見出し画像

ある夏の夜のこと

私は暗闇で光るものが好きだ。
だから、満点の星空が好きだ。夜景が好きだ。夏の空を彩る花火が好きだ。


友達と遊んだ帰り、外へ出ると、ぽつぽつとわずかに雨が降っていた。
すると数秒後、空が白く光った。
雷だ。
5秒おきに、消えかけの蛍光灯のように点滅する空がなんだか面白くなって、私は友達と別れた後、もう少し空を観ることにした。

斜め上を見上げながら、私は歩き続ける。雨はほとんど降っていない。
ずっと見ていられそうだと思った。
不規則に空は光り続ける。音は聞こえない。
こんなにも短い頻度で雷が落ちていることに驚きながらも、私は歩く。
高い建物が並び、空が狭い。
もっと空を広く見渡せたらいいのに。でも高いところを目指したら、自分自身が雷に打たれてしまうだろうか。
そんなことをぼんやりと考えながら、私は歩く。
空全体が光る。昼間とは違い、その明るさが目を引く。
稲妻にすっかり見とれて、私は歩く。

雨が降ってきた。雷の音もわずかに聞こえ始めた。
もう少し見ていたかったが、私は帰ることにした。
気付いたら隣の駅の近くまで来ていた。

だんだんと雨が強くなってきて、私はびしょ濡れになりながら家を目指す。
稲光の美しさに心を奪われた私は、びしょ濡れで歩いている自分にすら趣を感じていた。


私は暗闇で光るものが好きだ。
だから、満点の星空が好きだ。夜景が好きだ。夏の空を彩る花火が好きだ。
そして、夜空に光る雷も。

この記事が参加している募集

#夏の思い出

26,313件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?