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自分好みの着せ替え人形

初めて髪を染めたのは、幼稚園生の時。
母は、「キャンディ・キャンディ」という漫画が好きで、その主人公の女の子のような格好をさせたかったらしい。
艶のある茶髪、髪もクルクルに巻いて、いつもフリルのある服を着せられていた。
バレエの発表会後の写真の私は、少し化粧をして小首を傾げてニッコリ笑っている。我ながら、お人形さんみたい。

幼稚園から小学校一年生の時は、自分が世界の中心のような気がしていた。
田舎の小さなコミュニティに、私のような格好をしている女の子はいなかったし、バレエを習っている子もいなかった。
「髪の毛かわいい!」
「私もその服欲しい!」
「いいな~。私もバレエしたい!」
そう言われる度、誇らしい気持ちになった。
私はオシャレなんだ!皆真似したいんだ!なんて。
自己肯定感、天井知らず。

転機は、小学校二年生の時に転校したこと。
転校先は、大規模で制服がある学校だった。
沢山の子どもたちが、同じ服で同じような髪型。
黒板の前に立った時に、何故か恐怖を感じたことを覚えている。
そして、
「変な髪。」
男の子が髪を引っ張る。
「そんな派手な筆箱持ってきたら駄目だよ。」
後日、トイレに隠される。

私が"素敵"だと思っていた物は、皆にとっては"異質"なのだと気付いた。
髪を黒に戻し、パーマをあてていた髪を切り、制服に袖を通した。
あんなに大好きだったバレエもやる気が無くなってしまって辞めてしまった。



思えば髪を染めていたあの頃が、一番自分のことを好きだった。
世界は私の味方だったし、洋服も持ち物もキラキラ輝いて見えた。

大人になってもまだ、"人と違う"ことを恐れている。
髪を染め、自分好みに着せ替えたら、自分のことを好きになれるだろうか?
髪を染めることは、私にとって自由の象徴。
日々感じるこの閉塞感を打ち破ってくれる、最終手段としてとっておこう。

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