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withコロナ飲食店の落とし穴!!売上2ヶ月分の借し入れで2年分の利益が吹っ飛ぶ!

2020年4月7日、新型コロナウイルスの感染拡大によって緊急事態宣言が出 されました。その前の2月、3月の時点で、すでに多くの飲食店が相当なダメージを負っています。そして、今回の緊急事態宣言で飲食店が致命的な状況に陥っています。外食産業は今、本当に苦しい時期です。お客様や従業員の健康や命を守るためには自粛はやむを得ない。しかし自粛が続くと、お客様に満足のいくサービス提供することも、従業員の雇用を維持することも、そして事業を継続することもできなくなっていました。

現在飲食店が立たされている苦境についてはすでにさまざまなメディアでも語られています。しかし、なぜそこまで苦しそうなのか、現在進行形でどれくらいのダメージを負っているのかは、外食産業に携わっている方たち以外にはあまりピンとこないかもしれません。今回のコロナショックで飲食店に何が起きているのか、なぜこんなに苦しい思いをしている飲食店が多いのか、日本における飲食店の収益構造を含めて、数字を踏まえた上でなるべく簡潔にお伝えできればと思います。

〈日本の外食産業は薄利多売〉

単刀直入に言うと日本における飲食店は基本的に薄利多売です。業界では、一般的に5年残るお店は2割、10年残るお店は1割と言われています。これは日本の飲食店の競争過多な状況や、⻑く続いたデフレなどに要因があります。 業種業態によって違いますが、飲食店の収益は、「FLコストで60%前後が適正」と言われています。このFLコストというのは、

F=食材原価

L=人件費 

です。これをそれぞれ30%前後程度に抑えるようにするのがセオリーです。

飲食店の売り上げは、月売上=客数×客単価×営業日数

で表されます。そして、かかるコストは、食材原価・人件費・家賃を筆頭に、光熱費や広告費(食べログなど媒体の掲載費用など)、雑費などがあります。一般的に営業利益で5〜7%前後です。飲食店の上場企業でも3〜4%あたりが中央値にな ります。利益率の低い業界であることはご理解いただけるかと思います。

〈コロナウイルスはどのような影響を数字上でもたらすのか〉

コロナウイルスはどのような影響を数字上でもたらすのかシュミレーションしてみましょう。もし、1カ月の売り上げが半減したら、通常で得られる営業利益約2カ月分の赤字になります。 店舗を回す人は最低限置かねばなりませんし、社員の人件費は削れません。アルバイトを削ったとしても、抑えられる人件費には限度があります。そして、家賃は基本的にどんなに売り上げが下がっても変わりません。今、コロナの影響で大家さんとの交渉も増えていますが、大家さん側にも懐事情がありますから、容易なことではありません。

売り上げが半分になると、お店の場合は2カ月分の営業利益が吹っ飛びます。つまりこのお店の場合、4カ月の間売り上げが半減すると、その後の8カ月間は通常の売り上げに戻ったとしても、その1年間の営業利益はほぼゼロになります。固定費が厚く、利益が薄い飲食店の厳しい現実です。

〈2ヶ月で10ヶ月分の利益が失われる〉

コロナのダメージは、日本国内の飲食店においては2月ごろから影響し始め、3月には完全に下がりました。今回の緊急事態宣言によって、多くの商業施設が2020年5月6日まで休業を発表しました。そして、飲食店営業は原則20時までとなりました。また、延長が余儀なくさててる地域もあります。仮に、先ほどのお店で2ヶ月の売 り上げが完全に止まった場合は、10ヶ月分近くの営業利益が無くなります。 お店の営業が2ヶ月止まるということは、飲食店にとってものすごく大きなダメージです。

今年に入ってから4ヶ月で飲食店は大きなダメージを負っています。資金に乏しいお店や会社はすでに廃業に追い込まれているところも増えてきました。一般的な飲食店はそこまでキャッシュを積んでいません。1.5〜3カ月程度の運転資金しか持っていないところが多数を占めます。複数店舗を運営する会社やグループでも、増収増益を達成するためには店舗数を増やすことが成⻑のセオリーとされてきたので、新規出店をするために多くの借り入れをしている場合がほとんどです。キャッシュフローが止まると大手でも一気に苦境に立たされます。

