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置き換え炭酸水と空腹、の話

 最近炭酸水を飲んでいる。健康のため、とか急に意識が高くなったというわけでもなく、ただ「コーラやエナジードリンクばかり飲んでいるのは何となくヤバい気がする」という感覚が突然降ってきたからだ。

 歯医者に行くのがめちゃくちゃ怖いという話を以前にしたけれど、未だその恐怖心は克服できていない。だからというのもある。糖分そのもののような蛍光色の液体を飲んで自ら死地に赴くよりは、少し好物を我慢して処刑宣告を延ばす方がマシだと思った。

 置き換えダイエットのようなものだ。体重を減らすため絶望的に味の薄いスムージーや糖質の低いプロテインを摂取するように、歯医者から遠ざかるため口内への刺激のみにステータスを振った只の水を飲んでいる。

 そうして炭酸水を飲む人になってから半年程度経ったが、正直言って何も変わっていない。歯医者の処置は相変わらず痛いし、そもそもコーラを飲もうが飲まなかろうが歯磨きはするのだし、体の調子が良くなるわけでもない。

 つまり「コーラやエナジードリンクばかり飲んでいるのは何となくヤバい気がする」というのは本当にそんな気がしていただけであり、僕にとっては何もヤバくなかったのだ。

 このままでは、ただ普段の生活における飲み物の選択肢の中に「炭酸水」が入っただけ、ということになる。しかし世の中において炭酸水は健康や美容にいいと評判である。

 曲がりなりにもお世話になっている身としては、「炭酸水飲んでも何も変わらなかったすね」と軽率に話すことによって炭酸水様の評判を落とすことは気が引けてしまう。

「なんかないか、なんかないか」と四次元ポケットを漁るドラえもんの様にアフター炭酸水の生活を思い返してみたところ、一つ思い当たることがあった。

 僕は最近、基本的に一日二食の生活をしている。その理由は簡単だ。体を動かしやすいのは「少し空腹を感じる」もしくは「食後の消化が終わったくらい」の状態で、一日に三食しっかり食べるよりも二食に抑えた方が、その状態をキープしやすい。

 とは言っても、あまりに食事の時間が開いたり日中の活動量が多いと、予定していたよりも早く空腹に限界が来てしまう。仕方なく間に一食挟むわけだけれど、そうすると次の食事がさらにずれ込んで中途半端になってしまうのだ。

 炭酸水を飲んでから、厄介だった「変な時間に空腹になる」が減った気がする。たぶん炭酸によってお腹が満たされて空腹を感じづらくなっているのだろう。

 よかった。僕は炭酸水を飲むことのよって空腹を感じづらくなり、体の調子をよく保つことに成功しているのだ。これなら炭酸水の評判を落とすこともないだろう。

 そう思ったのもつかの間、別の記事には「炭酸水を飲むと太りやすくなるらしい」と書いてあるのを発見してしまった。何やら炭酸によって胃が刺激され、より空腹を感じやすくなってしまうらしい。「お腹空いているときに少しだけ食べたらもっとお腹空いちゃった」的なヤツだろうか。

 おいおい待ってくれ。そしたら僕が「空腹を感じにくくなりました」というのは全くのウソになってしまうじゃないか。そもそも、そうだとしたら僕が空腹を感じづらくなったのは違う理由ってことなのか。

 これならまだ「炭酸水飲んでも何も変わらないですね...」の方がマシではなかろうか。全然思い当たる節がないのにお腹空かなくなるのちょっと怖いし。

 軽率に書き始めた炭酸水の話によって、僕は原因不明の体の変化に震えながら次の歯医者の予約を待たなければならなくなってしまった。その手にはきっと炭酸水が握られている...かもしれない。

 

 

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