The Modelの概要
今週もウェブ解析士のnoteをご覧いただきありがとうございます。
先週、WACA関東支部内のイベントでSalesforceさんのオフィスツアーに参加してきました。その時に、SalesforceはThe Modelが確立していて、システマチックに営業活動が行われているというお話をお聞きして、改めて勉強し直してみよう。と思ったので、今週はこのテーマで書いていきます。
この分業システムと言えるものは、『The Model』の著者である福田康隆氏がSalesforce日本法人着任時に、Salesforce米国法人での経験から持ち込んだシステムのようです。
The Modelとは
The Modelは商品・サービスの提供プロセスをマーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス(営業)・カスタマーサクセスといった具合に細かく切り分け、専任者をつけるシステムを指します。
プロセスを細かく分けることで、各部門(=顧客フェーズ)ごとに数値化することができ、ボトルネックを特定しやすくなります。
また、従来は見込み顧客の探索から提案・商談、アフターフォローやクレーム対応といった全てを「営業」が担っていましたが、それらが細分化されフェーズごとに専任者がつくことで専門性が高まり、結果として生産性の向上が期待できるシステムでもあります。
B2B領域、特にSaaS系商材において有効なシステムだと言われています。
4段階のプロセス
The Modelでは営業プロセスを大きく分けて4段階設定し、それぞれに専任者が付きます。それぞれ、マーケティング・インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスです。以下に細かく見ていきましょう。
マーケティング
マーケティング部門に求められることは、顧客とのコミュニケーションの全体設計・指揮です。「購買プロセスの67%は営業スタッフが接点を持つ前に終わっている」と言われるほど、買い手主導で検討が進むようになっています。多くの情報がインターネットなどから容易に取得できる時代ですので、それらを可能な限りコントロールして、顧客ステージを前に進めていくのがマーケティングの役割となります。
KPIとしては見込み顧客(MQL=Marketing Qualified Lead)の数になります。MQLとはマーケティング部門が、次のフェーズ(インサイドセールスによる育成と案件化)に移行しても良いと判断した見込み顧客を指します。
まずは、ウェブサイト訪問者、展示会来訪者、DM送付など様々な施策で認知を獲得します。それらの中から名刺交換やフォーム入力などで連絡先などを取得し、リードを獲得します。ステップメールなどで獲得したリードを育成(ナーチャリング)して有望な見込み顧客(MQL)を創出するまでがマーケティングの責任範囲ということになります。
ただし、先に記した通りコミュニケーション設計においてはカスタマーサクセスまで責任を持つというのがThe Modelの考え方のようです。
インサイドセールス
インサイドセールスの主な役割は、マーケティングからトスアップされたMQLに架電して、商談の機会を作ることにあります。
なので、インサイドセールス部門のKPIは案件化(SQL=Sales Qualified Lead)の数になります。SQLとはインサイドセールス部門が次のフェーズ(営業による商談・クロージング)に移行しても良いと判断した見込み顧客を指します。
インサイドセールスにはインバウンド型とアウトバウンド型があります。
インバウンド型ではフォーム入力など顧客のアクションに対して、育成・案件化を進めるものです。多くの方がイメージするインサイドセールスはこちらだと思います。しかし、インバウンド型では、必ずしも設定したターゲットが獲得できるとは限りません。そこで必要になるのがアウトバウンド型です。設定したターゲットに対して自社からアクションを起こし、見込み顧客化していくものです。イメージとしてはテレアポが近いかもしれませんね。
いずれにしても、フィールドセールスによる商談・クロージングにつなげるのがインサイドセールスの役割です。The Modelで重要視されているのは見込み顧客のリサイクルです。全くの新規リードというのは事業年数を経るにつれ減少していき、競合の参入などで獲得コストは上昇していきます。
新規リードの65%は「今すぐ客ではない」と言われています。新規獲得の大部分は案件化しないことになります。案件化しないリードは事業年数を経るごとに累積していくことになります。
さて、「今すぐ客ではない」は言い換えると「時間がかかるけど顧客になる可能性はある」とも言えます。しかも、すでにリードとして獲得しているので獲得コストは0になりますよね。この案件化しなかったリードを再育成してSQLにしていくことも、インサイドセールスの重要な役割になります。
フィールドセールス
フィールドセールスの役割は明快です。インサイドセールスからトスアップされたSQLをクロージングして受注するというのが役割になります。
そのために必要なのは、商談をフェーズに分けて管理していくとう活動です。そのために以下のようなフェーズを設定していくそうですよ。
フェーズ1:リード以上商談未満