何よりも厄介なのは、今回のコロナの影響がいつまで続くか分からないという先の見えないことです。

そして、それの対応策として政府は「融資のしやすさ」をしきりに強調するが...。各自治体によっても対応が違います。多くの場合、家賃などの固定費に関しては補償を受けることができません。一方で政府は無利子・無担保・無保証の融資を推し進めています。それによる足元のキャッシュフローや運転資金の確保については、しきりに強調しています。

しかしながら、飲食店における運転資金の借入金額には限度があります。運転資金の借り入れは経費に算入できないため、借入金の返済は税引き後の利益から支払わなければなりません。(累積赤字がある場合は法人税はかかりませんが、ここでは運転資金の借り入れの返済の影響を分かりやすくするため、法人税がかかる前提で話を進めます。)

〈借し入れした場合のシュミレーション〉

どういうことか、先ほどの話を踏まえて説明します。 仮に2月、3月と売り上げが半減し、4月の売り上げがゼロになったとします。そして5月も戻りきらず、半減状態が続くとします。その場合、累積の赤字を350万円ほど、通常 の年間の営業利益分くらいと仮定します。 この危機を乗り越えるために400万円を無利子で借り入れたとします。そして次の年に ロナを乗り越え、通常の時の利益を出すことができました。年間の営業利益は400万円ほどなので、これでなんとか借入金を返せるように見えます。

〈4ヶ月分の借し入れで2年分の利益が必要〉

しかしながら、ここから実効法人税率が35%ほど引かれるので、実際の返済原資は 400×35%=260万円ほどしかありません。400万円の運転資金の借り入れをした場合、 返済するのにその後2年近くはかかります。 2ヶ月分の売り上げ減少を乗り越えるために借り入れても、その返済に約2年分の利益を 必要とするわけです。

分かりやすくするために極端な例にしていますが、実際に飲食店は多かれ少なかれこのようなダメージを現在進行形で負っています。

そして、お店を維持する分のキャッシュをいつまで積めばこの危機を乗り越えられるのか現時点では全く分かりません。いくら借り入れれば乗り切れるのか不透明なままに、当座をしのぐ借り入れをするのか、店を閉めるのかの選択を突きつけられ続けています

〈デリバリーの落とし穴〉

この先、十分な補償がないままに、第二波、第三波と起こり、再度「自粛」をするのならば、おびただしい数の飲食店の潰れていきます。
今回の危機をデリバリーやテイクアウトなどで乗り切ればいい、という声もあります。もちろん、やらないよりはやったほうがマシでしょう。しかし、そもそもデリバリーだけで落ちた分の収益が賄えるくらいであれば、最初からやっています。根本的にデリバリーをやるのに向いた立地やキッチンでない場合も多いですし、慌てて参入する店舗が増えすぎている現状では、いまさら始めたところでほとんどのお店にとっては焼け石に水です。

デリバリー費用も、例えばUber Eats(ウーバーイーツ)だと35%の手数料が取られます。そこから包材費用もかかりますし、基本的にデリバリーは実店舗以上に薄利になりがちです。 高級店のデリバリーやお持ち帰り弁当なども増えていますが、これも一時的な応援需要であり、持続性がないと考えています。

実店舗の価値の本質はサービスや店の場も含めた総合的な体験にあり、それはデリバリーなどで真価を発揮できるものではありません。

〈なぜ、それでも飲食店を続けるのか?〉

それでもなぜ飲食店はなくならないか?そんな利益率の低い業界でもなぜ、飲食店をやる人が多いのか?

人によってさまざまだと思いますが、根本の部分で共通しているのは、幸福な場を作ることが楽しいからではないでしょうか。気のおけない友人たち、家族や 仲間と囲むおいしい食事には、人間の幸福の根源が詰まっていると僕は思います。どんなに利益率が低くても、どんなに運営が大変でも、それでもやりたくなるくらいに飲食店は素敵なものだと僕は思っています。

今回のコロナの影響でかなりの数の飲食店が廃業に追い込まれるでしょう。これはもはや変えようのない事実となりつつあります。

飲食店関係者は、また笑顔でお客様を迎えられる日のために、できうる限りの手段で生き延びようとしています。

ただ一つ、確かに言えることがあるとすれば、飲食店というものが歴史上に現れてから以降、この世から飲食店がなくなったことはない、ということです。

この危機を乗り越えることができた飲食店は、より一層本質的な価値をお客様に提供できるようになっていると信じています。

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