ブロックチェーン入門_#7:基礎技術「ピアツーピア・ネットワーク」 - 権威を廃し、止められない
ブロックチェーンを支えるネットワーク・アプリケーション構築技術である「ピアツーピア・ネットワーク」とはどんなものでしょうか。概念や特徴を解説します。
クライアント/サーバ方式とその問題点
■クライアント/サーバ方式の概要
ピアツーピア・ネットワークの前に、私たちが日頃使っている、インターネット上の多くのアプリケーションで採用されている「クライアント/サーバ方式」の問題を考えましょう。
クライアント/サーバ方式は、サービスを受けるコンピュータ(例えば私たちの手許のパソコンやスマートフォン)は専らサービスを受けることだけを行い、サービスを提供するサーバは専らサービスを提供することだけを行うような仕組みです。
今流行りのクラウドサービスは、クライアント/サーバ方式に基づいています( ワールドワイドウェブ 自体がクライアント/サーバ方式で動いています)。クラウド(雲)のようなインターネットの向こう側に、詳細は見えませんが、たくさんのコンピュータが動いていてサービスを提供しています。手許のコンピュータはそのサービスを受けるだけです。
■サーバの障害やサービス停止のリスク
クライアント/サーバ方式では、サービスが障害によって停止したり(たくさんのコンピュータで動いているはずのクラウドサービスが停止する事例もよく起きています)、サービスが突然打ち切られたりするリスクがあります。
ピアツーピア・ネットワーク
■参加者が一緒にサービスを提供する仕組み
一方、ピアツーピア(Peer-to-Peer:P2P)は、参加する全員でサービスを提供し利用する仕組みです。ピアは「対等な相手」を意味します。
参加者は互いにデータやリソースを共有し、サービスの運営に貢献します。これにより、サービスの所在が分散化され、一カ所に集中しなくなります。
■権威を廃し、停止できない仕組み
P2Pネットワークは、中央となる権威を置かないように設計できます。それにより、特定の誰かの判断でサービスを止めるといったことがしづらくなります。
また、データやリソースが分散されているため、単一のコンピュータの停止やサービス提供からの離脱が、全体に影響を与えることなく、サービスを持続的に提供しやすくなります。
ブロックチェーンとピアツーピア
ブロックチェーンは、いかなる方法でも記録が否定されず維持されるようにするという目的を持っています。適切に設計すれば検閲者をなくすことができ、また、障害にも強いピアツーピアはブロックチェーンの目的と相性がよく、Bitcoin(ビットコイン)やEthereum(イーサリアム)といったブロックチェーンも、参加するコンピュータ群がピアツーピア・ネットワークで互いと接続することによって実現されています。
ただし、ファイル共有ソフトとも言われるBitTorrent(ビットトレント)やWinny(ウィニー)といったピアツーピア・ネットワークはデータを効率よく拡散・配付し入手しやすくするという目的を持っているのに対し、ブロックチェーンは記録の真正性を保つ目的を持っています。技術的に似ている部分もありますが、目的が異なることから違っている部分も多く、一部で主張されているような、拡散・配付用のピアツーピア・ネットワークがブロックチェーン技術の基礎であるかのような言説は、疑いの目をもって見るべきでしょう。
ここまで3回にわたりブロックチェーンを支える基礎技術について解説してきました。「暗号学的ハッシュ関数」「デジタル署名」「ピアツーピア・ネットワーク」。これらの技術を組み合わせる形でブロックチェーン技術は成り立っています。次回はいよいよブロックチェーン技術について解説します。
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