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伝統だけではない「ハイブリッドな暮らし」|深海産業有限会社

「ものづくり」「工芸」と聞くと、どこか難しそうで、少し、生活からは離れたようなイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか?

そんなイメージを大きく覆す深海産業さん。お話を伺っていくなかで「作り手」が「暮らし手」でもある、そんな様子を垣間見ました。

そこに居るだけでなんだか笑えてくる、楽しく真面目にいいものをつくる、一風変わったものづくりの現場の様子をお届けします。

深海産業有限会社
1982年設立。和歌山県海南市にて「棕櫚縄」の生産をはじまりとし、2019年より、自社ブランド「Broom Craft」を立ち上げ。“棕櫚・シダ箒の持つ深い歴史を、人の手で大切に繋いでいきたい。”という想いで、世界に羽ばたく新たな工芸品を作っている。
https://fukami1178.jp/

深海産業のものづくりは「暮らし手」に寄り添う

深海産業さんでは、2019年から「Broom Craft」という自社ブランドで箒(ホウキ)を始めとし、キッチンブラシや、デスク用ブラシなどの「棕櫚」を使った製品づくりをしています。今回は、専務取締役の深海耕司さんにお話を伺いました。

-箒って、おばあちゃんが使うイメージがあるんですが、何歳くらいの方が使っていらっしゃるんですか?

多くは、40-80代の女性ですが、最近は、意外と若い方も購入してくださっています。数年前には、ちょっとしたブームにもなっていましたね。

-わたしも、おしゃれというだけで買ったことがあります(笑)でも、使ってみると便利ですよね。

そうなんですよ。掃除機を毎回出すのが面倒だったり、細かいところを掃除したい時だったり。

-分かります、コードレスの掃除機って、充電できてないとすぐ使えないですしね。

僕たちは、箒を伝統だからとかで買ってほしいわけではなく、掃除機と一緒に使ってもらって「ハイブリッドな暮らし」を提案したいなと思っています。箒で掃いて、ちりとりの代わりに掃除機で吸うとか。結構、この使い方、便利なんですよ。

-うわあ、確かに、めっちゃいいですね。屈んでちりとりに入れるの面倒ですもんね。

キッチンブラシも、スポンジと一緒に使うことで、洗い物が快適になります。例えば、カレーの鍋洗ったら、スポンジがドロドロになっちゃうじゃないですか。そんな時に、事前にキッチンブラシで洗ってもらうと、スポンジも長持ちするんですよね。

-すごい、かゆいところに手が届きますね。ちなみに、この棕櫚って、国産なんですか?

いい質問ですね、よく聞かれるんですよ!(笑)僕たちは、ほとんどの製品に、中国やスリランカから輸入した素材を使用しています。「中国だからダメだ」みたいな時代ではなくて、本当に、いい素材でいい仕事をしてもらうと、自分たちだけでは出せないクオリティのものが仕上がってくるんですよね。

-たしかに、国産=めっちゃいいという固定観念があります。

素材や製品の特性に合わせて、どこの素材がいいかというのは変わります。それをきちんと見極めて、お客様が手に取りやすい価格で、本当にいいものを作り、届ける。まさに、ここでも、「ハイブリッド」なものづくりの考え方です。

-素材、加工、製品化、さらには使う時まで「ハイブリッド」思考。いいところ×いいところで他にはない製品作りが可能なようです。

個性豊かな明るいものづくり

工房にお邪魔すると、楽しげな雰囲気が漂います。あれ、思っていた「ものづくり」の現場とはちょっと違います。

-こんにちは。あれ、思ってたより、女性の方が多い。失礼ながら、職人と聞くと、勝手に男性が多そうなイメージをしていました。

みんなプロです。厳かな感じではない明るい雰囲気ですけど、技術もしっかりあるんですよー。まずは、体験してみますか?

-え、いいんですか?やってみたいです!(ということで実際に体験させていただくことに)

ワークショップで体験できるキッチンブラシづくり

ここからは、実際に、ものづくり文化祭で体験できるキッチンブラシづくり。先に体験してきましたので、感想を少し共有します。

まず、目標は、このくるくるした銅線で棕櫚を止める作業。これが、実は大変だけど、一番楽しかったです。ここは、ちょっとシークレットにしておきます。ぜひ、ものづくり文化祭にて体験してみてください。

深海産業の箒づくりでは、欠かせない存在の松本さんから手ほどきを受けます。3年前に箒作りを始めるまでは、全く畑違いの業界(滑走路の図面を書いていたそう)にいたそうです。箒を作るための道具や便利なグッズも松本さんお手製。

力が弱い女性でも、道具をうまくアレンジすれば、作業ができるような工夫が散りばめられていました。実は、製品を作るまでに、道具を自分たちで作るという過程があるんですね。

こちらは、キッチンブラシを使いやすくするために、斜めにカットする工程。使いやすい、ちょうどいい角度を試して、結果、辿り着いた秘伝の角度。簡単にカットできるように、木製の道具にはめて、中華包丁でカットしていきます。(色々ハイブリッドすぎます)

まっすぐ、ブラシがキッチンに立つように、整えていきます。

最後は、なんと、バリカンで、毛羽立っている繊維をきれいにカット。持ち手がカサカサしないように、滑らかに仕上げていきます。これで、キッチンブラシが完成。なんと、お土産に、自分で作った、マイブラシをいただきました!

深海産業のみなさん、ありがとうございました。


編集後記

今回、深海産業さんを訪問させていただき、感じたことは、圧倒的に「使う人」に優しいことを目指しているんだなということです。自分たちの技術を見てほしいというところから入るのではなく、あくまでも、使う人が心地よい、そんなブランドを作っているということが伝わってきました。

深海産業有限会社
和歌山県海南市阪井1391-4
TEL.073-487-2498
FAX.073-487-0366
HP:https://fukami1178.jp/
体験ワークショップはこちら

筆者紹介
東詩歩
合同会社ギンエン代表 / 和歌山大学観光学部在籍。「様々な境界を溶かしながら、クレイジーで温かい世界をつくる」をミッションとし、写真や執筆をはじめ、和歌山県を中心に活動。
HP:https://gin-en.jp/
Instagram:@moon__mani


和歌山ものづくり文化祭について

「ものづくりの未来を創る、体験と学び」をテーマに、和歌山県北部の伝統産業等をはじめとする製造業が一堂に集い各社の技術をその場で体験し楽しめる、和歌山で初めての「ものづくり企業がつくる、体験参加型イベント」を開催します。

開催日:2022年11月5日・6日
開催場所:和歌山城ホール1F展示室
入場料:無料 ※一部ワークショップは有料
HP:https://w-monodukuri.com/


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