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シリーズAだけで10億円以上調達した16社から見えてきた資金調達の着眼点

シリーズAで10億円以上調達するスタートアップのリリースをよく見かけたので、何か資金調達の傾向ががあるのか、と思い直近2019年から調べてみた。

(サマリ)2019年は4社。2020年は3社。2021年は5社。2022年は2月時点で既に4社という推移になっている。2022年はかなりのハイペースだといことがわかる。

シリーズAの調達額が10億円以上ということは、バリュエーションで言うと、推察するに50億から100億前後ということになる。

今回のnoteでは、そんなハイバリュエーションな株価でも、プロの投資家を納得させた、その経営や事業モデルを分析して、何か「見えるもの」がないか、投資家の着眼点をまとめてみたいと思う。

シリーズAで10億円以上調達した16社のBusinessとInvestor

まずは、シリーズAの調達額が10億円以上を超えたスタートアップの事業と投資家を簡単にみてみよう。

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estie | シリーズA調達額:約10億

(Bsuiness)不動産データプラットフォーム
(Investor)グロービス・キャピタル・パートナーズ、東京大学エッジキャピタルパートナーズ、グローバル・ブレインなどから、総額10億円を調達

Hikky | シリーズA調達額:約70億

(Bsuiness)VRサービスの開発ソリューション
(Investor)メディアドゥから5億円、NTTドコモから65億円を調達

Micoworks | シリーズA調達額:約12億

(Bsuiness)顧客体験を実現するコミュニケーションプラットフォーム
(Investor)ALL STAR SAAS FUND、Eight Roads Ventures Japanなどから、総額12億円を調達

アルプ | シリーズA調達額:約12.5億

(Bsuiness)販売・請求管理SaaS
(Investor)グロービス・キャピタル・パートナーズ、DNX Ventures、GMO VenturePartners、電通ベンチャーズなどから、総額12.5億円を調達


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FLUX | シリーズA調達額:約10億

(Bsuiness)マーケティング効率化 SaaS
(Investor)DNX Ventures、Archetype Venturesから、総額10億円を調達

Air design | シリーズA調達額:約11億

(Bsuiness)AIを用いたデザイン業務のサブスク
(Investor)Archetype Ventures、みずほキャピタル、Globe Advisors Ventures、STRIVE、THE FUND(シニフィアン)、DIMENSION、THE GUILDなどから、総額11億円を調達

oVice | シリーズA調達額:約18億

(Bsuiness)バーチャルオフィス空間
(Investor)Eight Roads Ventures Japanなどから、総額18億円の資金調達

Autify | シリーズA調達額:約11億(融資込み)

(Bsuiness)AIを用いたソフトウェアテスト 自動化プラットフォーム
(Investor)Archetype Ventures、Salesforce Ventures、Tably、WiL、Uncorrelated Venturesなどから、総額10百万米ドル(約11億円)を調達

ファミトラ | シリーズA調達額:約14億(融資込み)

(Bsuiness)家族信託サービス
(Investor)Eight Roads Ventures Japan、Coral Capital、DG Daiwa Ventures、Aflac Ventures LLC、東京海上日動火災保険株式会社、みずほ銀行などから、総額約14億円を調達


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ボディアーキ ジャパン | シリーズA調達額:約10億

(Bsuiness)美容エステのサブスク
(Investor)株式会社ネクシィーズグループ、個人投資家などから、総額10億円を調達

レスタス | シリーズA調達額:約10億(融資込み)

(Bsuiness)オーダーメイド商品の制作・販売プラットフォーム
(Investor)ハックベンチャーズ、イムラ封筒、みずほキャピタル、一般社団法人日本スタートアップ支援協会などから、総額10億円を調達

イクシス | シリーズA調達額:約10億


(Bsuiness)社会・産業インフラメンテナンスの点検ロボット開発
(Investor)INCJ、三菱商事、横浜キャピタル、Sony Innovation Fund、KSP5 号投資事業有限責任組合などから、総額10億円を調達。


