成果を生むための解析手法
今週もウェブ解析士のnoteをご覧いただきありがとうございます。
いよいよ、花粉に苦しめられる季節の到来ですね。「中の人」は重度の花粉症なので、できるだけSTAY HOMEしています。STAY HOMEのお供にアクセス解析について勉強し直すなどしているところです。
ウェブ解析のスペシャリストの諸先輩方から言わせれば、「今更ですか?」なのかもしれませんが、ほとんどアクセス解析しないウェブ解析士を自負する「中の人」は素晴らしい本に出会いました。それが、これです。
今から14年も前に書かれている本ですが、不易な部分が盛りだくさんです。
今週は、この本に記載されている一部をご紹介しようと思います。
ウェブ解析は何のためにするの?
さて、ウェブ解析をする上で重要なのは目的を持っておくことです。そうでなければ、大量に吐き出されるログデータに溺れ、「何となくそれっぽい」レポートを作成して終わってしまいます。
ここで、公式テキストの記述を振り返ってみましょう。
そう、ウェブ解析の目的は「事業の成果」ですね。そこで、アビナッシュ氏はこう言います。
MELSAモデルで考えるなら、メディア・モデルはコンテンツの閲覧又は有償コンテンツへの誘導、イーコマース・モデルなら売上、リードジェネレーション・モデルなら獲得したリード数、サポート・モデルなら顧客の問題解決度合い(スタッフによるサポートのコスト減)、アクティブユーザー・モデルなら、MAUやチャーン・レートなどが成果を測る指標になるでしょう。
アビナッシュ氏は過激にも、「成果を測る気がないなら、ページ遷移データを丸ごと捨ててしまえ」と言います。
成果を生むための解析
ウェブサイトの目的を達成するために、私たちがしなければいけないことはWhatとWhyの両方を測定することだとアビナッシュ氏は説きます。
ウェブサイトは実店舗と違い、そこに訪れただけで何かしらのデータを残していきます。しかし、重要なのは下記の点です。
公式テキストでも以下のような記述があります。
このデジタルデータにならないWhy(意図や動機など)と数値として把握できるWhat(クリック数や訪問者数など)を併用して解析することで、即効性のある施策を導くことができるとアビナッシュ氏は説いています。
具体的なアプローチ
アビナッシュ氏はWhyとWhatを併用した具体的アプローチを教えてくれます。それが三位一体法です。この枠組みは「行動に結びつく洞察と指標」を根源としているそうです。
公式テキストでも、事業の成果に貢献するためには、単なる数字の報告ではなく、「動かすレポート」が必要になると記されていますよね。
その動かすレポートの条件が下記の通りです。
このうち、上の2つの条件を満たすためにも三位一体法は有用です。細かくみていきましょう。とにかく、行動に結びつかなくては、成果を上げることができません。
行動分析
三位一体の一つ目の要素は「行動分析」です。ここでは、ページ遷移・クリック密度・検索クエリなどあらゆる指標を用いて訪問者の意図を推測します。
これらの指標単体では、何か意味のあることを示しているように見えて、実のところ大した意味を成しません。数字を眺めて満足するのではなく、そこからWhy(なぜ)そのような行動を取ったのかを読み解く必要があります。
成果分析
二つ目の要素は「成果分析」です。ここで重要なのは、指標からわかる成果を知ることです。アビナッシュ氏は、この成果を知るためにSo What?(だから何?何が起きたの?成果は何だったの?)を3回繰り返すことを推奨しています。この問答は、最良の行動に結びつく洞察をうむ指標(KPI)の選定にも使えるのだとか。書籍から3つの事例を引用してみましょう。
このように、行動を促し、ビジネスの課題に答えを出してくれる指標を導くためにSo What?分析は役に立ちます。
エクスペリエンス分析
最後の要素が「エクスペリエンス分析」です。アビナッシュ氏が三位一体分析の中で最も重要な要素と位置付けているものです。
具体的には、顧客への直接的なヒアリングや満足度調査、A/Bテストやヒューリスティック評価、ユーザービリティテストなどが挙げられます。
この分析が重要なのは「なぜそのような行動をとるのかについて洞察とひらめきを得られる」からだそうです。
良いWebアナリストの条件
書籍の中ではいくつか良いWebアナリストの条件が記されています。そんな中で、「中の人」的に特に重要だなと思った2点をご紹介します。
自分の目でWebページを確認する
重要な分析を行う前には必ずWebサイトを訪れて、自分の目でWebページを確認することがとても大切です。ツールや数字のデータばかりを相手にして、実際にはどう見えているのかを考えずに分析を繰り返しているのであれば、行動を見直す必要があります。自分で体験することで、数字をより具体的に解釈できるような見方を身につけられる上、より短時間で洞察を導き出せるようになるそうです。
ディフェンスだけでなくオフェンスもこなす
アナリストは放っておけばディフェンスに回りがちです。ディフェンスとは、言われた仕事をこなすことです。データを渡し、レポートを出力して、ダッシュボードを見せる。これらは本当に必要な作業なのでしょうか?
良いアナリストはビジネスの最前線に立ち、「測定すべき指標はこれです」と断言できる人を指します。「数字を出してほしい」と頼まれれば、「戦略上の目的を教えていただければ、データからどうのような洞察が導き出せるかを添えて提出します」と応酬する。ビジネスに成果をもたらすためには、専門家として率先して”無駄な仕事”に抵抗していく姿勢が求められるものなのでしょうね。
まとめ
ウェブサイトは本来、存在する意味があります。(この時期になると、「予算消化のために」と無駄にLPを作る企業もあるそうですが)その存在目的を突き詰めれば、ビジネスとして成果を上げることに他なりません。そのために、ウェブ解析する者は「何が起きたか」と併せて「なぜ起きたか」を測る必要があります。そうすることで、行動を促す洞察を導くことができるのだとか。
そのための具体的な手法は、「行動分析」「成果分析」「エクスペリエンス分析」からなる「三位一体分析」です。なぜ起きたのか、どんな成果があったのかを分析し、ビジネスを成功に導きます。
あとがき
今週も最後までお付き合いいただきありがとうございました。
普段は「ウェブ」という表記にこだわっていますが、今回の記事はアビナッシュ氏の書籍で「Web」という表記が使われていたので、アビナッシュ氏に敬意を示し「Web」という表記も併用しています。
さてさて、どうですか。いつもよりもウェブ解析士らしい記事に仕上がっていると思いませんか?(笑)ウェブ解析士も様々で、「中の人」はどちらかというとビジネス解析よりの人なのですが、今回はアクセス解析よりの記事が書けて満足です。
この本ですが、公式テキストの理解を深めるためにも非常に役に立ちます。公式テキストの副読本としていかがでしょう。「今更ですか?」というツッコミはスルーしますね。(笑)
それではまた来週お会いしましょう。
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