「予算の都合上今すぐは導入できない」、「担当者は前向きだが企業としては検討段階にない」など、今すぐ商談には繋がらないが、マーケティング部門による育成(ナーチャリング)やインサイドセールス部門によるフォローではなく営業が接点を持ち続けてフォローするべき顧客フェーズ。
フェーズ2:ビジネス課題の認識
顧客の「今はいらない」を突破するために、ビジネス上の課題を認識して、商品サービスの必要性を理解してもらうフェーズ。
目標を達成するためのハードルとなる「ビジネス課題」、現場担当者が感じる問題点「プロブレム」、問題点を解決するための「ソリューション」(自社商品)、投資対効果としての「ベネフィット」という4点を意識するのが良いのだそうです。
フェーズ3:評価と選定
商談を進めるだけの価値があると判断してもらう=選定基準を明らかにするフェーズ。
このフェーズで大事なのは1to1のコミュニケーションで、提案する際は汎用的な差別化(自社の強み)を訴求するのではなくて、その顧客にとって差別化ポイントだと認識してもらえるものを訴求しなくてはならないのだそうです。簡単なようで難しいですよね。
フェーズ4:最終交渉と意思決定
購入意思を固めてもらい、稟議プロセスへの準備を行うフェーズ。
自社と顧客の双方で、契約に至るまでに必要なタスクをリストアップしてそれに合意してもらうというのがこのフェーズで大切なことなのだそうです。
契約から逆算して必要なタスクとタスクの期限を提示し、先方の担当者と協力して取り組むことができると良いそうです。
フェーズ5:稟議決裁プロセス
稟議して決裁に持ち込むフェーズ。最後まで来てちゃぶ台返しを喰らわないために、さまざまなリスクを想定して対策を取っておくことが求められます。例えば、決裁には取締役会での承認が必要で、取締役会に提出する資料に期限がある。といった場合、期限が過ぎてしまうと、次の取締役会まで契約ができないことになりますよね。そういったリスクを想定してあらかじめ準備しておくことが重要です。
カスタマーサクセス
カスタマーサクセスの役割は顧客満足度を高めてエンゲージメントを強化し、継続利用を促すことです。なので、KPIは継続数やチャーン率などが挙げられます。
顧客の成功体験が、継続利用につながるので成功をサポートするというのが本来のカスタマーサクセスです。そのためにオンボーディング(契約処理やサポート体制の紹介など)・導入支援(初期設定補助や操作説明、機能紹介など)・活用促進(活用プランの作成や活用度の測定など)・契約更新フォローなど、ここでもいくつかのステージに分けて考えていくと良さそうです。
The Model活用時の留意点
The Modelを導入すると起こり得る問題に、部門間での軋轢が生じるというものがあります。縦割りになり過ぎて、部門間対立が起きてしまうのでしょうね。「マーケから送られてくるリードの質が悪い」とか「営業のクロージングが弱い」とか、目標を達成できなかった時に責任をなすりつけあうなんてことは想像に難くないですよね。
『The Model』著者の福田氏曰く、各フェーズを一方通行にしてはならないのだそうです。こうした問題は、一方通行が故に「内と外」ができてしまうことが原因なのだそうです。そこで、フィールドセールが直接聞いた内容とSQLの認識に相違があればインサイドセールにフィードバックする。インサイドセールスでヒアリングして見えてきた顧客課題をマーケティングにフィードバックする。といったような、逆流してビジネス全体を改善する仕組みが必要なのだとか。
まとめ
以上、The Modelという営業システムについてご紹介しました。このシステムを導入することで、各部門の専門性が高まり、生産性の向上が期待できます。特にB2B領域やSaaS系商材においては有効な手法とされています。Salesforceをはじめとした多くの企業で導入されているシステムです。より良く機能させるためには部門間でフィードバックを行うなどの意思疎通と、「一緒にビジネスを進めている」という意識が必要です。
あとがき
今週も最後までお付き合いいただきありがとうございました。
The Modelはしっかりと仕組み化されていて、運用できれば強力な武器になると思います。
一方で、実体験として「契約はCSに引き継ぎますので」とか「オンボーディングの後にテスト利用してもらって、CSMに引き継ぎますね」とか、自社の運用の仕組みをそのまま顧客に伝えるのはナンセンスだなぁと感じています。※あくまで個人の感想です
CSとか、オンボーディングとか、クライアントさんは聞きなれない言葉なので「何を言ってんのかわからん」状態になると思うんですよ。なので、「導入にあたって必要なことを担当のものからご説明いたしますね」とか分かりやすく伝える技術って大事だよなぁ。と思います。
この記事を書くきっかけになったSalesforceさんのオフィスツアーですが、とても素敵なオフィスで、従業員の満足度も高そうだなぁと思いました。
次の機会もありそうなので、興味があれば参加してみてください!
運が良ければ(?)「中の人」に会えるかも!?笑
最後にウェブ解析士協会からの宣伝です。
5年ぶりとなる「ウェブ解析士会議」が9月14日(土)に東京で開催されます!
「中の人」は4年前に資格を取得したので、実は初めてです。
「コンテンツ制作の極意」ということで、ビッグネームな方々登壇されます。早割もあるので、お申し込みはお早めに!!
それではまたお会いしましょう。
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