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POL | シリーズA調達額:約10億

(Bsuiness)研究内容をもとに優秀な理系学生をスカウトできる新卒採用サービス
(Investor)Spiral Ventures Japan、サイバーエージェント、PKSHA SPARX Algorithm Fund、Beyond Next Ventures、BEENEXT Pte.Ltdなどから、総額10億円を調達

オプティマインド | シリーズA調達額:約10億

(Bsuiness)
(Investor)トヨタ自動車、MTG Ventures、KDDI Open Innovation Fund 3号などから、総額10億1,300万円を調達

shippo | シリーズA調達額:約10億

(Bsuiness)貿易. Shippio デジタルフォワーディング 三井物産出身
(Investor)アンカー・シップ ・パートナーズ、Delight Ventures、環境エネルギー投資、Sony Innovation Fund、グロービス・キャピタル・パートナーズ、Coral Capital、YJキャピタル、East Ventures、DBJキャピタルなどから、総額10.6億円を調達

justIn Case Technologies | シリーズA調達額:約10億

(Bsuiness)P2P保険/保険API
(Investor)伊藤忠商事、グローバル・ブレイン、DeNA、新生企業投資、SBIインベストメント、グロービス・キャピタル・パートナーズ、Coral Capital、LINE Venturesなどから、総額10億円を調達


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見えてきたこと① Business

まず、上記16社のうちToCビジネスを本業としているのは、家族信託のファミトラの1社だけである。justincCase Technologiesは保険会社向け保険APIサービス、Hikkyも企業向けのVRソリューションなので、メインはToBビジネスと評価した。

ToCビジネスは、起業家がアントレプレナーか、もしくは、そのビジネスのネットワーク効果が顕著であれば、高い時価総額をつけることもありうるかもしれない。ただ、アーリーの段階でネットワーク効果を顕出させることは、かなり難しい。ToCビジネスでは、アーリーの段階では、高い時価総額をつけることが難しいと投資家が評価していることが推察できる。

国内スタートアップ想定時価総額ランキングTOP20(2022年1月)をみても、ToCビジネスでランクインしているのは、スマートニュース、ヘイの2社のみである。


見えてきたこと② Investor

ドコモのHikkyへの60億円の投資は例外として、10億以上のロットでのファンディングは、事業会社やCVCでは難しい。もっと言えば、シリーズAに限らず、今後も大きな資金を調達して、レバレッジをかけるスタートアップにっては、どのベンチャーキャピタル(VC)にリードで入ってもらい、フォローオン投資を受けるか、がかなり重要となってくる。

この16社に一番投資していたVCは、グロービス・キャピタルパートナーズ。4社(estie / アルプ / shippo / justIn Case Technologies)に投資している。


見えてきたこと③ Founder Market Fitというストーリー

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16社をみて顕著だったことが、創業者自らが身を置いていた業界を変革するコンテキスト(原体験に根ざした問題意識)の中に、起業があるということだ。

そのコンテキストが、時代の潮流やTAM(Total Addressable Market」の略で、ある市場の中で獲得できる可能性のある最大の市場規模、つまり商品・サービスの総需要のこと)のデカさ、経営者のオフェンス力、グリット力、業界の専門スキル、が不可分に結びついていて、創業者のマーケットフィットとして、魅力的な創業ストーリーとなっている、というのが率直な感想である。


見えてきたこと ④Traction(成長の兆し)

16社のうち、PR資料に、何らかのトラクションを、数字として開示していたのは、4社しかない。中でも、売上を開示していたのは、oViceのみである。

傾向としては、直近の企業ほど開示している企業が多いい。見せ方としては、MRR成長率、導入実績数、累計顧客数などがある。

(Micoworks:YoY MRR成長率)

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(アルプ:導入実績数70)

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(oVice:年間経常収益)

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(レスタス・累計顧客数の年次推移)

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今回は、シリーズAだけで、10億円以上調達する会社を分析してみたが、違う視点からシリーズAを分析してみたり、シリーズBを企画してみたい。

(参考:前回書いたnoteです。こちらについてもシリーズAについて触れています)





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