するだけで簡単に「セグメントっぽいもの」は作れます。ですが、20代男性と40代女性で同じニーズを抱えているかもしれませんし、男性と女性でニーズは違っても年齢による有意の差はないかもしれません。
データをもとにセグメントしていくのではなく、ニーズの差を可視化するためにデータを利用する。という考え方がしっくりくるかもしれません。

また、セグメンテーションはSTP分析のファーストステップであり、その後に続くターゲティング、ポジショニングに役立つかというのも重要です。
そこで、効果的なセグメンテーションができているかを判断する基準として下記の5つをご紹介します。

  1. 測定可能性:各セグメントの規模や購買力を計測できるか

  2. 利益確保可能性:各セグメントはマーケティング的投資をするだけの価値(規模や収益性)があるか

  3. 接近可能性:各セグメントは顧客にアプローチすることができ、製品や情報を届けられるか

  4. 差別化可能性:各セグメント同士が違うものであると識別できるか(MECEになっているか)

  5. 実行可能性:各セグメントに対応する施策は実行できるか

まとめ

今回は、セグメンテーションについての話をしました。セグメンテーションは、ターゲット顧客を選ぶ際に重要な手法です。セグメンテーションの軸はさまざまありますが、適切な変数を利用してニーズの差を可視化することがポイントです。そして、セグメンテーションを行う際には測定可能性や利益確保可能性など5つの基準を考慮しながら実施すると、その後のターゲティングやポジショニングを考えるのに役立つものになります。

あとがき

今週も最後までお付き合いいただきありがとうございました。
先日、とある方から「とりあえずのセグメンテーション」や「とりあえずのペルソナが横行している」という話を伺いました。
セグメンテーションって基本中の基本でありながらかなり難しい作業だと思います。「中の人」も自信を持ってセグメンテーションできた試しがありません。(苦笑)とりあえずで、年齢や性別を組み合わせて「セグメントめいたもの」を作って満足するのではなく、しっかりと戦略の礎になるようなセグメンテーションができるようになりたいですね〜。
それでは、またお会いしましょう。

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