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エアガンの的

子供たちは早めに認可保育園に入園することができ、私は建設会社の事務員として採用が決まり、やっと普通(だと思える)の生活が始まろうとしていた矢先、Kが私と子供が暮らしているアパートに転がり込んできた。

私は嬉しくて、やっぱりKには私が必要なんだと、ますます歪んだ考えが強くなった。

友達と鳶職をしていたKは、相変わらず遊びに行くことが多かったけど、それでも毎日帰ってきてくれた。

この頃のKは私との性行為を動画に撮るようになった。
でも、それさえも私を愛してるからだと私は思い込んでいたし、異常な行為だとも思わなかった。
Kがそうしたいなら、Kが喜ぶなら、私はなんだってする。そのぐらいの気持ちだった。

私はKと一緒になってから友達と遊んでいない。
Kが嫌がるのもあるし、変な疑いをKに持たれたくなかった、嫌われたくなかったから、友達よりもKを優先してきた。

ある日、友達がたまには呑みに行こうよと誘ってくれ、恐る恐るKに聞くと、快く、行ってきたら良いよと言ってくれた。
初めて友達と外食、しかも夜に呑みに行けると思うとやっぱり嬉しかった。

当日、Kが選んでくれたK好みの洋服(当時流行っていたお腹を見せてミニスカート)を着て、出かけようとしたその時、太ももの裏にもの凄い激しい痛みが走った。
振り返ると、ニヤッとしたKがエアガンを構えていた。

そのエアガンはKが自分で改造して威力が増している。

早く行かないと遅刻するよ?
と、またニヤッとする。
痛いからやめてと頼むのだけど、良いから早く行けと言われ、行こうとすると露出しているところを狙って撃ってきた。

私の太ももや腕に当たったBB弾の痕は一瞬にして火傷をしたかのようになった。

玄関に行く途中にある脱衣場に逃げ込むと、さっさと出てこいと怒鳴り、私は撃たれるとわかっているのに体をKに差し出した。

もう行かないから、だから撃たないで欲しいと言っても、行けと言う。

かなりの数の傷を受けて私はやっとアパートから出ることが出来た。

その傷を見た友人は、
「根性焼きされた?」と。
そう思われるほどBB弾の傷は焼けただれたようになっていた。

別れた方が良いと、当然そう言われる。
でも私は別れたくないし別れられなかった。

Kは孤独な人だった。
私も孤独だった。
2人でいれば少しあたたかい気がした。
ただそこに痛みを伴っただけ。

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