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BIMとデジファブを学ぶ授業

芝浦工業大学建築学部にて、2019年から2年連続で「BIM演習2」という授業を、VUILD代表・秋吉とアーキチュアル・エンジニアの高野が担当させていただいています。

今回の記事では、授業の様子と授業内で制作された学生の作品を、学生の生の声と一緒にご紹介します!

0. 授業概要

9:00~12:30までの1・2限にて全14回から構成される、前期の授業です。「BIM」とはBuilding Information Modelingの略で、RevitやArchcadに代表される様な、3Dモデリングと図面作成を同時で行なえるものを「BIMソフト」と呼びます。

この授業では、RhinocerosとGrasshopperの基本的な使い方を授業の前半で覚えてもらい、中間発表と最終発表では自分で設計から出力・加工までを体験してもらうことが趣旨です。昨年は定員である30人の選考を通過した学生が受講してくれました。

1.中間課題「イス

最初の6回の授業で、RhinocerosやGrasshopperの使い方、またプロトタイプを作成するためのレーザーカッターの使い方を学びます。その上で7回目の授業「中間発表」では、それらの技術を用いて、学生全員が椅子を制作することが求められます。

事前に、モデリングしたデータをレーザーカッターでプロトタイプしながら、自分の生活に寄り添った使用用途・場面を考えつつ個々人に制作しいてもらいます。

そして、30人分のデータをVUILD川崎工房のShopBotにて学生立会いの下、全員分切り出します(*2019年度の授業)。ShopBotで切り出すにあたり、ホゾなどの特徴も事前にデザインしてモデリングしておいてもらいます。与えられた材料は、ひとり12mmの900×1800の板一枚です。

1-2. 中間発表・優秀賞

浜田晶則建築設計事務所の代表・浜田 晶則さんに特別審査委員としてお越しいただき、実際の座り心地等も検証しながら優秀賞を決めていきます。

優秀賞は、与えられた12mmの900×1800材の歩留まりもよく、仕口の組み合わせを工夫することで、複雑なデザインと安定性を担保した山本翔輝さんの作品が選ばれました。

2. 最終課題「犬・猫の小屋」

最終課題では、3人1組のグループで犬小屋もしくは猫小屋を作ることが課せられました。また、クラインアントワークを前提として販売を視野に入れたデザイン設計が求められました。

小屋の実物はもちろんのこと、販促資料も作成して貰いました。こちらも中間課題と同様に、15グループの材をShopBotで1日で切り出しました。

2-2. 最終発表 

審査発表には、心拍の情報から犬の気持ちがわかるデバイス「inupathy」を開発する株式会社ラングレスの代表取締役・山入端佳那さんにも審査員としてお越しいただきました。

優秀賞に選ばれたのは、Grasshopperを活用して授業で扱った内容を精一杯盛り込んで、サイズ可変の猫小屋を作ったグループ(高木梨紗子さん、横田亨仁さん、吉原拓実さん)です。

2-3. 猫小屋「ねこと・わたしと・てーぶると」

こちらが完成するまでの過程をインタビューさせていただきました。くじ引きで決まったこちらのチームは、互いのことを殆ど知らない状態から始まった様で、まずは一人一案を持ち寄って相談するところから始めたそうです。

すると、①猫の居る空間と人間の居る空間を融合させたい②足が弱くなった猫も使える様にバリアフリーにしたいという希望が見えてきました。

そして、それらを実現する構造として①家具としても使用できるテーブル、②段差の小さな螺旋階段が生み出されました。また、クライアントワークという前提を踏まえ、猫のサイズに合わせて様々なサイズを作れるような設計になっており、費用も算出されています。

「ねこと・わたしと・てーぶると」という三つの主体に上下が無い理念通りのコンセプトを閃いてからは、このプロダクトに込められたそれぞれの関係性が販促資料には説明されています。

審査の際には、①グラスホッパーを使用してパラメトリックに設計することでサイズが簡単に変化させられるデザイン、②プロダクトとしての完成度、③猫と飼い主の視点どちらもが盛り込まれている点が総合的に評価されました。

3. 設計から加工までの一連を経験する意義

授業した学生へのヒヤリングを通して、この授業の特徴は三つあることが見えてきました。まず一つ目が、実物を作成できることでデザイン性だけでなく実用性を考慮したものづくりに取り組めること。二つ目は、一人一人がBIMを活用してプロダクトを作成することで、それぞれの色が出た作品が生まれること。三つ目に、設計から加工までを誰の手も介さずに一人で手がけることで、出力方法や材料の制約など普段分断された工程の全貌が把握できことが挙げられました。

建築学部と言っても、普段の設計の授業では模型を作るに留まり、実際にものを作る機会はあまりありません。様々な制約により、習った技術とアウトプットが直接結びつかないことが殆どです。しかし、椅子の課題で多くの学生が苦戦した様に、背もたれの角度や座面の角度が少し違うだけで座り心地が格段に違ったりと、模型では検証できない観点も数多く存在します。

半期間でソフトウェアの習得から二度の作品づくりを行う本授業ですが、デジタルファブリケーションだからこそトライアンドエラーを短時間で行えること、そして自分で設計した物が誰の手も介さずに形になる感覚を体感して欲しいという趣旨を充分に達成することが出来ました。

4. コロナ禍で本領発揮するデジタルファブリケーション

4月から始まった今期の授業も、昨年同様に進めようと考えていましたが、授業開始のタイミングでコロナウイルスの発生により完全オンラインにシフトすることが求められました。

最終発表は、今年の5月にVUILDがリリースしたEMARF3.0を活用し、自宅から作成したデータを送って貰い、ShopBotで加工したものを自宅に送り返して組み立ててもらう形を予定しています。こう言った授業も、大学に設備がなくてもEMARFを活用してオンライン開催をすることができます。

また、慶應義塾大学SFCのデジタルデザインという約70名が履修する授業でもEMARF3.0を活用して最終成果物の椅子を学生が作成しました。こちらの様子は、また別の記事でご紹介させていただく予定ですのでお楽しみにしていてください!

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【おまけ】サンプルデータを配付

さんかくスツールのデータの配布を開始しました。こちらのアンケートにご回答頂いた方限定に配布しています。EMARF活用にあたってサンプルとして出力していただいて良いですし、現在設計されている家具の参考としてもご利用いただけます。

さんかくスツールならびに、本棚のデータの配布を開始しました。こちらのアンケートにご回答頂いた方限定に配布しています。EMARF活用にあたってサンプルとして出力していただいて良いですし、現在設計されている家具の参考としてもご利用いただけます。

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