テックリードやエンジニアリングマネージャに対する役職給・手当は欲しくないという話

テックリード (以下 TL) という役割で仕事をしています。誤解を招きそうですが雑に要約するとチームの技術的決定やファシリテーション、質とスピードの担保などなどの役割です。

先日チームメンバーとの 1on1 の中で「TL って大変なんでしょ? 役職給とか貰ったらいいじゃん」と言われたことがありました。
素直に労力や苦労のねぎらいとして捉えられる文脈だったのでありがたいなという気持ちとともに、そういう手当は貰いたくないなとも思っています。
綺麗事ではなく、そのほうが自分にとっても都合がよいのです。どうしてか、という理由を説明していきます。

役割 (Role) か役職 (Position) か

自分の所属する会社では TL は役職 (Position) ではなく役割 (Role) として位置付けられています。エンジニアリングマネージャ (以下 EM) も同様です。
リーダーやマネージャなので偉い、という意識が働きやすいのは事実ですが、役割の違いなのでチームメンバーとはフラットな関係とされています。
これに起因するいくつかの問題を耳にしたことはありますが、何れにしろ役割として定義されている以上 TL だから昇給するとか、手当を貰うことはない、というのが私の理解です。
以降役職給や手当の性質上、役割か役職かという話と同義として話が進みます。

"役職給・手当がいらない" はどういうことか

結論から言えば、役職に対してではなくその役割をこなすための ability (能力) に対して対価を貰いたいと考えています。
逆にもし役職に対して報酬がある場合、それは労働に対する報酬に等しいことです。雑に表現するとこんな感じになります。

TL になりました。仕事が10増えるので10の報酬が追加されます。

チームの編成が変わったり、新たな TL が育ったりして自分が TL でなくなるとこの報酬は受け取れなくなります。自分の能力は変わらないにも関わらずです。

例えば TL に必要な ability が

- 技術力
- リーダーシップ
- コミュニケーション能力

の3つだった場合、それぞれの ability が評価され結果として給与が上がればよいです。実際にはもっと細分化され、一つ一つの ability も深さや練度とという縦軸と、カバー範囲や影響力などの横軸で計測が可能で、評価と報酬も細分化されます。
Ability を多く持つ、あるいは深く熟練している人は役職に関係なく多くの役割をこなせるし、成果にも繋がりやすいです。
自分以外の人が TL になった場合でもその TL の負荷は大きく軽減され、またチームの可用性にも貢献します。

役割のほうが TL や EM という存在に対してチームメンバーが協力しやすいというのもあります。感情ベースの話になりますが、手当を貰っている役職の仕事をヘルプするのは引っかかるものがあります。対して役割であればチームメンバー各々が自分の業務をできるようにする、という仕組み作りでも業務として成立します。これはチームの属人性を下げ可用性を上げるのでポジティブです。

結果育成面もやりやすくなります。役職給を貰っていたら誰もそれを手放してまで新たな人材を育成しようとは思いません。
役職でなければ無駄なポジション争いも無いし、育成される側も段階的に評価か可能です。
例えば TL として必要になる特定の ability を理解しサポートできた、あるいは業務をアグリゲートされた、という事実はポジションの枠を超えチームや成果に貢献しつつ自分の評価と給与にも繋がりますし LT/EM は別のことに時間を割けるようになる良い循環が生まれます。

いい点ばかり挙げてきましたがネガティブな点を考えると、役職ではない = 役割である以上権限を持たないことが多く、都合のいい便利な存在になりやすいです。
またポジションに比べて評価の仕組みがより重要だしコストもより掛かると思います。
役割には遂行する目的だけがあって、その方法は問われていません。つまり業務レベルでは明確化されないので何をしているか分からない。あるいは突然役割に就いてしまい何をしたらいいか分からない、という状態も見られます。
この辺りは話題に対してコンテキストを広げすぎているので以上です。

まとめ

- 役割か、役職かという違いになる
- 労働ではなく能力に対する対価がほしい
- ただし組織に必要な Ability が明確にされ、評価する仕組みがある前提

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