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VRIO分析の基本

今週もウェブ解析士のnoteをご覧いただきありがとうございます。
以前、VRIO分析の背景について記したことがありましたね。こちらの記事です。

よくよく考えると、フレームワークの成り立ちを説明しただけで、VRIO分析そのものについては書いてこなかったので、今回はVRIO分析の基本的な考え方について記していこうと思います。


VRIO分析とは

VRIO分析は内部環境(自社)分析に用いられるフレームワークです。RBV(リソース・ベースト・ビュー)理論に立脚した、企業の経営資源やケイパビリティ(能力)を評価するツールです。なので、3C分析の自社分析や、SWOT分析の強み・弱みの分析と相性が良いですね。「中の人」も入れ子のようにして併用しています。
ここで言う経営資源とは、企業が戦略を組む上で利用可能な資源を指し、無形有形は問いません。簡単に言えば、ヒト・モノ・カネ・コトです。具体的な例をあげるとすると、優秀なマネージャーやチーム(ヒト)、工場などの生産設備(モノ)、株式発行や銀行からの借入、内部留保などの財務資源(カネ)、ブランド力や顧客からの評判(コト)などですかね。
ケイパビリティは経営資源の一つとして数えることができますが、それ単体では戦略の実行ができないものを指します。例えば、優れた企画力や開発力、マーケティングノウハウなどが考えられます。
これらの経営資源やケイパビリティを、経済的価値(Value)、希少性(Rarity)、模倣困難性(Inimitability)、組織(Organization)という4つの観点から評価していくのがVRIO分析です。

VIRO分析の方法

自社が所有する経営資源やケイパビリティを評価するフレームワークですから、まずは、自社の経営資源やケイパビリティを列挙していく作業から始めます。その上で、それぞれの視点から評価を行っていきますが、留意しなければいけない点があります。
それは、経営資源やケイパビリティそのものに価値があるわけではないと言う点です。経営資源やケイパビリティは自社の競争優位性を高めることができるのであれば「価値がある」と判断されます。相対的なものなので、市場Aでは価値があるが、市場Bでは価値がないと言う可能性もあるわけです。
競争優位性とは「顧客が支払っても良いと思う価格」と「提供に至るまでに価格総コスト」の差分が他の企業よりも多い状態を指します。なので、「付加価値を高める」もしくは「コストを下げる」という2つの方法が考えられます。つまり、価値のある経営資源・ケイパビリティとは即ち付加価値が高めることができるかコストを下げることができるものを指すのですね。

経済的価値(V)の分析

経済的価値を測るときは、以下のような問いを立てます。

・その経営資源やケイパビリティは外部環境の機会を活用することができるか
・その経営資源やケイパビリティは外部環境の脅威を無力化することができるか
・あるいは機会を活用し、尚且つ脅威を無力化することができるか

このうち、いずれかの答えが「YES」になるのであれば、それは企業の強みになると言えます。逆に「No」であれば弱みになることもあります。
とは言っても、実際にどの資源が価値があるかというのは判断しづらいものですよね。そこで活用できるのが、バリューチェーン・モデル(製品・サービスの開発から販売までの一連の活動を可視化したもの)です。経営資源やケイパビリティを分解して、個々の事業活動ごとに分析していくと考えやすいと思います。

希少性(R)の分析

希少性が大事なのはいうまでもないですよね。例えば、どれだけ優れた技術を持っていても、他社も同水準の技術を有していれば商品はコモディティ化していきます。なので、希少性を評価する際には下記のような問いを立てます。

その経営資源やケイパビリティを有する競合はどれだけあるか

この問いに対して、同様の経営資源やケイパビリティを保有する競合が少なければ少ないほど、競争優位性を確保できるので価値があると判断できます。
ただし、留意しなければいけないのは希少性がないものも無価値ではないという点です。多くの企業が保有しているのであれば、それを保有していないということは競争劣位に立たされるということです。差別化要素で考えるPOP(Point of Parity=同質化要素)と同じですね。それがなければ競争すらさせてもらえないということは気に留めておくべきことだと思います。

