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身を守る術を知らなくて 夜行バスに乗りこんだ【#わたしの旅行記】

大学4年生の時、
色々とキャパオーバーになった。
教員採用試験、教育実習、3人で回さないといけない深夜の居酒屋バイト…etc

「あ、これもう無理。」

逃げ出す勇気もないけれど、
とにかく一時的にでも現実から離れたかった。
2年前、友だちと関西で呑み歩きしたあの夜が一番楽しかったなぁ。

「そうだ、関西行こう。」

藁にもすがる思いだった。



ヘビーローテーションすぎるバイトを休み、
夜行バスで単身旅行スタート。
初めての夜行バス。
わくわくして眠れない。
遠足前日の子どものように、ここも行きたいあそこも行きたいとInstagramで調べる。
二泊の予定なのに、大阪→兵庫→京都と3つの府県を跨ぐというハードスケジュール。
今思うと、
疲れた心身を休めるための旅では…?
とツッコミを入れたくなる。

そんなこんなで大阪に着いた朝6時。
無計画な旅だけれど、楽しみにしているメインイベントがあった。
それは、
「甲子園球場で野球を観ること」
DeNA 対 阪神 の試合。
どちらもファンではないチームの試合は、フラットに観れるから好きだ。
なにより、野球ファンとしては甲子園球場に行ってみたかった。

早速兵庫県へ向かい、憧れの甲子園球場に足を踏み入れた。
「ここが、高校野球の聖地か…。」


感激しながら席に座る。
売り子さんからビールも買って、観戦準備OK!
いよいよ試合スタート!!!
…の瞬間、降り出した雨。
結局試合は3回でノーゲームとなった。
その時負けていた阪神ファンが大喜びしている様子をビジター側の席からぼんやりと見ていた。
「私にとっては一世一代のビッグイベントだったのに」
なんて行き場のないやるせなさ。

気を取り直して、大阪へ戻る。
新世界のせんべろ横丁。
最初に、串揚げ屋さんに入った。
揚げたての串揚げ。


『二度漬け禁止』
と書かれているソースをたっぷり付けて一口。

美味しいー!!

雨で濡れて冷えた体に染み渡る。
ガリの入った赤いハイボールがスッキリして揚げ物によく合うこと。
「お姉ちゃん、一人?」
と隣で呑んでいたお二人に話しかけられた。
お酒も回り、会話も弾む。
折角観に行った野球がノーゲームになった話をすると、同情されたのか、
「これオススメ。食べてみて。」
と、紅生姜の串揚げをくれた。
ええ?!紅生姜??と思ったが、食べると…

美味しい!!!!!

新しい発見。紅生姜の酸味と衣の油っこさが癖になる。甘いソースともよく合う。
一軒目は、お二人にご馳走になった。ありがたい。

二軒目へ。

レトロな雰囲気で、しっぽり呑める居酒屋さん。
大阪はやっぱり粉物だよね。と思いながら、たこ焼きを注文した。
たこ焼きのソースってなんでこんなに美味しいんだろう。
柔らかさの中に蛸のプリっとした食感。
ビールがよく進んだ。

疲れていたのだろう。酔いが想定より早く回ってしまったので、予約していたホテルへ。
一人だけど、セミダブルの部屋を取った。
ふかふかの広いベッドで眠りたくて。
中に入ると、壁一面鏡張り。
お風呂もガラス張り。
…絶対ここ元○○ホテル。
でも、お風呂もベッドも手足を思いきり伸ばせるほど広くて最高だった。

朝、楽しみにしていた朝食。
和風か洋風か。
迷ったけど、
呑んだ次の日はお味噌汁が食べたい!
から和風にした。

…味噌汁の蓋が開かない。
昨日ノーゲームになって、
今日は食べたいお味噌汁の蓋も開かないのか。
頼むよ、神様。
自分の不幸さに笑えた。
お味噌汁は泣く泣く諦めた。

二日目は京都へ。
鈴虫寺にて、ありがたき説法を拝聴する。
教員になれますようにと祈りつつ、出てきたお菓子に舌づつみを打つ。
お茶を飲んで一息。鈴虫の声がする。
抱えていたモノがさらさらと流れて行く感覚。
なんと心地よい時間。

お次は、自身の悪運を断つため縁切り神社へ。

おどろおどろしい札のついたこの穴をくぐり抜けると、悪縁が切れるらしい。


縁切り神社の絵馬は恐ろしいけど面白い。この世の闇が凝縮されている。
そんな野次馬精神で絵馬を見る私には、バチが当たるかもしれない。

夜は、日本酒バーで警官に話しかけられて、
ノリで彼のおすすめのハイボールバーへ。
樽から出てくるハイボールはいい具合に煙たくて美味しかった。
三次会に誘われたが、今夜の宿であるゲストハウスに戻った。
寺社仏閣で煩悩を祓ったからね。

隣の部屋は海外の方がどんちゃん騒ぎ。
相部屋の女性の方は二段ベッドの下で大いびき。実に賑やかな夜だった。



色々な事件は起きたが、無事帰路についた。
現実から逃げ出すための2泊4日のバカンス。

やらなきゃいけないことに急き立てられ、自分の心を置いてけぼりにしていた。知らず知らずのうちに沈んでいた心。
旅の中で、「将来のために今きつくても踏ん張らなきゃ。」と思えるほどには回復できたと思う。

限界がきたら、また夜行バスに飛び乗ってどこか遠くへ行ってしまおう。
身を守るための、現実逃避行だ。

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