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チネ・ラヴィータ閉館に寄せて


1月22日、宮城県仙台市にあるミニシアター「チネ・ラヴィータ」が閉館することを発表した。

このニュースを聞いた時、僕はとても驚き、罪悪感が胸の中に渦巻き、すごく落ち込んだ。

なぜなら、僕は宮城県出身で、この映画館には、たくさんの思い出が詰まっているからだ。

中学2年生の冬、初めての彼女とのデートで、チネ・ラヴィータで『orange』を観た時の思い出。
彼女の映画を観る表情ばかり気にして、内容を全く覚えていなかったことも、今となっては懐かしい。一緒にポップコーンを食べたなあ。

大学生になり、関東で一人暮らしを始めてからも、帰省する度に通っていた。
むしろ、大学生になってからの方が、たくさん通っていた気がする。
大学2年生の時に、沖田修一監督の『子供はわかってあげない』を公開日の最初の上映回に観に行き、青春の爽やかさに胸がいっぱいになった時のこと。友達と一緒に、Biviの1階のカフェで感想を語り合ったな。

東京で見逃した映画も、帰省するタイミングでちょうど上映していて、たくさん観ることができた。
大学2年の3月頃に観た『猫は逃げた』、『チェチェンへようこそ ゲイたちの粛清』も面白かった。
大学3年生の5月頃、色々なことが重なり、心が落ち込んでしまって、急遽実家に帰った時も、チネ・ラヴィータで映画を観て、心を落ち着かせることができた。
この時に観た『教育と愛国』は、今でも胸に残っている。

同じ年の夏頃に観た『プアン/友だちと呼ばせて』、『Zola』『この子は邪悪』は、とりあえずチネ・ラヴィータで映画を観ようと思い、偶然観た作品たちだった。これらもすごく面白かった。

姉妹館であるフォーラム仙台で映画を観ることも多かったため、最後にチネ・ラヴィータで映画を観たのは、2022年の12月末に観た三浦透子主演の『そばかす』まで遡る。
『そばかす』は、自分の人生を肯定させてくれた、とても大好きな映画だった。

自分はこれでいいのだ!と、そう思わせてくれる映画と、たくさん出会わせてくれた、チネ・ラヴィータ。

東京で働くか、地元で働くか迷った時に、地元に帰って就職すれば、フォーラム仙台とチネ・ラヴィータに沢山通える!と心躍ったこともあった。

結局、決め切れずに、閉館してしまった。

もっと通えば良かったという思いが消えず、悔やんでも、悔やみ切れない。

岩波ホール、名古屋シネマテークといった、地元民には欠かせない映画館が無くなっている今の時代、なぜか地元の仙台なら心配ないだろうと勝手に思い込んでいた。

ミニシアター文化の灯火を消さないためには、映画館に通うしかなかったのだ。

地元の大切な思い出が消えてしまう悲しさ、やり切れなさで胸がいっぱいになる。

また、3月に帰省する時には、チネ・ラヴィータで沢山映画を観たいと思う。

それが、せめてもの恩返しだ。

チネ・ラヴィータさん、たくさんの思い出をありがとうございました。
3月末まで精一杯通い続けます。

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