模倣困難性(I)の分析

仮に希少性の高い経営資源を保有し競争優位に立ったとしても、簡単に模倣できるものであれば、再び競争均衡することになりますよね。なので、模倣困難性も大切になってきます。模倣困難性を測る際は以下のような問いを立てます。

その経営資源やケイパビリティの模倣コスト(保有しない企業が確保・開発に欠けるコスト)はどれだけかかるか

模倣コストが高くなるほど、競争優位性を保てる可能性が高くなるので価値があると判断することができます。
では、模倣コストが高くなる時ってどんな時でしょうか?
ひとつは、企業が持つ歴史に紐づく場合です。例えば早々に市場参入して築き上げたノウハウや、ブランドの歴史性による顧客からの評判(長く続く企業だから安心できる)などが挙げられますね。
また、なぜ優位性を持てたのか分からない場合も模倣コストは当然高くなります。例えば、「当たり前」だと思われている要素は見落とされがちですし、あるいは複数のケイパビリティが複雑に絡み合って優位性を実現している場合も原因の解明を難しくしますよね。
また、優位性が、長い時間をかけて事前発生的に醸成された複雑な社会現象に起因する場合や、特許など法律で保護される場合も模倣コストを高めます。

組織(O)の分析

経済的価値・希少性・模倣困難性によって、経営資源やケイパビリティの価値は左右されます。しかし、そのポテンシャルを活用しきれるかどうかは組織に左右されます。なので、組織を分析する際には以下のような問いを立てます。

自社の経営資源やケイパビリティが持つポテンシャルを活用しきる組織体制が築けているか

活用できる可能性が高いほど強みになり得ますね。しかし、組織の評価ってすごく難しいですよね。加えて、組織力だけでは競争優位性を保てないので、他の経営資源やケイパビリティとの組み合わせで考えていく必要があります。
組織の評価を行う際は、指揮命令系統・管理システム・報酬制度などの観点で分析していくのが良いそうです。
よくあるケースとして縦割りになり過ぎていて、部署を横断したコミュニケーションが取れないことが弱みになるケースです。これは指揮命令系統が縦方向にしか伸びない組織構造でよく起こります。

最たる事例が携帯音楽プレイヤー市場で優れた経営資源を保有していたにもかかわらず、競争優位を取れなかったSONYです。多くの著名アーティストと契約を持つレコード部門がありながら、コンシューマーエレクトロニクス部門との協力関係がうまく築けなかったために、Appleに覇権を譲ることになったと言われています。

まとめ

ということで、今週はVRIO分析の基本的な扱い方について記してみました。
SWOT分析や3C分析などでいきなり「強み・弱みを考えろ」と言われてもなかなか難しい場面が多いですよね。そこで、VRIO分析を補助的に使い、経済価値、希少性、模倣困難性、組織という4つの視点からどの経営資源が強み、あるいは弱みになるのか考えてみると良いですよ。強み弱みとするものの根拠や原因が理解できると、とるべき行動も見えてきますよね。
この強み・弱みは、あくまでも相対的なものであるという点も改めて気をつけたいところです。

あとがき

今週も最後までお付き合いいただきありがとうございました。
VRIO分析って、内部環境分析にはとても有効なように思うのですが、ウェブ解析士の公式テキストでは紹介されていないんですよね。ちょっと経営に寄りすぎるからなのでしょうかね。
模倣困難性で検討した内容(歴史的要因による模倣困難性)をストーリーテリングに活用したり、希少性で検討した内容を訴求内容に含めてコピー作成(「独自の技術!」や「日本でここだけ!」みたいな)に利用したりと、ウェブ解析士的にも活用場面が多そうではあるのですが。

それではまたお会いしましょう。

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