イーサリアムの再ステーキングとは - EigenLayerの事例(コラム)
ステーキングした暗号資産を再度ステーキングして担保にする技術のことを「リステーキング(再ステーキング)」と言います。2023年6月にはETH(イーサリアム)でリステーキングを提供するEigenLayer(アイゲンレイヤー)がローンチされ、2024年2月6日現在、36億4,300万ドル(約2,416億円)ものETHが預けられています。なぜ今、ETHリステーキングが注目を浴びているのでしょうか。EigenLayerを例にして、ETHリステーキングの利点と懸念点を考えてみましょう。
ETHリステーキングの利点
EigenLayerの利点としては、「ステーキングされたETHを再度担保として用いることが可能となる」というのが一般的な説明ですが、リステーキングによって得られる利点は以下のように言い換えることができます。
1. ETHに対してさらなる利回りが発生する可能性がある
2. オラクルやブリッジに代表されるミドルウェア(中間アプリケーション)のセキュリティコストを下げることでアプリケーション展開が容易となり、さらなる市場発展が期待できる
3. ETHスケーラビリティに関する課題への解決アプローチを提供する
■1. ETHに対する追加利回りの提供
イーサリアムは2022年9月よりプルーフ・オブ・ステーク(Proof of Stake、PoS)を採用し、ネットワークに参加しているバリデータに報酬を配布しています。ETHステーキングの年利は2024年2月現在、約3~5%で推移しています。国内外の業者によるETHステーキングの代行サービスを利用すると、提供利回りはこの数値から手数料(0.5%~1.0%程度)を引いたものになります。
そうした状況の中、リステーキングを用いてステーキングされたETHをさらに担保とすることで、追加の利回りを得られる見込みが出てきました。2024年2月現在、EigenLayerによる追加の利回りがどのぐらいあるかは明確になっていませんが、将来的にETHのステーキング+リステーキングを行うことで、より利回りの高い金融商品が出現する可能性が出てきました。
■2. セキュリティコストの削減
セキュリティコストの削減については、例えば分散型オラクルであるChainlink(チェーンリンク)では独自トークンである$LINKを用いて、独自にセキュリティを担保しています。バリデータ離れを防ぐためには一定以上の利回りをバリデータに対して作らざるを得ず、その分、ネットワークの維持コストが高くなりがちです。このように、オラクルやブリッジ、サイドチェーンなどのミドルウェアに対してはETHのセキュリティが及ばず、各プロトコルが独自にセキュリティを担保することが必須でした。
EigenLayerを間に入れることで、各ミドルウェアは独自でセキュリティを構築することなく、リステーキングを通じて必要なセキュリティと検証を得ることができるようになります。このようにセキュリティ対策のためにETHリステーキングをする対象のことを、Eigen LayerではAVS(Actively Validated Services)と呼んでいます。セキュリティ維持費用の削減が可能になることで、AVSはよりプロダクトを作りやすい環境になるのではないかと言われています。
■3. ETHスケーラビリティ解決へのアプローチ
EigenLayerがETHスケーラビリティ問題への解決アプローチをどのように提供するかは、ブロックチェーンそのものの機能について触れた後に説明します。
ブロックチェーンの機能にはExecution(実行)、Settlement(決済)、Consensus(合意形成)、Data Availability(データ可用性)の四つの機能があります。全ての機能を単一ブロックチェーンで行うものをモノシリックブロックチェーンと呼び、ビットコイン(Bitcoin)やソラナ(SOL)がこれに該当します。モジュラーブロックチェーンにおいてはこれらの機能を切り出し、各機能に特化したブロックチェーンを組み合わせることで、よりスケーラブルでカスタマイズ可能なシステムの構築を目指しています。
EigenLayer自体もAVSとして、EigenDAというデータ可用性レイヤーを構築しています。このEigenDAを通じて、EigenLayerはETHスケーラビリティという課題に解決アプローチを提供しています。
ETHリステーキングの懸念点
EigenLayerに見られるETHリステーキングの利点を説明してきましたが、懸念すべき点もあります。
1. EigenLayerに多額のETHが集まってしまい、中央集権化してしまうリスクがある
2. スマートコントラクト の脆弱性による資金流出のリスクがある
3. オペレータの不正やAVSの独自ルールなどによるスラッシング(罰金)のリスクがある
EigenLayerはローンチしてからまだ日が浅いこともあり、発展途上のプロトコルと言えそうです。今後どのように開発が進められていくのか不明瞭な部分はありますが、ETHリステーキングを通じたエコシステムの拡充は、2024年の注目テーマの一つと考えられるでしょう。
制作:株式会社Kudasai
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